【チャンピオンズカップ展望】昨年覇者のクリソベリルに死角なし?不安材料と他陣営の勝算
この秋、JRAのGIは1番人気馬が連勝中。今回、クリソベリルは絶対か?
12月6日、JRA中京競馬場で第21回チャンピオンズカップが行われる。このレースはダートの秋の王者を決めるJRAのGIレースで第14回まではジャパンカップダートの名称で行われていた。外国馬も参加は可能だが、今年は日本馬だけでフルゲート16頭で行われる。
舞台となる中京競馬場は左回り、ダートコースは1周1530m、直線410.7mと全体的には小回りなわりに直線が長い。また、チャンピオンズカップが行われるダート1800mはホームストレッチからの発走だが、スタート直後に急な上り坂があるのが特徴だ。
今年の秋冬のJRA・GI競走は天皇賞(秋)とジャパンカップを制したアーモンドアイをはじめ、7戦のいずれも1番人気に支持された馬が1着を獲っている。このチャンピオンズカップで1番人気が予想されるのは昨年の覇者であるクリソベリル(牡4、栗東・音無厩舎)だが、人気に応えらえるだろうか?
ダートGIは芝のGIレースよりも強い馬が強い競馬をする傾向があり、これまで日本国内で負けていないクリソベリルはかなりの人気を集めるはずだが、今回も死角はないのか、気になるところだ。
■2019年チャンピオンズカップ(GI) 優勝馬クリソベリル
クリソベリルの枠順は外枠8枠15番
正直なところ、このレースに限ってはクリソベリルの不安材料がないわけではない。
昨年のチャンピオンズカップは古馬牡馬57キロに対して、クリソベリルは3歳馬のため55キロだったが、今回は他の古馬と同じ57キロ。枠順も昨年は3枠5番と内側だったが、今年は8枠15番で中京ダートではあまり歓迎されない外から2番目の枠だ。また、「これまで1か月に2回走ったことがない」というローテーションも気になる。
もう1点、水曜日の調教で併せ馬をしたが遅れている。管理する音無師はわりとハッキリと馬の状態を話す方なのだが、「(他の)馬としっかりと併せ馬することが(追い切りの)課題だった。時計がちょっと遅かった」「前日(土曜日)にちょっと大きめで乗ろうかな」と、最終調整で帳尻を合わせるイメージで調整を進めているようだった。つまり、水曜の段階で完璧に仕上がっているというかんじでもないと推察できる。
■2020年チャンピオンズカップ直前に行われた音無調教師のインタビュー/カンテレ競馬BEAT【公式】
終わってみれば、クリソベリルがあっけなく国内無敗を続けるシーンは十二分に考えられるが、かなりの人気を背負うのは間違いないのでその取捨については直前の調整を見た上で慎重に見極めたい。
※12月6日、前日追いの後に記事を追加しました。
【チャンピオンズカップ】悩む!前日単勝オッズ1.5倍、1番人気クリソベリルの取捨】
■2020年JBCクラシック 優勝馬クリソベリル
今年の3歳世代の注目馬はカフェファラオ
ここ2年のチャンピオンズカップは連続して3歳馬が優勝している。2018年は3頭が参戦してルヴァンスレーヴが優勝、昨年の2019年は2頭が出走しクリソベリルが優勝している。今年は3歳馬は斤量が56キロで出走できるので、古馬と実力伯仲の3歳馬であればこの斤量差は有利な条件といえるだろう。
今年出走するメンバーでは、3歳馬は5戦4勝のカフェファラオ(牡3、美浦・堀厩舎)1頭が参戦する。
過去2年の優勝馬とカフェファラオを比べると、ルヴァンスレーヴは7戦6勝2着1回(うち、重賞は地方交流を含めてG1を3勝、GIII・1勝)、クリソベリルは5戦5勝(うち、重賞は地方交流を含めてG1を2勝、G2を2勝)とGI優勝実績があるのに対して、カフェファラオだけ地方交流を含めたG1が未勝利という点は気になる。
特に、前々走のジャパンダートダービー(G1)では7着に敗れたが、1コーナー手前でバランスを崩したり、キックバック(前を走る馬が蹴った砂が自分に当たること)を嫌うなど脆さが露呈した印象を受けた。
それでも、3頭とも古馬と対戦する重賞で勝っているし、鞍上にはクリストフ・ルメール騎手を配している。チャレンジする立場だが、ジャパンダートダービーでの敗因を克服しているならば侮れない。
■2020年チャンピオンズカップ直前に行われたC・ルメール騎手のインタビュー/カンテレ競馬BEAT【公式】
状態が上がっている昨年の2、3、4着馬たち
昨年のチャンピオンズカップの2着ゴールドドリーム(牡7、栗東・平田厩舎)、3着インティ(牡6、栗東・野中厩舎)、4着チュウワウィザード(牡5、栗東・大久保龍厩舎)らは今年も揃ってチャンピオンズカップに参戦する。
3頭とも、このレースに向けて調子を上げてきているし、いずれもGI優勝経験のある実績馬たち。陣営も馬自身もレースに向けてのコンディションづくりが上手で、さすが、の一言である。
ゴールドドリームは通算26戦9勝。7歳馬だが、その筋肉隆々な馬体からはまだまだ衰えは感じない。むしろ「以前は脚元が浮腫んだりしていたが、今はスキッとしている。状態は完璧に近い」(平田師)と陣営は完成期に入ったことを強調するほどだ。
今回は和田竜二騎手とのコンビになるが、かなり手が合っている印象も受ける。
■2017年チャンピオンズカップ(GI) 優勝馬ゴールドドリーム
武豊騎手が騎乗するインティは通算15戦7勝。昨年2月のフェブラリーS以来、優勝から遠ざかってはいるが、調教の様子からここにきて復調の気配がうかがえる。左回りで好成績をおさめているのもいいし、この馬らしいリズムで走れれば勝機はある。
■2019年フェブラリーS(GI) 優勝馬インティ
通算17戦9勝のチュウワウィザードはとにかく堅実。馬場状態、コース、騎手を問わず、とにかく成績が崩れない。昨年と同じくJBCクラシックからチャンピオンズカップというローテーションで挑むが、状態についてはこちらも申し分ない。
■2019年JBCクラシック(Jpn1) 優勝馬チュウワウィザード
ダートに転向し復活した芝重賞実績馬たち、新境地での活躍なるか
今回のチャンピオンズカップには、芝で重賞を制した経験のある馬たちのダート転向も目を惹く。
凱旋門賞にも挑戦したクリンチャー(牡6、栗東・宮本厩舎)は前走ダート重賞のみやこS(GIII)を制しての出走となる。もともと叩かれて良くなるタイプで、冬場の寒い時期が得意なのでかなりいいコンディションでの出走が期待できそうだ。
エアスピネル(牡7、栗東・笹田厩舎)は芝の重賞を3勝、GIで2着2回の実績馬。今回がダート4戦目だが、初めてのダート戦でチャンピオンズカップにも出走するサンライズノヴァ(牡6、栗東・音無厩舎)の2着に健闘している。
タイムフライヤー(牡5、栗東・松田国厩舎)は芝のGIであるホープフルSの優勝馬。今年夏は函館・札幌で重賞エルムS(GIII)を含めたダート戦を連勝している。
芝とダートの両方で成功をおさめるのは至難の業だが、このレースで現役を引退予定のモズアスコット(牡6、栗東・矢作厩舎)のようにやり遂げた馬もいる。
さまざまキャリアを持つ馬たちが集まって競うのも、今年のチャンピオンズカップ(GI)のみどころといえるだろう。発走は2020年12月6日、午後3時30分だ。
■2020年フェブラリーS(GI) 優勝馬モズアスコット
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】