成功する起業家タイプ、失敗する起業家タイプとは?
成功する起業家の「資質」
私は目標の「絶対達成」をポリシーに掲げて活動しているコンサルタントです。したがって、ただの「ノリ」や「勢い」で起業しようとする人に、もっと自覚してほしいと思っていることがあります。それは、ご自身の「資質」についてです。
どんな理由であれ、起業しようとしている人は強い情熱を持っています。その熱情に感化され、私は多くの経営コンサルタントと同様、すべての起業家を応援したいという気持ちを持っています。しかし当然のことながら「起業する」ことが目的ではなく、「起業して安定した経営をする」ことが目的です。さすがに長年コンサルティングをしていると、成功パターン、失敗パターンの両方を膨大に見てきました。晴れやかな表舞台へ短期間にのぼり詰めたベンチャー社長もいれば、借金を背負って残酷な人生の奈落へ落ちた人もいます。
なぜ成功したのか、なぜ失敗したのかは、いろいろなファクターが絡んでいます。しかし多くの場合、起業家の「資質」に関わるのではないかと私は考えています。
成功する起業家の「資質」として、私が最も重要視するのは、一言で表現すると「執念」です。「執着心」とでも言いましょうか。「熱さ」「本気さ」「覚悟」みたいなものは、コミュニケーションをとっていると伝わってくるものです。「静」の状態で確認できる起業家の姿勢です。
しかし「執念」というのは、まさに「動」。一緒に行動していないと確認できないものです。どんな小さな結果にもこだわり、とにかく執念でやり切る。結果を出す。言葉は悪いですが、どんな手を使ってでも決めた目標は達成する。達成しなければ気持ちが悪い。このような衝動を押さえられない人が、成功する起業家です。
抑えることのできない感情があるため、周囲に誤解されたり、非難されてしまうこともあります。したがって、事業が軌道に乗るまで多くの起業家が傷つき、「傷だらけの戦士」のようになっていきます。だからこそ成功した起業家は、これから起業にチャレンジしようとする人たちを心の底から応援したくなります。お金のためでなく、そのマインドに強く共感するからです。
「情熱」と「執念」はまるで違う
多くの人は「情熱」と「執念」はセットだと受け止めているかもしれません。「情熱」がある人ならば、当然「執念」という心も備わっているだろうと想像するのです。しかし現実は異なります。
「情熱」だけある人もいるのです。口では「私はやります」「夢を叶えます!」「いつかソフトバンクの孫さんのようになります!」と言っているのに、なかなか行動をスタートさせません。いったん行動をスタートしても、結果が出るまでやり切らず、「そこそこの結果」で十分と受け止める人もいます。
「情熱」がなく「執念」だけある人もいるのです。口では「やります!」「結果を出します!」などと自分を鼓舞するようなことを口にせず、燃える心をまるで見せることなく、淡々と結果を出す人です。
執念がある人は、「10」が目標であれば「8」や「9」で終わることを絶対に許しません。最後の最後まで諦めることなく悪あがきを繰り返し、最終的に目標の「10」にもっていきます。
「情熱」も「執念」も両方セットでもっている人もいますが、意外と稀です。そう多くはいないのです。したがって、私は「絶対やる!」「起業して会社を大きくする!」「社会に貢献する!」と声高に言う人は大好きですが、言葉だけで満足してしまう人もいますから、どんな小さなことでもキチンと結果を出し続けるかどうかを継続して確認しようと努めます。
したがって、情熱はあっても執念がない人は、起業せずに「会社員」のままでいることを私は勧めます。事業のコンテンツがどんなに良くても、起業家の「資質」がなければ事業が安定することはありません。
「組織経営者」タイプか、「個人事業主」タイプか?
起業で成功しても、組織を大きくしていく仮定で失敗する人がいます。それは「人間力」で勝負している人がこのタイプです。経営者、特に創業者は、ある一定レベルの「人間力」が求められます。起業家の人間的魅力で、多くの人が集まり、顧客を魅了し、事業が発展していくのです。
「人間力」は、起業家として欠くことのできない重要なファクターですが、たまに”それだけ”の人がいます。情熱もあるし、結果を出すまで諦めない執念もある。そして、それだけで事業が成り立つケースも多々あります。個人のお客様を相手にした保険営業や、コーチング、ヨガ、エステ……など、B2Cの事業です。
正直なところ、「人間力」だけで勝負している人は、何を言っているのかわからないときが多くあります。情熱もあり、素晴らしいスキルがあり、事業的にも魅力があるのですが、それを言語化できない。
「とにかくいいんだ」「体験してみればわかる」「騙されたと思ってやってみてちょうだい」
という言い方でも、その人が持っている一級品のスキルと、人間力で、多くのお客様を虜にし、事業を発展させることはできます。しかし対象顧客が個人ではなく、組織だと「人間力」だけでは勝負できません。
「絶対にいいから!」
と言い続けても、お客様が組織だと通用しません。
したがって「言語力」が必要なのです。なぜわが社が、そのベンチャー企業と取引きしなければならないのか。社内で合意をとるときの言語的な判断材料が不可欠だからです。
また、組織を大きくするときも同じです。経営者に「言語力」がないと、金融機関などから融資を引き出すことも難しいですし、30人、50人と従業員が多くなっていったときに統率がとれなくなります。
まとめ
個人を相手にした事業スタイルなら、起業家の情熱と執念、そして「人間力」だけで業績は安定します。2~3人のスタッフを抱えても給料を支払っていけることでしょう。しかし組織を相手にした事業スタイルなら、プラスして「言語力」が不可欠です。理路整然と話し、相手を説得できる言葉の力です。
また、個人を相手にした事業スタイルであっても、従業員が10名、20名……と多くなると、ある一定のラインを超えたとたんに収益が悪化するケースがあります。なぜなら、その事業は、起業家の「人間力」だけで成り立っているため、他の従業員に同等の「人間力」が備わっていないと、お客様がつかないからです。
これまで多くの起業家を見てきました。正直なところ、まず必要なことは「執念」です。「情熱」や「本気さ」「覚悟」などは、あって当たり前ですから、要件には入りません。少しぐらい人に迷惑をかけても、結果が出るまで遠慮せず突き進んでいく「執念」が不可欠。
その人の「執念」の度合は、一度や二度付き合っただけではわかりません。結果が出ているかどうかだけで判断します。小さくても結果を出し続けていなければ、どんなに言い訳をしようが、その人には事業に対する「執念」がない。お客様に対して責任を果たすことができないわけですから、起業家として失格です。「優秀な会社員」となって労働し、社会に貢献すればいいのです。
「執念」というのは、気合や根性で何とかなるものではありません。その人の「資質」です。いろいろなものを犠牲にして事業を起こすわけですから、起業家としての「資質」があるかどうかは、要チェックですね。