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行方尚史九段(50)達人戦準々決勝で激戦を制す 羽生善治九段(54)2連覇ならず

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月3日。東京都立川市・立川ステージガーデンにおいて、第2回達人戦立川立飛杯準々決勝▲羽生善治九段(54歳)-△行方尚史九段(50歳)戦がおこなわれました。


 11時に始まった対局は12時28分に終局。結果は118手で行方九段の勝ちとなりました。


 今期から初参加の行方九段は準決勝に進出。昨年優勝の羽生九段、2連覇はなりませんでした。

行方九段、密度の濃い一局で勝利

 羽生九段先手で、矢倉模様の立ち上がり。対して行方九段は左美濃から右四間に構えました。そして序盤早々から駒がぶつかります。

行方「激しくなると思ったらまた駒組に戻っていって。非常に消耗する将棋でした」

羽生「序盤からかなり激しくなったんですけど。そこからいったん収まって。なんか判断がずっとつかないまま指していたようなところですかね」

 互角の中盤戦が続く中で、両者ともに持ち時間の30分を使い切り、あとは一手30秒未満で指し続けました。

行方「去年も観戦していて、30秒将棋が酷だなと思ってたんで。早めに追い込まれないようにだけ気をつけてたんですけど。やはりねじり合うと必然的にやっぱり30秒将棋の叩き合いになって」

 97手目。羽生九段は自玉に迫る成銀を取らず、相手陣の桂を取って寄せ合いに出ます。対して行方九段は正確な指し回しで対応。このあたりから行方九段が優位に立ったようです。

行方「もうわけがわからない状況がずっと続いたんですけど。自分としてはうまく指せたと思っています」

 最後は行方九段が羽生玉をきれいに詰ませて、羽生九段が投了。両者ともに一礼をかわし、会場のファンから大きな拍手が起こりました。

「まで118手をもちまして、行方九段の勝ちとなりました」

 棋譜読み上げの貞升南女流二段がそう告げたあと、両対局者は壇上で感想を述べました。

行方「いま手数が118手って、最後、読まれたような気がするんですけど。ちょっと自分としては150手ぐらいいったような」

 日本将棋連盟の会長職を務め、文字通り東奔西走の羽生九段。残念ながら本棋戦2連覇はなりませんでした。

羽生「平日にも関わらず、たくさんの皆様にお越しいただきまして、誠にありがとうございました」

 本局以後の準々決勝3局のスケジュールは以下の通りです。


13:30~

丸山忠久九段(54歳)-増田裕司七段(53歳)

15:45~

谷川浩司17世名人(62歳)-森内俊之九段(54歳)

18:00~

佐藤康光九段(55歳)-木村一基九段(51歳)

 行方九段は明日12月4日14時45分からおこなわれる準決勝に進出。佐藤九段-木村九段戦の勝者と対戦します。

行方「佐藤九段とはたぶん棋士になって一番多く指してる相手で。木村九段は、こういう大きな舞台で、やはり一度は指したいなと思っている相手ですので。どちらが来ても、しっかり指すだけです。(対局は明日14時45分からで)ここから丸一日以上、間(あいだ)が空くので。その間(かん)の調整が鍵だなと思っています」


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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