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女子ゴルフツアー開幕前にイ・ボミがメディア露出を控えた本当の理由とは?

金明昱スポーツライター
16年賞金女王の資格で得た3年シードは今年が最後の1年になる(写真:KLPGA)

 イ・ボミと出会って今年で9年目の女子ゴルフシーズンとなる。最近思うのはめっきりメディアの露出が減ったことだ。

 もちろん、それは近年のイ・ボミの成績に比例するのだろうが、今年のオフ、彼女の下に取材などのオファーが来ていないこともないという。

 イ・ボミは2015、16年に2年連続賞金女王になってからの人気は絶頂を迎え、17年はなんとか1勝して賞金シードを獲得。ただ、昨年は賞金ランキング83位で、11年の日本ツアー挑戦から初めてシードを落とした。

 それでもなおファンの熱は根強く、彼女の動向を知りたかった人も多いに違いない。

 今週から開幕する日本女子ゴルフツアーだが、私の下にも「今年のイ・ボミの状態はどうなのか」という連絡が関係者からたびたび来ていた。

 彼女の動向と詳細を知るための手段はいくつかあった。

 イ・ボミ本人はもちろんのこと、母のファジャさんや専属コーチのチョ・ボムス氏、専属トレーナーの渡邊吾児也(わたなべ・あるや)氏に接触しようと思えば可能だった。

 ただ、今回ばかりは静かにイ・ボミの状況を見守っていた。いや、見守らざるを得なかったというのが正直なところだった。

取材オファーは一切断り練習に集中

 実は今年のオフ、開幕前の心境を聞くためイ・ボミに取材を申し込んでいたのだが、断られていた。

 1~2月にかけて行われた約5週間のタイ合宿地に出向くか、韓国に戻っている間に話を聞きたかったのだが、取材ができなかった。

 その理由はただ一つ。「2019年シーズンに向けて練習に集中させてほしい」。

 これは本人の切実な意向だった。それにこれまでは現地韓国メディアの取材ならイ・ボミは受け入れることもあったのだが、直前までどこも受けない徹底ぶりだった。

 もっとも、イ・ボミがオフは元々練習だけに集中したいという気持ちが強いのは知っていたし、取材を断られることもある程度は予想していたので、特に気にはしていなかった。

 それに専属コーチのチョ・ボムス氏は、オフにイ・ボミがメディアの取材を受けることで、リズムを崩れるのをとても懸念している時期があった。なので、今回はあえてコンタクトを取らなかった。

賞金女王の3年シード最後の年

 なぜ今年はこれほどまでに慎重なのか。それは今季がシード最後の年になるかもしれないからだ。

 2016年の賞金女王の資格で得た3年シードが付与されているため、実質、今年がシード最後の年となる。つまり、今季賞金シードを獲得しないと、来年からツアー出場権を失う。

 他のことに構っていられるほど、勝負の世界は甘くないのをイ・ボミはよく知っている。

 崖っぷちにいるからこそ、復活に賭ける思いは人一倍強い。だからこそ、今年はそっとしてもらいたかったのだろう。

 とはいえイ・ボミを長らく追ってきた立場からして、情報が入ってこないのはもどかしい。

イ・ボミから届いたメッセージ

 2月末、私は韓国・水原に出向き、母のファジャさんにもあいさつしてきたのだが、「今年は本当に集中して練習したのでシード獲得は大丈夫だと思います。(俳優)イ・ワンさんとの交際も順調ですよ」と話してくれて、少し安心した。

 ちょうど昨日、シーズン前に激励のメッセージを送っていた。イ・ボミからハングルでこんなメッセージが届いた。

「母から聞きました。元気にしていましたか? 今週は一生懸命がんばります!」

 ゆっくりと復活の時を待ちたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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