【チャンピオンズカップ】悩む!前日単勝オッズ1.5倍、1番人気クリソベリルの取捨
今秋のJRA・GIの流れは"強い馬が強い競馬で勝つ"
今年の秋から冬にかけてのJRAのGIレースは"強い馬が強い競馬で勝つ"レースが続いている。実際、単勝1番人気に推された馬がすべて1着になっている。ここまで荒れないシーズンは過去、あっただろうか?このまま、有馬記念まですべてのGIで1番人気に推された馬が勝つのではないか!?と思わせるほどの勢いだ。
今日行われるダートのGI、チャンピオンズは昨年の覇者であるクリソベリル(牡4、栗東・音無厩舎)が1番人気に推されている。国内でこれまで負けていない実力馬で、他の陣営から口々に「クリソベリルは強い」と言われるほど一目置かれている存在だ。
チャンピオンズカップの前日発売オッズをみても、クリソベリルの単勝は1.5倍の1番人気に支持されている。過去の実績からも当然そうなるだろう。
しかし、である。筆者は今回のチャンピオンズカップだけクリソベリルに不安を感じずにいられない。
昨年のクリソベリルは3枠5番、道中は逃げる2枠4番のインティのうしろにつけ、最後の直線で満を持して抜け出して優勝を決めている。しかし、今年は枠が歓迎できない。チャンピオンズカップは2014年から中京競馬場に舞台を移されたが、過去いちども8枠は馬券に絡んでいない。そもそも上位人気馬が8枠に入らなかったのもあるが、各陣営が「真ん中より内」を好むように少なくとも大外枠が有利に働くようには思えない。
今年はアドバンテージのない斤量57キロ
競馬の世界では、1600から2000mの中距離戦の場合、斤量1kgにつき、1馬身(タイムでいうと0.2秒)有利と言われている。昨年のチャンピオンズカップでクリソベリルは2着のゴールドドリームにクビ差で勝っているが、走破時計は同じ1分48秒5。斤量はクリソベリル55キロ、ゴールドドリーム57キロなので2キロ有利だった。あくまでも目安に過ぎないが、"斤量1kgにつき1馬身"という単純計算を当てはめると、同斤量だった場合、ゴールドドリームが約2馬身前にいる計算になる。
今年のチャンピオンズカップではクリソベリルは古馬になったため、ゴールドドリームらと同斤量だ。アドバンテージのない条件でも堂々優勝しそうな実力はあるが、果たして今回、その力が発揮できるだろうか。
言っておくが、筆者はアスリートとしてのクリソベリルが大好きである。最近は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からなかなか叶わないが、厩舎に様子を見に行くと、クールで淡々とした表情を見せる。ホント、我が道を行く、という雰囲気で、独特の余裕というか、人懐こく構ってとせがんでくる馬とは違う魅力がある。強い馬が強い競馬をする、というレースも好きだ。
ただし、お金が絡むとなると、話は別だ。
調教パターンを変えているというモヤモヤポイント
調教の方針は厩舎によって異なるが、音無厩舎は調教ではわりと動かしていくほうである。今回、レース間隔が詰まっているにも拘らず、土曜日の前日追いまで終い強めでしっかりやっているところをみると、陣営の中で"足りない"という考えがあるからに他ならない。少なくとも、過去の競馬専門紙の資料をみる限り、クリソベリルがレースの前日に追い切りをかけられた記録はない。
前日追いの内容も確認した。坂路で終い追われ、タイムは58.5-39.4-25.2-12.5。これは1ハロン(200m)きざみのラップだが、ラスト2ハロンに重点を置いた調教というのがわかる。
坂路での動きについては、実際に調教を見た人の短評しか入手できず、その映像情報は入手できないため、具体的にどのような動きをしたのかは不明だ。
一般的に、競馬のセオリーとして、これまで勝ってきた馬がいつもと違うことをしているというのはかなり警戒が必要なサインであり、何とも言えない胸騒ぎがする。少なくとも、単勝1.5倍というオッズには腕組みをしてしまう。
しかし、終わってみれば「それでもよくこれだけ走ったな」という競馬をしてきても不思議ではない。さらに言うなら、クリソベリルの馬体を見る限り、1年前の同時期と比べるとほどよく脂肪がとれて筋肉のメリハリがついてきており、完成した大人のいい体になってきていると感じる。美しいアスリートの体で、さすが、の一言に尽きるのだ。
最終的に筆者としては、このモヤモヤが取り越し苦労に終わるのを期待しつつ、馬券は"応援"に止める作戦をとりたいと思う。
気になるのは引退が決まっているモズアスコット
では、どの馬から狙うのか? 昨年の2着(1枠2番ゴールドドリーム)3着(7枠13番インティ)4着(6枠11番チュウワウィザード)を中心に狙いたい。
気になるのはモズアスコット。成績にムラはあるが、芝とダートの両方でGIを勝つ実力馬だ。そして、このレースを最後に引退・種牡馬入りが決まっている。鞍上の横山武史騎手とはこの秋、盛岡の南部杯からコンビを組んでおり今回が3戦目だ。
ちなみに武史騎手は横山典弘騎手の三男で、今年のフローラSで初重賞を制覇した若手のホープ。父だけでなく、祖父、兄、叔父がJRAの騎手、奥平調教師も親族という競馬一家の一員である。
思えば、父の横山典弘騎手が初重賞を制覇したのは1988年、12月の中京競馬場でのことだった。ウインターステークスというGIIIの重賞でダート2200m、当時横山典騎手が所属していた厩舎の管理馬だったソダカザンでの優勝だった。改装前で今のコースとは違うが、豪快に差しを決めて勝ちきった。武史騎手どころか、兄の横山和生騎手も産まれる遥か昔の話だが、12月の中京というとあのレースが記憶をよぎる。
世代交代を感じさせる昨今の中央競馬、若武者がラストランのモズアスコットのキレのある走りを引出し、12月の中京で活躍する姿に期待する。
■チャンピオンズカップ出走馬の紹介・解説は12月5日掲載のこちらをお読みください
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■2020年フェブラリーS(GI) 優勝馬モズアスコット