東京で幻の木枯らし1号、同じく幻の木枯らし1号となった39年前の冬は
木枯らし1号
気象庁では平成30年(2018年)12月1日に、東京で冬の訪れを告げる「木枯らし1号」が、昭和54年(1979年)以来39年ぶりに観測されなかったと発表しました。
木枯らしは、晩秋から初冬にかけて、木の葉を吹き散らす北よりの冷たい強風をさす、冬の季節風の先陣です。
木枯らしが吹くときは、冬支度を始めるときと言われますので、気象庁では、その年に初めて吹く木枯らしを「木枯らし1号」として、近畿地方と島嶼部を除く東京都(東京地方)だけにお知らせを発表しています。
問い合わせが多いことから始めたサービスで、「春一番」など防災の要素が強い情報とは少し違うものです。
東京地方の「木枯らし1号」は、気象庁予報部予報課の天気相談所がお知らせを発表していますが、発表基準の考え方は次の3つです。
1 西高東低の冬型の気圧配置
2 10月半ばから11月30日までの期間
3 東京(千代田区)で北から西北西の風で毎秒8メートル以上
このため、平成30年(2018年)は、12月1日がすぎるまで、この3条件を満たす日がなかったために、「平成30年(2018年)は木枯らしが吹かなかった」と発表したのです。
一方、近畿地方の「木枯らし1号」は、大阪管区気象台気象防災部予報課がお知らせを発表していますが、発表基準の考え方は次の4つです。
1 霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)までの期間
2 西高東低の冬型の気圧配置になっている
3 西北西から北北東の風(北よりの風)で、最大風速が秒速8メートル以上を観測した近畿地方の気象台・特別地域気象観測所が3地点以上(大阪・神戸・彦根・奈良・和歌山・京都・舞鶴の7地点のうち3地点以上)
4 発表時刻は9時から17時の間(従って15時までの観測データを利用)
東京地方と発表基準は全く違いますが、この近畿地方の発表基準の4条件を満たした11月22日の翌日、11月23日午前に、大阪管区気象台気象防災部予報課は「昨日(11月22日)、近畿地方で木枯らし1号が吹きました」と発表しました。
翌日の発表となったのは、11月22日の15時までに基準を満たしていたのは神戸だけで、他の6地点の最大風速は毎秒8メートルを超えていなかったからです。
平成15年(2003年)の近畿地方の「木枯らし1号」は12月19日であるなど、12月に近畿地方で「木枯らし1号」が発表されることは少なくありませんので、記録的というわけではありません。ただ、前年より 23日も遅い近畿地方の「木枯らし1号」でした。
昭和54年(1979年)の木枯らし
気象庁が「木枯らし1号」が吹かなかったとしている、昭和54年(1979年)は、12月2日に木枯らしが吹いています。
昭和54年(1979年)の木枯らしの後、気象庁では、マスコミや一般市民から多く寄せられた問い合わせに答えるため、「木枯らし1号」の定義を決め、昭和26年(1951年)までさかのぼって毎年の「木枯らし1号」の日を決め、統計をとっています。
つまり、「木枯らし1号」の統計が昭和26年(1951年)以降あるからといって、昭和26年(1951年)から「木枯らし1号」のお知らせを発表していたわけではありません。
そして、昭和54年(1979年)の最初の木枯らしは、12月になってからということで「木枯らし1号」には認定されませんでした。
つまり、幻の「木枯らし1号」になったのです。
昭和52年(1977年)も同様です。この年初めての木枯らしが12月2日に吹いたのですが、幻の「木枯らし1号」でした。
平成30年(2018年)の幻の「木枯らし1号」
平成30年(2018年)12月5日は、西高東低の冬型の気圧配置となり、東京(千代田区)で最大風速は北北西の風5.8メートル(最大瞬間風速は北西の風11.1メートル)でした(図1)。
「木枯らし1号」の定義からすると、風速が若干足りません。
羽田空港は最大風速10.3メートル(最大瞬間風速14.9メートル)ですので、羽田空港並みの風が吹いたら、「12月5日が幻の木枯らし1号」でした。
ただ、冬型の気圧配置はこれから再度強まり、全国的に風が強くなります(図2)。
この時に、幻の「木枯らし1号」が吹くかもしれません。
東京地方で「木枯らし1号」が吹かなかった年
「木枯らし1号」は強い寒気の南下によって発生しますので、「木枯らし1号」が吹かないということは、晩秋から初冬にかけての寒気の南下が弱く、暖かいことを意味します。
しかし、暖かい冬の始まりは、そのまま暖かい冬になることを意味しません。
昭和26年(1951年)以降、平成29年(2017年)までの67年間で、東京地方で「木枯らし1号」が吹かなかったのは、昭和34年(1959年)、昭和37年(1962年)、昭和52年(1977年)、昭和54年(1979年)の4回あります。
このうち、冬を通して暖かかったのは、昭和34年(1959年)だけです。
つまり、4分の3(75%)は、12月は暖かかったものの、翌年の1月、2月は寒くなっています(図3、図4)。
ちなみに、気象庁の3か月予報によれば、3か月平均で西日本と沖縄・奄美地方は気温が高く、東日本は気温がやや高い、北日本は並みの予想となっています(図5)。
気温が高い状態で始まった平成30年(2018年)の冬ですが、寒暖差が非常に大きいものの平均すると気温がやや高くなるのか、冬期間を通して気温がやや高い状態が続くのかによって冬の寒さの影響は違います。
今年は、どのような冬になるのか気になります。
図1、図3、図4、図5の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:ウェザーマップ提供。