怪我から復帰の日本代表・具智元、危機感の背景は。【ラグビー旬な一問一答】
生真面目で謙虚な戦士だ。いくら指揮官からの信頼が厚いと周りに見られていても、危機感をあらわにして必死に戦う。
ラグビー日本代表の具智元は8月18日から、北海道・網走での代表合宿に参加(~28日)。参加する41名のうち31名が、9月20日開幕のワールドカップ(W杯)日本大会の登録メンバーとなる。大舞台に向けた最後のサバイバルレースにあって、具は山下裕史、ヴァル アサエリ愛、木津悠輔と右プロップ(3番)の座を争う。
韓国代表の左プロップ、東春氏を父に持つ具は、2017年に23歳で日本代表デビュー。身長183センチ、体重122キロという恵まれたサイズを誇り、スクラムの強さと献身的な働きに定評がある。
今年は6~7月の宮崎合宿で右手を骨折。7~8月のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)には参加できず、今回の網走合宿から全体練習に戻っていた。
本格始動した19日、20日は、実戦練習でも控え選手主体と見られるグループで活動。しかし21日になると、主力候補と見られる「ビブス組」に入った。
故障中の思い、復帰後の決意について声を絞る。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――「ビブス組」になったのは当日、わかったようですね。その時の気持ちは。
「(少し間を置き)…何て言うんですかね。もっと頑張らなきゃ、もっと魅せなきゃ、という気持ちですかね。ビブスを着ていない時もそうでしたけど、着ている時は、もっと思いました」
――逆に、「ビブス組」ではなかったときは焦りもあったのでは。
「そうですね」
――3番の争いは激しくなっているようです。
「そうですね。PNCではスクラムも堅く組んでいますし、アサさん(ヴァル)、ヤンブーさん(山下)、木津も、皆、いいので」
――PNC開幕前に、スクラムのルールが少し変わりました。両軍の最前列が首や肩を触れ合ってはいけないようになることで、相手との間合い(ギャップ)が生じることとなりました。練習で組んだ感触は。
「宮崎でやっていた時は遠くから組んでいたのですが、(現行ルールで試合をして迎えた)網走で(自身が)帰ってきたら、(互いの間合いが思ったより)近くなっていて、(バインドし合う時の力の)かけ合いもある。まだ、前ほどのスクラムは組めていないです。自分では」
――右手。スクラムのバインドの時など、痛みは出ませんか。
「ラグビーをやっている時は大丈夫です。ダンベルを持つと少し痛いですが。本当に、ラグビーをやっている時は大丈夫なのでよかったです」
――フィールドプレーではどんなアピールをしたいか。
「(背番号)1~5番は(グラウンドの)真ん中で、運動量が多い。早く起き上がって早くポジショニングする。真面目に頑張るところを(アピールしたい)。怪我をして、逆にフィットネス(持久力強化)しかできなかった。スクラムではうまく行っていないところもありますが、走るところでは前よりも走れています。(この日の練習も)きつかったけど、足は動いています」
――W杯は約1か月後。
「まずはこの合宿でしっかりアピールして、選ばれたらすべてをもっと上げていかないといけない。(特に)スクラムですね」
問答のなかでは「前ほどのスクラムは組めていない」と話し、「真面目に頑張るところを(アピールしたい)」とも続ける。本来の人間性が選手としての長所に昇華されている。強調される危機感は、この人の謙虚な性格の現れとも取れる。
過去に故障から戻った際は、概ね「2~3週間」でスクラムの感触を取り戻したという具。アイルランド代表、スコットランド代表などと戦うW杯本番でも、貴重な戦力となり得る。