「水の日」「水の週間」応援のポケモンは「水の性質」もつシャワーズ。水の「常識はずれ」な性質知ってる?
「水そのもの」、あるいは「非常に水に近い性質をもつ」ポケモン
8月1日は「水の日」。その後の1週間は「水の週間」だ。もともとは水が不足しがちな8月に「貴重な水を大切にしよう」と1977年に制定された。その後、2014年に「水循環基本法」が施行され、「水の循環(じゅんかん)が健全であることの大切さについて、みんなでしっかり考えよう」という日として、法律で定められた。
今年から「水の日」を応援しているのが、みずポケモンの「シャワーズ」。ゲームなどではバトルに強いとは言えないが、愛らしいキャラクターでファンが多い。
関連記事:Yahoo!ニュース『ポケモン』シャワーズ、国のお仕事 8・1「水の日」応援“水の大切さを呼びかけ”
「水の日」動画:ポケットモンスター「シャワーズ」も「水の日」を応援!
みずポケモンは、水にすむ生き物をモデルにしたキャラが多い。代表的なみずポケモンには、「ゼニガメ」「トサキント」「ミズゴロウ」「ゲッコウガ」などがいるが、そのなかで、なぜシャワーズが選ばれたのか。
それはシャワーズが「水そのもの」あるいは「とても水に近い性質をもつ」からだろう。シャワーズの細胞は水分子に似ているとされ、水にとけると見えなくなる。すなわち水と同化する。
でも、ここで疑問が。
そもそも水の性質って、どんなものだったか?
水はとても身近な存在であり、飲まないと生きていくことができない。その一方で、あらゆる物質のなかで最も不思議な性質をもっていると言われていることをご存知だろうか?
ロンドン市バンク大学名誉教授のマーティン・チャップマン博士によると、「水の常識はずれ」な性質を数えると「67もある」という。
そのいくつかを紹介することにしよう。
なぜ、人間の体温は一定なのか。それは水のおかげ
最近は新型コロナの影響で、体温を測ることが増えた。
私たちの体温は35〜37度くらいに保たれているが、これには水の性質が関係する。
太陽から熱を受けると、岩石や土壌など陸地の表面は、簡単に温度が上昇する。一方で、水はなかなか温度が上昇しない。
陸地は「あたたまりやすく、さめやすい」という性質がある。陸地を構成する岩石や土は比熱が低いため、朝、太陽がのぼるとすぐに温度が上がりはじまる。すると陸地の大気も、温度が上がった陸地に熱せられる。
水には「あたたまりにくく、さめにくい」という性質がある。水の温度はなかなか上がらない。
1グラムの物質を1℃上げるのに必要な熱量を「比熱」というが、水は液体のなかで最大の比熱をもっている。
この水の性質は私たちの生活に大きく影響する。
たとえば、砂漠には、ほとんど水がないので、日中と夜間の温度差が、極端になる。朝に太陽がのぼれば砂や土は急激に温度が上昇し、日が沈むと急激に温度が下がる。
ただし、オアシスは地下にも水があるし、湧き出している泉も、水分を蓄えた植物も生えている。そのため昼間でも極端に高温にならず、夜間でも極端に低温にはならない。オアシスが生活しやすいのは、水があるだけでなく、水の比熱が大きいために、気温変化が小さいからだ。
水の比熱の大きさは、地球全体の気候の穏やかさにも関係している。水が地球の表面の約70%を占めていることから、昼と夜、夏と冬の気温の変化が少ない。
私たちが一定の体温を保つことができるのも水のおかげ。何しろ人間の体は、成人の場合、約60%が水なのだ。
水がいろいろなものをとかすおかげで人間は生きている
水はいろいろなものをとかす。塩や砂糖だけでなく、岩石や金属まで、目に見えないつぶにしてとかしてしまう。
じつは私たちも、水がいろいろなものをとかす力のおかげで生きている。
たとえば、食べ物からとった栄養を体中に運ぶとき。動物は食べ物からとった栄養を、胃や腸から血液のなかに入れ、血液にのせて体中に運ぶ。
反対に、体内の老廃物を体外へ出すこともする。動物は体内の不要なものを、血液にとかして運び、最後には尿や便として体外へ出す。
水がものをよくとかすのは、水の分子に秘密がある。
1つには、いろいろな物質の分子を小さく分ける性質がある。
たとえば、水に入った食塩の分子は、ナトリウムイオンと塩素イオンに分かれる。これは水の分子に電気で引きよせる力があるためだ。
もう1つは、物質の分子とくっつく性質。水の分子は水素の部分で、ほかの分子とくっつくことができる。
水ほど自分とは性質の違うものを数多くとかす液体はほかにはない。海水には自然界に存在するすべての元素がとけている。
飲みものに氷が浮かんでいるのは実は異常なこと
飲みものに入れた氷が浮かぶのも、氷山が海に浮かぶのも、あたりまえのようで、じつはあたりまえではない。
水が液体なのは温度が0〜100℃のとき。このとき水の分子は、グループになったり、グループからはなれたりしながら、いろいろな方向へ向かって自由に動いている。
あたためると100℃で沸騰して気体になる。温度が上がると、分子の運動が激しくなり、グループからはなれて外へ飛び出す。ちなみにシャワーズの英語名は「Vaporeon(ヴェイポリオン)」で「水蒸気」を意味する。日本語名は液体っぽいが、英語名は気体だ。
水は0℃以下に冷やされると氷(固体)になる。温度が下がると、分子同士がくっついて動かなくなる。
ふつうの物質は液体よりも固体のほうが重いのだ。なぜなら液体より固体のほうが密度が大きいから。ミクロなレベルでのギッシリ度が固体のほうが大きいため、重くなる。ところが水は、氷になると密度が小さくなる。
水分子は、酸素と水素の配列が特殊で、不思議な形をしている。そのため、きちんとならんでもすき間がたくさんできる。同じ体積で比べると、水より氷のほうが軽くなる。
もしも氷のほうが重かったら地球に生き物はいない?
じつは、この水の不思議な性質のおかげで水のなかの生き物が存在する。
寒い冬の朝、池に張った氷を割ってみると、なかは液体の水だ。
水の密度は4℃のときが最も大きく、それより温度が上がっても下がっても密度は小さくなる。水の温度が下がると、重くなった水は下へ沈む。しかし4℃より冷たくなると水は軽くなり、沈まなくなる。そして表面はどんどん温度が下がり、凍っていく。
池の氷で考えると、まず水の表面の冷たい空気に触れている部分が底の方の水より冷たくなる。温度が下がって重くなった水は底の方へ沈んでいく。表面の水がさらに冷たくなり4℃より下がってしまうと、水は沈まなくなって表面から凍りはじめる。
水がほかの物質と同じように、液体より固体のほうが重かったら、池、川、湖は底から凍ることになる。それでは水のなかの生き物は生きていけない。しかし、そうではないので、水のなかの生き物は、氷のカバーに保護され、気温が低くても暮らしていくことができる。
コップいっぱいに水を注いでもこぼれないのはなぜ?
雨がふった後、葉っぱの上にある水のつぶを見ると、まるくなっている。
コップにぎりぎりまで水を入れてみると、コップの中央がもりあがっている。水がまるくなろうとする力を「表面張力」という。水のなかにある水分子は、まわり中の水分子と、おたがいに引っ張り合っている。
でも、水のいちばん外側の水分子は、空気と接していて不安定な状態だ。そこで水は、空気に接している面積をなるべく小さくして、安定した形になろうとする。
水の表面張力は、自然界にある物質としては水銀に次いで大きい。
表面張力の大きな液体は大きな球をつくるだけでなく、物質と物質のすきまにしみ込んでいく。
これを毛細管現象という。毛細管現象とは繊維と繊維の「すきま」のような細い空間を、重力や上下左右に関係なく液体が浸透していく現象で、植物は、土壌中の水にとけた栄養分を細い根管から吸い上げ、さらに、導管と呼ばれる毛細管で高い茎の先や葉にまで吸い上げ、高い樹木として育つ。
これは日常いろいろなところに応用され、汗を吸いやすい服、水を吸いやすいタオルなどがつくられている。
打ち水をすると涼しくなるのはなぜか
夏の暑い日に道路に水をまく「打ち水」。打ち水の目的はアスファルトの表面に水をまいて表面温度を下げること。水は接するものから熱をうばって蒸発する。
水は通常100℃で沸騰する。これはほかの液体に比べてとてつもなく高い。
一般的には分子量が大きいほど、分子と分子が結びついている力が強くなり、沸点、融点は高くなる。上のグラフではいちばん左に水分子があるが、「分子量から推定される沸点、融点」に比べ、「実際の沸点、融点」が高いことが示されている。
水を構成する分子が、水素結合という強い力で結びついているため、気体になるには多くの熱エネルギーを必要とする。汗をかくと体温が下がって涼しくなるのもこのためで、汗が蒸発するときに体から熱をうばっている。
この気化熱があることで汗をかくと体温調節ができるのだ。
私たちが生きていられるのも水の不思議な性質のおかげ。みずポケモンのシャワーズとともに、そんなことを考えてみたい「水の日」そして「水の週間」である。