永瀬王座への挑戦権をつかむのはだれか――第71期王座戦本戦が佳境
永瀬拓矢王座(30)への挑戦者を決める第71期王座戦(日本経済新聞社主催)は6月28日、本戦準決勝の藤井聡太竜王・名人(20)=王位・叡王・棋王・王将・棋聖-羽生善治九段(52)戦と、準々決勝の渡辺明九段(39)-石井健太郎六段(31)戦が東京都渋谷区「将棋会館」で行われる。
渡辺九段-石井六段戦の勝者は準決勝で豊島将之九段(33)と対戦する。
データを基に挑戦権の行方を予想してみた。
藤井竜王・名人優位も波乱の可能性あり
それぞれの対戦成績と最近10局の勝敗は以下のとおり。
<藤井竜王・名人の対戦成績と最近10局>
対羽生九段 11勝3敗
対渡辺九段 20勝4敗
対豊島九段 21勝11敗
対石井六段 0勝0敗
最近10局 8勝2敗
<羽生九段の対戦成績と最近10局>
対藤井竜王・名人 3勝11敗
対渡辺九段 42勝39敗
対豊島九段 21勝26敗
対石井六段 2勝0敗
最近10局 7勝3敗
<渡辺九段の対戦成績と最近10局>
対藤井竜王・名人 4勝20敗
対羽生九段 39勝42敗
対豊島九段 22勝16敗
対石井六段 0勝3敗
最近10局 4勝6敗
<豊島九段の対戦成績と最近10局>
対藤井竜王・名人 11勝21敗
対羽生九段 26勝21敗
対渡辺九段 16勝22敗
対石井六段 1勝0敗
最近10局 8勝2敗
<石井六段の対戦成績と最近10局>
対藤井竜王・名人 0勝0敗
対羽生九段 0勝2敗
対渡辺九段 3勝0敗
対豊島九段 0勝1敗
最近10局 5勝5敗
過去の対戦成績は藤井竜王・名人が大きく勝ち越しているが、直近10局の成績では豊島九段、羽生九段の好調が目を引く。
藤井竜王・名人にとっての不安材料は王座戦準々決勝で村田顕弘六段に絶体絶命の局面から大逆転勝ちしたあと中一日で淡路島に移動し、棋聖戦五番勝負第2局で佐々木大地七段に逆転負けを喫するなど、一時期の「藤井曲線」と呼ばれる安定して勝ちに近づく内容の将棋が見られなくなっていることだ。原因は過密スケジュールによる「勤続疲労」かもしれない。
よって挑戦権争いの本命藤井竜王・名人、と、それに続く豊島九段、羽生九段の差はわずかと見る。
居飛車中心だが振り飛車出現の可能性も
今回のベスト4進出者は全員居飛車党で、最新研究のぶつかり合いが予想されるが、豊島九段が直近で三間飛車を用いたことに注目したい。
これはおそらく叡王戦五番勝負の挑戦者として藤井竜王・名人に振り飛車で接戦を演じた菅井竜也八段の指し回しに影響を受けたものと思われる。また、石井六段も時折振り飛車を用いることがあるため、大一番で居飛車対振り飛車の対抗形が出現する可能性もありそうだ。