日本で唯一!?青春18きっぷでタクシー乗れる、JR津軽線代行「わんタク」は地域を元気付けられるか
2022年8月の豪雨災害以降、蟹田ー三厩間で運休が続いている青森県のJR東日本・津軽線。現在、津軽線では、代行バスと乗り合いタクシーによる鉄道代行輸送が行われている。
設定されているのは、代行バスが朝夕に4往復でこのうちの1便は平日に運休となる。また、日中の4往復は予約制の「わんタク定時便」という乗り合いタクシーが運行されているほか、「わんタク定時便」を補完する形で9時から17時までの間で30分間隔で予約可能な「わんタクフリー便」が運行されている。
定時便は満席でフリー便を案内される
筆者は先日、津軽線の代替輸送を兼ねている「わんタク」に乗車するべく、北海道新幹線で奥津軽いまべつ駅へと向かい、そこから津軽線の終点である三厩駅を目指すことにした。北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅には津軽線の津軽二股駅が隣接しており、津軽線が豪雨により被災する前はこの駅からそれぞれ三厩方面と蟹田・青森方面の普通列車に乗り換えることができた。なお、現在、代行バスと「わんタク」は、奥津軽いまべつ駅前のロータリーに発着している。
筆者が奥津軽いまべつ駅に到着する時間帯は、津軽線の代行輸送は「わんタク」になることから事前予約が必要となる。筆者は新幹線乗車前に「わんタク」ホームページに電話番号の記載があったコールセンターに電話をかけて予約を試みた。新幹線到着から1番早い「わんタク定時便」予約しようとしたところ「すでに満席である」と言われ、「わんタクフリー便」の予約を勧められた。新幹線の到着30分後の14時に奥津軽いまべつ駅前に送迎に来てくれるという。また、念のため「JRの切符で乗車したいのだが大丈夫か」と聞いたところ「問題ない」との回答だった。
奥津軽いまべつ駅には13時半ころ到着。さっそく駅前ロータリーに向かうと、そこにはトヨタハイエースとトヨタプリウスが止まっていた。最初は、ハイエースのほうに乗るのかと思ったがこちらは蟹田に行く便だったようで、その後、プリウスから降りてきた運転手さんが「三厩方面が予約の方はお声掛けください」と呼びかけてくれたので予約名を告げ、青春18きっぷを見せて乗せてもらうことが出来た。乗車したのは筆者を含め2名で、もう1人の方も新幹線からの乗り換え客でそのまま竜飛崎灯台まで行くという。筆者は、一旦、今別駅で降り30分後のフリー便で三厩駅まで向かい、さらに30分後のフリー便で奥津軽いまべつ駅へと戻ることにした。なお、奥津軽いまべつ駅から今別駅までは10分ほどで到着した。
今別駅からは、それまでの4人定員のトヨタプリウスから6人定員のトヨタエスティマへと車両が変わったが乗客は筆者だけで今別駅から三厩駅も10分ほどで到着した。運転手さんに話を聞いたところ「わんタクについては通常は、地元住民の買い物や通院などの利用が多いが、JRの青春18きっぷや大人の休日倶楽部パスの期間になると予約が殺到し大忙しになる」という話だった。
鉄道廃止で客足はどうなるのか
現在は、予約制乗り合いタクシーである「わんタク」は鉄道代行輸送機関となっていることから、JRのフリーきっぷが奥津軽地方への集客の手助けとなっている側面があるが、JR津軽線の蟹田ー三厩間が廃止されこの区間の代替交通をJRの切符で利用できなくなった途端に客足が遠のいてしまうことが心配される。
いち利用者個人の視点で見れば、30分単位で予約ができ安価に利用できる「わんタク」の存在は便利である。しかし、日中の定時便が満席であったことや、定時便を補完するフリー便がプリウスやエスティマだったことを考えれば、仮に奥津軽地方で観光キャンペーンを行った場合、輸送できる人数のキャパが限られることから、この地域の地方創生を考えた場合には、鉄道の廃止は地域のさまざまな可能性を奪うことになりかねないと感じた。
新青森駅で、新幹線に接続する三厩行の観光列車を走らせるだけでも、バスやタクシーの輸送力を十分に超えるだけの乗客を奥津軽地方に引き込むことのできるポテンシャルを津軽線が持ち合わせていることは、福島県の只見線の事例などからも明らかである。
(了)