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TM NETWORK完全復活。とある賢者は言った、ビデオスターからストリーミングスターへの進化だと

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
TM NETWORK photo by 関口佳代

2039日待った。2021年10月9日、TM NETWORK(小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登)からメッセージが届いた。キーワードは”再起動”。無観客オンラインライブ『How Do You Crash It?one』が、日本時間21時から60分に渡って行われたのだ。

結論を先に言おう。

この2年間。たくさんのアーティストがコロナ禍に悩まされ続けながら、ニューノーマルならではのライブパフォーマンスをオンラインで模索してきた。

TM NETWORKは、その答えを表明した。それが、現実と非現実の間にあるメタバースなエンタテインメントだ。とある賢者は言った“ビデオスター”から“ストリーミングスター”への変化だと。

インフラやツールの進化もあるかもしれない。時代がTM NETWORKにようやく追いついたのだ。世界は、TM NETWORKを再発見すべきだ。

音楽とは様々なカルチャーに溶け合える存在だ。TM NETWORKは1984年にデビュー以来、革新的な映像作品、小説、映画、ミュージカル、アニメーションなど、様々なスタイルでエンタテインメントを誰よりも早く開拓してきた。

アニメ『シティーハンター』エンディングテーマ「Get Wild」、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」、宮沢りえ主演映画『ぼくらの七日間戦争』の主題歌「SEVEN DAYS WAR」を手がけたといえば、その歴史的すごさがZ世代にも伝わるだろうか。

そもそも1984年、TM NETWORK結成時は、観客の前でライブを行わず、当時最先端だったミュージックビデオ映像のみで活動するアイディアを持っていた。2021年の現在、それが無観客オンラインライブというスタイルで現実化したのだ。さらに、ステージ上にメンバー3人しか登場しないライブの実現だ。テクノロジーの進化の結実だ。

FANKS(※TMファンの意)であればセットリストをみてわかる通り、デビュー以来、積み重ねてきたヒストリカルな結果が、2021年10月9日のオンラインライブではSF的な映像美とともに結実した1日となった。見事なことに、宇都宮隆のボーカリゼーションも当時とほぼ変わらずだ。期待を裏切らない。しかも、この物語は三部作として、三位一体として今後シリーズ化していく。第二回『How Do You Crash It?two』は12月、第三回『How Do You Crash It?three』は2022年2月に配信が予定されている。

答えなき社会に蔓延る数々の問題、見えない明日に病んだ人々の身体と心の痛み。TM NETWORKは、音楽を通じて課題と向き合っていくのだ。

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オンラインライブ『How Do You Crash It?one』レポート

〜オープニング〜

TM NETWORK photo by 高田真希子
TM NETWORK photo by 高田真希子

さかのぼること2015年、前回ツアー終了時、任務を完了し世界それぞれへ姿を消した地球外生命体のTM NETWORKの3人。地球上の調査記録を保存したメモリーデータとなるバトンは、横浜に残されたFANKS=潜伏者たちへQRコードを通じて託されていた。

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あれから6年。

“How Do You Crash It?”、3人が戻ってくる。 そのきっかけを作ったのは、ある少女だった。

画面は都内某所、おそらくTETSUYA KOMURO STUDIOのワンシーンへ。

少女がスマートフォンにダウンロードされていたデータを読み込んだ。封印されていた黒いバトンが浮かび上がり飛び散り、6年間、地球上で潜伏者がリサーチされたデータが吸い込まれていく。

この6年の間に起きた出来事が、3人の地球外生命体へインストールされていく。

オープニングは、まるで宇宙船のようであり仮想空間のようなスペースで、TM NETWORKにとって大切な楽曲「ELECTRIC PROPHET (電気じかけの予言者)」を披露。TM NETWORKの楽曲の歌詞には、海外の地名が多くあらわれる。本作は、ギリシャ共和国南方の地中海に浮かぶ同国最大の島、クレタ島からはじまるキミとの出会いの物語だ。

コロナ禍の今、なぜ、地球外生命体の彼らが調査に戻ってきたのだろうか。その答えは、まるでギリシア文字の第4字母“デルタ”にあるかのように思える。CGのように舞うLEDが何かを物語っているのかもしれない。

金色の夢、地球に残る潜伏者へのメッセージ。まるで謎解きめいたNetflixのドラマのようなストーリーテリングだ。

そして鳴り響くTM NETWORKアンセム「I am」。TM NETWORK、による人間賛歌が鳴り渡る。

Yes I am,Yes I am

Yes I am human

No I can’t,No I can’t

I can’t lose the moments

作詞・作曲・編曲:小室哲哉

今回のライブを観る限り、誤解を恐れずに言いきろう、1984年のデビューから現在まで、TM NETWORKは今が一番最盛期となるかもしれない。

いや、通常ではあり得ないことだ。しかし、それをやりきるのがタイムマシンネットワーク=TM NETWORKなのだ。これまで積み重ねてきた楽曲の歴史、ライブのヒストリー。積み重ねてきた物語の断片が、折り重なるように点と点が繋がって線となっていく。そして、新たな物語が生まれていく。歴史が更新されていくのだ。

ここで白いシャツにファッションが変化し、待望の新曲「How Crash?」(未発表曲)がスタート。せつなきメロディーとミディアムなテンポに絡み合うTMらしい早口なライミング。ここに新たなレジェンダリーな名曲が誕生した。バンドのターニングポイントとなる「MESSAGE」、「I am」とつながり、心に深く刻まれていくナンバーだ。

6年ぶりの新曲「How Crash?」。テーマは、“Everyone makes mistakes, How do you crash it?(直訳:誰もが間違いを犯す、どうやってそれを壊していく?)”という、奥深いメッセージ性は、先の見えない現代、日々、深い呼吸を求めながら生きる迷える生活者に突き刺さることだろう。

木根尚登が、降り注ぐ可動式ライティングシステムを見上げ。ほのかな光と、まるで会話をするかのようなコンタクト=点灯していく。もしかしたらテレキネシスでプログラミングをしているのかもしれない。そして、浮かび上がり読み出されていくこの6年間の地球上のヒストリーたち。

あの日観た風景、景色が折り重なり、小室哲哉によるパーソナルなストーリーとも密接な私小説のようなナンバー「Action」が歌われていく。

今日も一日 何もかも すべてが

はかなく むなしく

さみしく つめたく

このまま 夜明けが まっても

またなくても静かに生きたい

そんな後ろ向き 僕を変えた夜

あれからどれだけ君を悩ませ

過信という名の開き直りから

自分が許せない

出来ることなら 出来ないことでも

悔しさを残すより

まず一歩走り始めた

作詞・作曲・編曲:小室哲哉

そして、稀代のメロディーメーカー木根尚登によるバラード「1/2の助走 (Just For You And Me Now)」における、“暗闇にドアを開ける 情熱の道しるべ”というフレーズが心を突き動かす。

TM NETWORKにとって隠れた名曲「Green days」へと続いていくことにも驚いた。“GREEN DAYS 今なら生きれる ほんとの想いを 伝えたところで すべてが気分のいいもんじゃない でも おそれず時間を砂時計ではかれば ひとつぶも残さず土に帰りたい”(作詞・作曲・編曲:小室哲哉)。そう、TM NETWORKは、人間関係と環境問題、社会問題が折り重なる世界観を持つ作品を作り続けてきた。まさに地球を癒していくかのような優しさを感じられるパートだ。

突如、相反して破壊的なイントロダクション「Get Wild」が鳴り響く。OSがアップグレードされたかのようなインプロビゼーションに、勇気を与えてくれる波動を感じる2021バージョン。木根尚登によるギターカッティングがトリガーとなり、日本国民誰もが知る“あの”フレーズが炎とともに天から舞い降りてくる。

そして、歌われる地球への大きな愛を歌った「We Love The EARTH」。90年代当時ラブソングに聴こえたナンバーも、気候変動が問題となるいま、マイナー調なアレンジを感じる響きに、違った物語として届くかもしれない。そう、TM NETWORKの楽曲は、ライブやツアーにおけるテーマによって、伝わってくる意味合いに変化が起きることが多々ある。

ラストは、とある世代にとってはアンセムであろう映画『ぼくらの七日間戦争』主題歌「SEVEN DAYS WAR」だ。

あらゆるポリティカル・コレクトネスがとりざたされる現代。今こそ生きる勇気を与えてくれるナンバーだ。自分は自分でいい。そんな当たり前の真理をこの歌は与えてくれる。常に希望を与え続けてくれたナンバーだ。

モニターが暗転する。

ラストシーンなのか、少女が再び現れ、使命を帯びた小室哲哉と出会う。

そして、画面に現れる突然の”to be continued”。

”All Produced by Tetsuya Komuro”の文字。

そう、小室哲哉完全復活宣言となるメッセージだ。

エンディングには疾走感ある新曲トラックが鳴り響き、物語はネクストへ続いていく。

TM NETWORKが1984年から積み重ねてきたヒストリー。数々のアルバムやツアーで描かれてきた物語の結晶。その集積が解放されていく奇跡の60分。

物語は12月の『How Do You Crash It?two』、年明け2月の『How Do You Crash It?three』へと続いていく。

まずは、アーカイヴ配信中の『How Do You Crash It?one』。2021年のエンタテインメントを占う、壮大なるライブ・エンタテインメント。必ずやオープニングから見過ごさないで欲しい。可能ならば、この貴重なチャンスに繰り返し見返してほしいと願う。

TM NETWORK photo by 関口佳代
TM NETWORK photo by 関口佳代

【配信ライブ概要】

TM NETWORK「How Do You Crash It?one」

配信期間:10月9日(土) 21:00〜10月17日(日) 〜23:59アーカイヴ視聴終了

※「How Do You Crash It?two」は12月、three は2022年2月に配信予定。

■配信メディア

ローチケLIVE STREAMING

https://l-tike.com/concert/tm-network/

(問合せ: https://zaiko.io/support)

ニコニコ生放送 

http://live.nicovideo.jp/watch/lv333847047

(問合せ:https://qa.nicovideo.jp/faq/show/16592?site_domain=default)

Streaming+ 

https://eplus.jp/tmnetwork_ol/

(問合せ:https://eplus.jp/streamingplus-userguide/)

PIA LIVE STREAM 

https://w.pia.jp/t/tm-network/

(問合せ: 017-718-3572 / event@linkst.jp)

LINE LIVE-VIEWING 

https://viewing.live.line.me/liveg/650

(問合せ:https://contact-cc.line.me/detailId/13918)

■配信チケット

¥4,800 (+各配信メディアの定める手数料)

SETLIST Photo by TM NETWORK
SETLIST Photo by TM NETWORK

【TM NETWORK】

Official Twitter:https://twitter.com/tmnetwork_2014

Spotify:

https://open.spotify.com/artist/6aXIcqTy3R1dqSml9HQZUB?si=8qfX78XMSUeg_hnuM8zTDQ&dl_branch=1

Apple:

https://music.apple.com/jp/artist/tm-network/265737160

【小室哲哉】

Official Twitter:https://twitter.com/tetsuyakomurotk

Official Fan Community「TETSUYA KOMURO STUDIO」https://fanicon.net/fancommunities/3914

【宇都宮隆】

Official HP:https://magnetica.net/

Official Twitter:https://twitter.com/MAGNETICA_Info

Official YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCRgV4scr_6qMC5J3Zebm15A

【木根尚登】

Official HP:http://www.kinenaoto.com

Official Twitter:https://twitter.com/kinenaoto

Official YouTube:https://www.youtube.com/user/naotokine

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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