50代からの資産運用 失敗なく、老後資金を増やす方法
シンガポール在住、ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。スイスとともに、世界最大のオフショア金融センターとして君臨しているシンガポールには世界中から富裕層が集まります。
私は2015年からシンガポールに住んでいますが、平日の朝からゴルフ三昧で昼からワインを開けている人も多いです。たまに電話に出て経営をしている会社の社員に指示を出すなど1日のうちで働く時間はごく短時間です。なぜこのような生活が成り立つのかというと、彼らには不動産収入や配当収入などの不労所得があって、生活費のためにあくせく働く必要がないからです。
これは彼らが大金持ちだから可能なことだと思うかもしれませんね。しかし、実際にはごく一般的な会社員でも順番を間違えずに正しく資産運用をすれば富裕層に限りなく近い配当生活を目指すことは十分に可能です。欧米のミレニアル世代(1981年〜1996年生まれ)の間でFIREムーブメントが流行っています。30代〜40代で経済的自由と早期退職を目指すという動きです。50代の人は特に今からギアをあげて老後資金を確保していく準備をすべきです。
実際にシンガポールにいる欧米人の友達もこの配当生活を実践しています。彼はこの20年間、収入を得たら6%前後分配金が出る外債ファンドを購入し、分配金を再投資し、給与で得た余剰資金でまた新たにファンドを購入することをコツコツ実践してきました。元本が1億円あり、5%で運用をすれば500万円の配当生活も可能です。元本が1000万円で配当が50万円だったとしてもそれは老後生活の助けになるでしょう。
何しろ、収入がなく、貯金を取り崩していくとものすごいスピードで資産が減り続け、不安がつきまとうからです。私は夫婦同時に失業をしたことがあるのでその恐怖から貯めるようにしています。(夫婦同時失業から復活したFPが教える、節約せずに年間200万円貯める方法)
明治神宮の森を設計したことで知られる林学博士である本多静六博士(1866~1952年)氏も『私の財産告白』(実業之日本社)のなかで、「あらゆる通常収入は、それが入ったとき、天引き四分の一を貯金してしまう。さらに臨時収入は全部貯金して、通常収入増加の基に繰り込む」という「四分の一天引き貯金法」を提唱しています。博士は25歳から初めて40歳で配当収入が給与収入を上回り、60歳前に山林や別荘といった莫大な不動産などの財産を築きました。
シンガポールの富裕層(金融資産1億円程度)や準富裕層(金融資産数千万円程度)が資産運用をする際に真っ先に取得する金融資産はインカムゲインを生み出すアセットです。
インカム重視の分散したポートフォリオを作る
不動産収入、配当収入、配偶者の収入などがあると不況期を乗り越えやすいです。これに対して、金の卵を産む鶏を持っていないと生活はどうなるでしょうか。失業をしたら即時に転落をすることもあり得るのです。
日本人の多くは元本保証の普通預金や定期預金を好みますが、利息はほとんどゼロです。投資をせずに1億円を目指そうとすると、夫婦共働きで生涯賃金が二人で6億円だとして、その20%を貯めてようやく定年時に達成できる数字です。
これに対して、投資をすればお金が加速度的に増えます。「72の法則」とはお金が2倍になるまでの金利と年収の関係を表した公式です。例えば、7%で運用ができれば約10年で元本が2倍になります。反対に0.001%なら2倍になるまでに7万2000年かかるということです。リスクをとらずに普通預金のままにしていると、ミリオネアへの道は遠く険しいのです。
全資産を未上場株式や仮想通貨に投資をするなどのギャンブルよりも確実に期待できる債券の利息、投資信託の分配金、大企業の株式などの配当を狙ったインカムゲインを重視する戦略も重要です。
大企業の株の場合、企業が株価を維持するために不況で業績が大きく変わっても一般的に配当を維持することが多いのです。ウォーレンバフェット氏が日本の5大総合商社株を購入したのは、配当狙いだと考えられます。
もちろんある程度の資産になるまでは元本の増大を追求したいのは理解ができます。誰もが明日にでも大金持ちになりたいと思っているからです。しかし、そこまでリスクを取らなくても10年など時間を味方につけることができれば、多くの人が2000万円以上の資産を目指すことも可能です。
普通預金だとインフレで目減りする
元本が値動きする金融商品はこわいという日本人も多いです。しかし、銀行預金にもインフレリスクがあります。銀行の金利が0%でインフレ率が2%なら、お金の価値は-2%となってしまいます。あなたの預金通帳の残高はそのままかもしれませんが、物の値段が上がることによって、実質的な紙幣の価値が下がってしまう場合があるのです。
実際にコロナ後は食べ物、エネルギー、不動産などありとあらゆる物の値段が上がっています。最低賃金も引き上がりましたね。インフレになると貯金を取り崩していく生活の人にとっては非常に不利になります。つまり、この世の中に真の元本保証など何一つもないのです。
さて、資産運用をする場合、日々の元本の変動はあまり気にせずに一度決めたら資金が必要になるまで売らないなどの忍耐が重要です。金の卵を産む鶏は生かし続けないといけないからです。畑を耕す農家は土地の値段が変動しても一喜一憂しません。なぜなら、農家にとっては作物の収穫量だけが重要だからです。代々の土地を引き継いでいる地主も家賃収入を気にするだけで、毎日の不動産の時価にピリピリすることはないでしょう。彼らは収益の源泉となる資産を手放すことを考えていないからです。ウォーレン・バフェット氏も資金が必要になるまでは株式を売らないと言っています。
それと同じで今から元本の変動に慣れ、金利がゼロの預金をやめれば、5%前後の配当収入を確保することは可能です。たとえ日本の金融機関で資産運用をしたとしても、大手企業の配当利回りは非常に高い水準になっています。現在は日本の証券会社からも海外の多くの金融商品にアクセスができるようになりました。それはあなたの投資のチャンスを大きく広げることになるでしょう。老後まであと少しの50代は今から真剣に老後のお金のことを考えていきましょう。
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