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【オートバイのあれこれ】時に優しく、時にトップパフォーマーに。ZZR1100

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「時に優しく、時にトップパフォーマーに。ZZR1100」をテーマにお送りします。

日本のバイク産業が急速に発展を遂げた1970年代以降、世間ではさまざまな流行が生まれては消えていきました。

’90年代、ネイキッドブームのかたわらで巻き起こった「300km/h」をキーワードとする最高速競争時代も、バイク史上において重要なトレンドの一つだと言えるでしょう。

そのトレンドの火種となったのが、カワサキの『ZZR1100』でした。

▲カワサキが「300km/h」を明確に意識し開発。平成の幕開けとともに、バイクシーンも新たな局面を迎える
▲カワサキが「300km/h」を明確に意識し開発。平成の幕開けとともに、バイクシーンも新たな局面を迎える

トップスピード280km/h超のパフォーマンスは、当時のバイクシーンを震撼させ、ここからスポーツバイクの性能進化は一気に進むことになるのです。

’96年登場のホンダ『CBR1100XXスーパーブラックバード』や、’99年登場のスズキ『GSX1300Rハヤブサ』といったオートバイも、このZZR1100をきっかけに生まれたモデルだと言って差し支えありません。

▲900SUPER4(Z1)の功績を塗り替えるモデルとして開発されたGPz900R
▲900SUPER4(Z1)の功績を塗り替えるモデルとして開発されたGPz900R

’84年(昭和59年)、約250km/hのトップスピードを誇る「ニンジャ」こと『GPz900R』を生み出し、世界最速の座を勝ち取ったカワサキ。

しかし、当時の熾烈な開発合戦のなかで、ニンジャの最速王座はスズキ『GSX-R1100』やヤマハ『FZR1000』等によって奪われてしまいます。

カワサキも当然、初代ニンジャから熟成を図った『GPZ1000RX』『ZX-10』を生み出していたわけですが、’90年代突入を目前にして今一度「カワサキが堂々の最速」と世間に言わしめるため、新世代モデルの開発を決意。

そうして’90年(平成2年)に誕生したのが、ZZR1100でした。

▲北米仕様のZZR。現地では「Ninja ZX-11」という車名で発売された
▲北米仕様のZZR。現地では「Ninja ZX-11」という車名で発売された

当時市販車最強の147psを発揮するエンジンと、その大パワーをガッチリ受け止める頑強なアルミツインスパーフレーム、そしてエアロダイナミクスを徹底追求した外装パーツ(カウル)を組み合わせて作られたZZRは、最高で280km/hオーバーの速度をマーク。

開発目標だった300km/hにはわずかに届かなかったものの、それでもライバルモデルのトップスピードを優に上回っており、カワサキは見事このZZRをもって世界最速の座を完全奪取することに成功したのでした。

▲1993年のモデルチェンジにてC型からD型へと進化。エンジン内部からフレームに至るまで、多くの箇所がアップデートされた
▲1993年のモデルチェンジにてC型からD型へと進化。エンジン内部からフレームに至るまで、多くの箇所がアップデートされた

ただ、ZZRの魅力というのは何もスピードだけではありません。

ハイスピードとは相反する要素、つまり、低い速度レンジにおける扱いやすさも光っており、ZZRは高速クルージングから街中での走行まで、幅広く対応できるフレキシビリティを備えていたのです。

そして、このオールラウンドなキャラクターがスピードや高性能を第一に求めない層にも支持され、ZZRは’90年代のカワサキを代表する人気モデルとなったのでした。

300km/hに迫る超高性能と常用域における使い勝手を高次元で両立し、スポーツバイクのニュー・スタンダードを打ち立てたZZR1100。

このZZRの完成度の高さが、平成以降の日本製スポーツバイクの発展に大きく貢献したことは間違いないでしょう。

▲「速さ」と「乗りやすさ」をうまく両立したその完成度の高さは、後のオートバイの進化に大きな刺激を与えた
▲「速さ」と「乗りやすさ」をうまく両立したその完成度の高さは、後のオートバイの進化に大きな刺激を与えた

画像引用元:カワサキモータースジャパン

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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