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【英会話】The average is about 1 book と言ったら首を傾げられた。なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど仕事で英語を話していますが、Native English Speakerってホントに現実を丁寧に写し取らないと気が済まない人たちなんだな と感じることがよくあります。
 たとえば、日本の気候はEnglandより温和だ って言おうとしたら、
The climate of Japan is milder than England.
で、いいやと思われるかもしれないですが、Native English SpeakerはEnglandのなに? と 思っちゃう。なので、現実の切り取り方を変えずに、丁寧に、
The climate of Japan is milder than that (=the climate) of England.
って、言う必要があるんです。まぁ、だいたいわかってくれるだろ と思って、言葉を割愛して、現実の切り取り方を変えると途端に不自然になっちゃうんですねぇ。

 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むと自然な英語を得られるお得なエッセイです。

平均はだいたい1冊らしいよ。

 English man の友人のRichとは仕事の付き合いもありますが、それ以外にもよく話すのは、footballや哲学、本の話です。ミーティングすると仕事の情報共有よりも、そっちの方が長かったりする。お互いに面白い本や話題の情報交換するんです。
 この間もRichに「収容所群島」って本を紹介してもらいましてね。ちょっと私のアンテナには引っ掛からない本だったんでへ~です。私の方は、めずらしく本を切らしてしまっていて、そういう時に手を出すのは買ってあるシリーズもの。
 一度通して読んだんだけど、もう一度一気に読みたいと思っている小説シリーズや、全巻揃えてあるけど、まだ読んでないシリーズ。「妖星伝」とか「虚無回廊」、「陋巷に在り」、「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」みたいなやつです。今回は、The Earthsea Cycle に手を出してしまいました。いや~、面白い。言わずと知れたファンタジーの傑作ですが、魔法がなんの暗喩かに気づくとまるで違う意味合いが生じる。ハードカヴァで6冊、一気に読んでしまいました。

 そんな話をRichとしていたんですが、今月はどれぐらい読んだの? って訊(き)かれた。まぁ、アタリのシリーズを読んでますからね、量(はか)は行ってるんで12冊ぐらいだよというと、ふ~ん、ちなみに日本人の平均ってどれぐらいなの? と続けて訊かれる。
 この質問にはちょっと詰まってしまって、ネットで調べました。するといろいろなデータはあるけど、今だいたい1冊なんですね、日本人の平均って。なんで、それを

The average is about 1 book. (平均はだいたい1冊らしいよ)

って言ったんですが、Rich、ちょっと首を傾げる。
 みなさん、Richがどうして戸惑ったか、気づかれるでしょうか?

 問題は、現実の切り取り方がずれているという点です。The average と1 book という言葉のカテゴリィが違う。平均は数の領域だし、本はモノの領域。なので、バランスが取れてないんです。日本人の平均について聞かれたもんだから、わかるだろ と思っていろいろとっちゃったのがいけない。
 すぐRichが具体的にって言って来たんで、ああ、いかんいかんと、

The average number of books Japanese people read a month is about one. (日本人が1ヵ月に読む本の平均数はだいたい1らしいよ)

というと、Richはにっこり、よくわかる英語になったと褒められました。

 こういう英語の現実を丁寧に写し取る特徴は、ふわっと表現して相手の想像に任せる日本語にはないところで面白くて、便利。
 日本語の時にも、相手にきっちり意図を伝えたいときには、一度自分の思っていることを英語にしてみるといいですよ。あ、ここにちょっと切り取り方のズレがあるな と気づけます。あ、もちろん、それとなく伝えたいときや、誤解を愉しみたいときは、ふわっとした日本語で。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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