待機児童数は2万6081人もいて、解消されないのはなぜ?
「待機児童なんて一人もいない」ーという政治家の発言が波紋を呼んでいますが、厚生労働省の「保育所等関連状況取りまとめ(平成 29 年4月1日)」を公表によると、待機児童数は2万6081人で前年比2528人の増加となっています。なぜ、待機児童問題は長年に渡って放置され続けているのでしょうか?
平成27年4月に「子ども・子育て支援新制度」がスタートし保育所数は大幅に増えていますが、待機児童数は依然として増え続けています。今年も各地で認可保育施設の選考結果が出始めていますが、横浜市では4417人が1次選考に落ちて4人に1人が落ちたとという報道も出ています。おそらく今年も劇的に待機児童数が減るということはないと思われます。
なぜ待機児童は減らないのかというと、保育園の新設に間に合わないくらい、子供を預けて働きたい人のニーズが増えているからです。経済学の観点から言うと、「超過需要」の状態がずっと続いているのです。
通常の市場の場合、超過需要の時には、商品やサービスが不足していて人気が上がるため、企業は価格を上げて儲けようとします。価格が上がると、サービスを受けたいという需要が減ります。値段が上がると、生産を増やす企業が現れるので供給が増えます。価格が上がることによって、需要が減るのと同時に供給が増えて需給は一致(均衡)します。
しかし、保育園の場合は政府が決めた保育園市場のルールがあり、既存の幼稚園や保育園のしがらみなども多くうまくいっていないのです。完全に政府の失敗なのです。
私が住んでいるシンガポールは小さな政府で民間企業に多くを任せており政府の介入が最小限なので保育園の待機児童問題もありません。強いこだわりから希望の園を待っている人も中にはいますが、選ばなければすぐに入れる状態です。共働き率も3/4程度で働く女性が多く、保育園や外国人ヘルパーが女性の雇用を支えています。
保育料は月5〜10万円程度の場合が一般的(高い園は20万円近くする場合も)と料金は高いですが、国民には政府からの補助もあり、子供の年齢や世帯収入にもよりますが、2万4000円から4万8000円程度の補助が受けられる場合もあります。補助は直接園に払われ、保育料と補助の差額を各家庭が負担するという形になります。働いていなくても補助を受けることができますが、働いているほうがより多くの補助を受けることができる仕組みになっています。
また、保育料の差は施設、カリキュラム、教員の給料(欧米、シンガポール、フィリピン人の場合などまちまち)や料理の内容などサービスの違いで、日本のような高い認可外保育園よりも安い認可保育園の方がサービスがよいといった不公平感は出ません。認可外保育園は政府からの補助が少なく、認可保育園は政府の補助大きいのでそのような問題が起きるのです。シンガポールの補助の仕方のほうが偏りがなくなるのではないでしょうか。
また、シンガポールでは入園の希望をする際にウェイティングフィー(待機料)をとる園も多いです。そのため、希望の園の他に複数登録をするという人はほとんどいません。登録も手間がかからず、インターネットでできて一度も園に行かずとも登録ができる場合もあります。
筆者も4年前に日本で保活を行い無残な結果に終わりましたが、各園に直接申し込みをする認可外保育施設の場合、各園に電話をかけ説明会の予約を取らなければなりませんでした(回線がパンクして電話が繋がらないことが多かったです)。説明会に足を運び、待機リストに名前を書いたのですが、待機料を取らない施設が多く、無料なので皆同じ園を複数併願するという無駄な状況がありました。待機料を少しでも取れば何十園にも足を運び名前を書かなければならないという状況は解消されるのではないでしょうか。
政治家の仕事は保育園市場の規制を緩和し、民間が参入しやすいルールを作ることなのではないのでしょうか。三歳児神話などに口出しするのはお門違いで問題をすり替えないで欲しいものです。働く、働かないは個人の選択の自由であり、働きたいと希望をする人にはその目標が実現できる社会を作っていって欲しいと思います。保育園サービスを利用できない状況(超過需要)が放置され続けるのならば、子育て世代の男女が仕事で活躍することは難しいのですから。