ホテルニューオータニ「ベッラヴィスタ」料理長にトップシェフが就任した背景とは?
有名レストランを擁するホテルニューオータニ
「【桜スイーツ】50周年を迎えるホテルニューオータニの想い」では、桜の名所であるホテルニューオータニが桜フェアに取り組む想いと豪華な「お花見菓子重」についてご紹介しました。
伝統を守りつつも創造力に溢れるホテルニューオータニは18もの料飲施設を直営しており、「トゥールダルジャン」「ベッラヴィスタ」「Taikan En」「SATSUKI」「THE Sky」「トップ オブ ザ タワー」「トレーダーヴィックス」など、きら星の如く人気レストランを擁しています。
SATSUKIからベッラヴィスタへ、ベッラヴィスタからSATSUKIへ
このホテルニューオータニのレストランで大きな動きがありました。2014年3月1日に、西洋料理 副料理長であり、レストラン全体の料理責任者でもある太田高広氏がイタリア料理ベッラヴィスタの料理長に就任したのです。
太田氏は2004年からSATSUKIで料理長を務め、「東京洋食屋厨房(下町洋食フェア)」「パリの下町ビストロメニュー」などを開発し、パンケーキも一躍有名にしました。「本当に旨いサンドウィッチの作り方100」というレシピ本を上梓したり、テレビや雑誌によく登場したりもする、ホテルニューオータニの中でもタレント性があるトップシェフのうちの一人です。
その太田氏がSATSUKIからベッラヴィスタの料理長に就任したのとは反対に、「ベルヴュー」時代(2011年9月23日にベルヴューからベッラヴィスタへリニューアル)の2011年7月から料理長を務めていた高森康夫氏がSATSUKIの料理長に就任しました。
これにはどういう背景があったのでしょうか。
SATSUKIには本格的なイタリア料理のエッセンスを
広報マネージャー今井章江氏は、SATSUKI料理長に高森氏が就任した理由を「本格的なイタリア料理のエッセンスを取り入れた料理をご提供したかった」と述べ、「次回からの季節メニューを是非楽しみにしていただきたい」と自信を覗かます。
ベッラヴィスタには時代に合わせた進化を
ベッラヴィスタのリニューアルに際してはトゥールダルジャン 日本代表 総支配人 クリスチャン ボラー氏もプロデュースに参加し、本格的で王道のイタリア料理を提供してきました。
今井氏は「これまでもご好評いただいていた」と前置きした上で、「今後も本格的なイタリア料理であることに変わりはないが、より日本の食材にこだわったり、さらにプレゼンテーションを華麗にしたりと、今以上に進化させていく必要があった」とし、そのためには「学生時代に画家を目指したほど絵心があり、SATSUKIで様々なメニューを開発して柔軟性がある」と評した太田氏が料理長に適任であったと説明します。
多能な料理人が活躍する時代
太田氏は「トゥールダルジャンではフランス料理を、ベッラヴィスタの前身であるベルビューではイタリア料理を学んだ」と振り返り、そういった素養があった上で「SATSUKIには様々なお客さまが訪れる。全てのお客さまに満足いただけるように、日々メニューを考えてきた」と話します。
分子ガストロノミーが現れてから料理のカテゴライズはより一層難しくなってきており、食材や調理方法を超越し、その時その場所で最も適していると思われる料理を作ることが重要となってきました。そういった意味でも、フランス料理とイタリア料理の技術を有しており、プレゼンテーションに長け、新しいメニューを開発する創造力もある、太田氏のような料理人が活躍する時代になってきたと言えるでしょう。
アラカルトでは表現できなかったことをコースで
太田氏がシェフに就任してから、メニューも一新されました。広報の片桐彩氏が「アラカルトで一皿の魅力を追求してきたが、今度はコースで構成された皿の魅力を追求する」と言ったことを受けて、太田氏は「SATSUKIのアラカルトではできなかったことを表現したい」と意気込みを語ります。
ディナーのプリフィックスメニューでは通常、選択肢が3~4品というところを、前菜は6品、肉料理は5品、デザートは7品から選択できるようにしています。選択肢が多いことは客にとって嬉しいことですが、店にとっては手間やコストがかかることなので、ここまですることに太田氏のサービス精神と意欲が伝わってくるでしょう。
新しくなったディナーコースのメニューをいくつかをご紹介します。
海老原ファームよりこだわり“エビべジ"の極み野菜テリーヌ
海老原ファームは、食材にこだわる太田氏がこれはと探し出した栃木県下野市のブランド農場です。日替わりで10種程度の海老原ファームの野菜をテリーヌにしています。手前にバーニャカウダソースを添え、奥に花飾りのトマトをあしらっています。
フォアグラとブリオッシュのフレンチトースト
フォアグラとブリオッシュのフレンチトースト、もしくは、酒粕漬けフォアグラのソテーと大根のブレゼ 黒胡椒風味を選択します。
フォアグラにトーストを合わせるのではなく、フレンチトーストを合わせているところが新しいです。マーマレード状に煮詰めたエシャロットにオレンジピールだけではなく、ショウガも加えてオリジナリティを表現しています。
アル ソリッソ風ホウレン草とリコッタチーズのラビオリ マジョラム風味
ラビオリは通常1ミリ程度のところを0.5ミリと薄く作っているので、喉越しがよいことはもちろん、フィリングのリコッタチーズの味も引き立っています。ハート型のラビオリも入れられており、太田氏の遊び心が感じられる一品です。
瞬間スモークしたオマール海老のポアレ 繊細でエレガントな大吟醸ソース
オマール海老をスモークしたり、ブールブランソースではなくバターと煮詰めた大吟醸のソースを使ったりしています。高級食材のオマール海老は無難にオーソドックスに仕上げることが多いだけに、かなり意欲的な料理であると言えるでしょう。
宮崎県産ブランド和牛“尾崎牛"厳撰部位炭火焼き“タリアータ"スタイル
尾崎宗春氏の個人名を冠した珍しいブランド牛です。タリアータは薄切りにすることが多いですが、食感を残すこともあって直方体にしています。タリアータとアスパラガスはわざと斜めにずらして配されていて、絵心が感じられます。
進化形パンナコッタ
柔らかいパンナコッタが器型をしたパイ生地で提供されています。パンナコッタはグラスで美しく盛り付けられたり、プレートにシンプルに載せられたりすることが一般的なので、サーブされた時に驚かされるでしょう。
海老原ファームより癒しのフレッシュハーブティー
料金を追加すると、オーダーできます。ハーブティーには普通、乾燥ハーブを使いますが、こちらは名前通りにフレッシュハーブを使っているので、香りがとても鮮烈です。レモングラスやミントが特に強く主張しています。
飽くなき探求心
2014年4月から9月の間、ベッラヴィスタでカルチャーサロン「Salon de 40」が開催され、ホテルニューオータニが誇る3人のスペシャリストが講師を務めます。太田氏は「本格イタリアンに挑戦!エグゼクティブシェフによる料理教室」を受け持ち、初心者にも分かり易く料理のコツを伝授します。
太田氏は話が上手で物腰が柔らかいので、これ以上の適任者はいないくらいですが、「一番になりたい。他と同じではつまらない」と強い向上心を持ち合わせており、「日本料理も中国料理も勉強になる。よい食材にこだわったり、見せ方を変えたりしていきたい」と探究心は尽きません。
ベッラヴィスタは40階という高層階にあり、イタリア語で「美しい眺望」を意味しますが、新料理長である太田氏の目にはどのような展望が見えているのでしょうか。新しくなったベッラヴィスタに期待せずにはいられません。
情報
詳しくは公式サイトをご確認ください。