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OPS.582の遊撃手を退団させ、後任にOPS.612の遊撃手を迎える。これはアップグレードなのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ポール・デヨング Sep 19, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 シカゴ・ホワイトソックスの遊撃は、これまで、ティム・アンダーソンが定位置としてきた。来シーズンは、アンダーソンに代わり、ポール・デヨングが守ることになりそうだ。

 今月初旬、アンダーソンは、年俸1400万ドルの球団オプションをホワイトソックスに破棄され、FAになった。解約金は100万ドルだ。

 今月下旬、ホワイトソックスは、デヨングを迎え入れた。ESPNのジェシー・ロジャースが、1年契約で合意、と報じている。来週の身体検査を経て、入団となる見込みだという。デヨングは、2ヵ月前にサンフランシスコ・ジャイアンツから解雇された。

 2人を比べると、パワーに関しては、デヨングが勝る。今シーズンのホームランは、アンダーソンが1本、デヨングは14本。ここ3シーズンの合計は、24本と39本だ。いずれも、打数はデヨングのほうが少ない。アンダーソンは、2018年の20本塁打がシーズン最多だが、デヨングは2019年に30本塁打を記録している。

 とはいえ、この遊撃手の交代は、アップグレードとは言い難い。

 今シーズン、アンダーソンは、524打席でOPS.582を記録した。デヨングは、3チームの計400打席でOPS.612だ。400打席以上の212人中、ワースト1位とワースト10位に位置する。出塁率は、ワースト14位の.286とワースト2位の.258。こちらは、デヨングのほうが低い。また、ここ3シーズンのOPSは.707と.618、出塁率は.319と.265なので、どちらもデヨングが下だ。

 ホワイトソックスは、コルソン・モンゴメリーが台頭するまでの「つなぎ」として、デヨングと契約を交わしたのではないだろうか。モンゴメリーは、2021年のドラフト全体22位だ。同じ左打ちの遊撃手、コリー・シーガー(テキサス・レンジャーズ)と比較されることが多い。

 今シーズン、モンゴメリーは、ルーキークラスとA+とAAで計64試合に出場し、打率.287と出塁率.456、8本塁打、OPS.940を記録した。スプリング・トレーニングで右脇腹と腰を痛め、6月中旬まで欠場した。ここからは、順調にいけば、来シーズンが終わるまでにメジャーデビューし、2025年は開幕から遊撃を守ることになるだろう。

「つなぎ」とするのに、年俸1400万ドルは高すぎる。デヨングの契約は、金額がわかっていないが、ホワイトソックスが破棄したアンダーソンのオプションの半額を超えることはないはずだ。3分の1以下や4分の1以下でも、驚きはない。

 なお、アンダーソンもデヨングも、復活の可能性はある。かつて、彼らは将来を嘱望されていて、2人とも、メジャーリーグ2年目を迎える前に、長期の延長契約を手にした。アンダーソンは、2017年3月にホワイトソックスと6年2500万ドル(2017~22年)。デヨングは、2018年3月にセントルイス・カーディナルスと6年2600万ドル(2018~23年)だ。どちらもよく似ていて、2シーズン分の球団オプションがついていたことも共通する。

 来シーズンの年齢(6月30日時点)は、アンダーソンが31歳、デヨングは30歳だ。

 今月中旬、アンダーソンには、ロサンゼルス・エンジェルスが興味を抱いているという報道が出た。ただ、その後の動きは見えてこない。

「エンジェルスがOPSワースト1位の遊撃手に興味。遊撃にはネトがいるのに!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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