「日韓慰安婦合意」を巡り韓国で外相と元第1次官が国会でバトル
昨日(21日)、韓国の国会外交統一委員会で鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官(外相)と元外交官の野党「国民の力」所属の趙太庸(チョ・テヨン)議員との間で慰安婦問題を巡って激しいやりとりがあった。
趙議員は朴槿恵(パク・クネ)政権時に岸田文雄外相(現首相)との間で「日韓慰安婦合意(2015年12月)」を交わした尹炳世(ユン・ビョンセ)外相を2014年2月から2015年10月まで外務第1次官として支え、対米、対日外交の手腕を評価され2015年10月に国家安全保障室第1次長に抜擢された経歴の持ち主である。
文大統領の対日姿勢を常に批判し、文大統領が3月1日の演説で日本について「非常に重要な隣国だ」と述べ、対話と協力を強調し、未来指向の関係を提案した時には「文大統領は対日強硬論から対日融和論へと180度変わってしまったが、その理由については何の説明もない」とその豹変ぶりを手厳しく批判していた。
(参考資料:文大統領には皮肉にも「助け船」となる「慰安婦原告敗訴」判決 韓国政府が補償へ)
趙議員は国家が責任を持って元慰安婦らの遺骨を保存するための法整備に奔走していることもあってこの日、国会外交統一委員会対象の国政監査の場に出席した鄭外相に対して日韓合意に基づき日本政府が出捐した基金100億ウォン(当時10億円)の残金(56億ウォン)問題を取り上げ「2017年当時38人だった被害者の方々が今は13人しか残っていない。政府間協議は進展せず、慰安婦被害者らのための支援金が3年もの間、棚上げにされている。慰安婦のために使ったらどうか」と質すと、鄭長官は「そんなに簡単な話ではない。日本は返金を受け取らないと言っているし、残金も勝手に使うなとも言っている。日本が反対しているのでどうにもできない」と色をなして反論していた。
(参考資料:日本の「慰安婦拠出金」10億円は宙ぶらりん状態・・・「返金」の声は立ち消えに!)
ちなみに「日韓慰安婦合意当時」、100億ウォンのうち生存被害者47人のうち34人と、死亡被害者199人のうち58人に「癒し金」の名目で44億ウォン(約4億3千万円)が支給され、56億ウォンが残っていた。
さらに、趙議員が「韓国政府だけの問題ではないが、結果として元慰安婦らのために政府がやったことは何もないではないか。慰安婦問題で文政権はあたふたしている」と元慰安婦問題が進展しない責任を追及すると、鄭外相は声を荒げ「一方的に批判するのはどうかと思う。そもそもの原因は(貴方らが)被害者と協議せずに10億円で合意したことにあるのではないか」と不満を露わし、趙議員が「(文政権が)2017年にこの問題を始めた時の原罪は実に大きい」と畳みかけると、鄭長官は「原罪が文政権にあるというのは不当である。本質を辿れば、2015年の合意に原罪がある」と言い返す始末だった。
温和な性格で知られている鄭長官は詰問されたことで感情が高ぶったのか「文在寅政権は日韓慰安婦合意を破棄したことはなく、合意の枠の中で日本を説得してきた」として異例にも韓国が日本に提示してきた解決案の一部中身まで吐露してしまった。
鄭長官が明らかにした韓国側の提案は▲2015年の慰安婦合意により日本が和解・癒し財団に拠出した10億円に該当する金額を韓国政府の予算で日本に返還する案▲男女平等基金の名目で100億ウォンを集め、和解・癒し財団の残額56億ウォンと合わせて慰安被害者らのために使用する案▲日本が真の謝罪をした場合、被害者らに補償として支給する案の3点だが、韓国政府が日本に提示した具体案を公開したのはこれが初めてである。
(参考資料:「日本から謝罪を取り付ける」 韓国保守大統領候補(尹錫悦前検察総長)が元慰安婦に約束!)
最後に鄭長官は日本との交渉では「一部進展があった」としたうえで「(我が政府は)原則を守りながらも韓日関係を未来志向的に発展させるため様々な合理的な案を模索し、日本側と協議している」としながらも「原則を曲げてまで日本と協議はできない」と答弁していた。原則とは「被害者の名誉と尊厳の回復にある」と強調していた。