オートバイのあれこれ『時流に飲まれた名車。』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『時流に飲まれた名車。』をテーマにお話ししようと思います。
現在も人気の絶版バイク「ヨンフォア」こと、ホンダ『CB400FOUR』。
(今となっては)レトロおしゃれなスタイリングデザイン、また比較的小ぶりな車体ということもあって、女性ライダーからも支持されているようですね。
そんなCB400FOURが登場したのは、1974年(昭和49年)のこと。
『ドリームCB750FOUR』に端を発するCBシリーズのうちのひとつとして作られた『CB350FOUR』の進化版として現れてきました。
ヨンフォアの見どころは、やはりその外観。
イギリス車のようなカフェレーサースタイルは、当時としては斬新でした。
70年代の初め頃はまだ、グリップの低いハンドルや後端が跳ね上がったシートが標準装備される例はほとんどありませんでしたが、ホンダは攻めの姿勢でこれらのパーツを使いヨンフォアを仕上げたのです。
エンジンは350FOURの空冷4気筒ユニットをベースに、排気量を347ccから408ccまで拡大。
同時にクラッチ容量を大きくするなど改良も施し、ヨンフォアのエンジンは正常進化を果たしていました。
そして発売後は、その洗練された佇まいから世間の注目を集めます。
しかし、そんなヨンフォアに不運が。
デビュー翌年の75年に運転免許制度が改定が行われ、“中型限定”区分が設けられてしまいます。
中型二輪限定免許では400cc未満のオートバイにしか乗ることができず、それ以上の排気量のモデルに乗りたい場合は、合格率が1%とも言われた限定解除試験をクリアしなければならなくなりました。
ヨンフォアは排気量が408ccありましたから、ごく少数の限定解除を果たしたライダーのみが乗れるバイクとなってしまい、これによって販売数が急降下してしまったのです。
ホンダはこれへの対策として、「中免ライダー」でも乗れる398cc版のヨンフォアを別に用意します。
しかし、そもそも4気筒エンジンを使うヨンフォアは製造コストが割高で、そこへ398cc版も用意したことはさらにそのコストを増大することになり、結局ホンダは採算の悪いヨンフォアの生産を77年で止めてしまいました。
法規制改定という不可抗力によって淘汰されてしまったヨンフォアは可哀想な存在だったのでしょうが、ただ、このヨンフォアの消滅が世間の「400マルチ」を求める声を強めることになり、これが後の『Z400FX』や『CBX400F』の誕生へとつながっていきます。
FXやCBXといった名車が生まれるきっかけを作ったという意味では、ヨンフォアは「可哀想なバイク」ではなく、むしろ「400マルチブームの土壌づくりをした存在」というふうに、プラスに考えていいかもしれません。