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沖縄の梅雨期間は「すばる(プレアデス星団)」が空から消える期間とほぼ同じ

饒村曜気象予報士
すばる(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

枕草子での一番の星

 平安時代、清少納言が著した「枕草子」に、次の1節があります。

 星はすばる。ひこぼし。ふゆづつ。よばひ星、すこしをかし。

 清少納言が、星で一番といっている「すばる」は、おうし座にある青白い(高温の)星の集団です(タイトル写真参照)。

 そして、「ひこぼし」は「七夕で有名なわし座のアルタイル」、「ふゆづつ」は宵の明星(金星)、「よばひ星」は流れ星で、少し趣があると書いています。

 中国や日本で古くから親しまれて、清少納言が一番の星としている「すばる」ですが、緯度が低い沖縄県石垣島地方では、地平線の下に隠れて見えなくなる時期があります。

 5月10日頃の宵の口に西の地平線に沈んだ「すばる」は、翌日からは空から消えます。

 「すばる」が次に夜空に現れるのは、6月20日頃の暁の東の空です。

 一方、沖縄地方の平年の梅雨入りは5月10日、平年の梅雨明けは6月20日です。

 つまり、石垣島で「すばる」が見えなくなる時期と、梅雨期間がほぼ重なっています。

 このため、石垣島では梅雨期のことを、よどむ、休むの意味を持つ「ユドウン」という言葉で呼んでいました。

 梅雨期は、「すばる」が休んでいる期間の現象ということと思います。

 昔の人々は、ほとんど全てが日の出とともに仕事をし、日の入りとともに仕事をやめていましたので、現在の人々とは比べられないほど宵の口と暁に見ることができる星に関心をもっていました。

 なお、石垣島天文台にある、直径105センチの光学・赤外線反射望遠鏡には「むりかぶし」という名前がついています。

 群星(小さな星の群れ)という意味で、八重山諸島での昔の「すばる」の呼び名です。

 石垣島では観測できる星の数が多く、全ての一等星を見ることができ、しかも比較的大気が安定していることから星がクリアに見えるということで、星光観測のメッカとなっている所以でもあります。

沖縄の梅雨入り

 令和3年(2021年)の沖縄地方の梅雨入りは、平年より11日早い5月5日で、「すばる」がまだ空にありました。

 そして、沖縄付近に停滞していた前線によって曇雨天が続き、ときどき激しい雨が降りました。

図1 予想天気図(左は5月10日9時の予想、右は5月11日9時の予想)
図1 予想天気図(左は5月10日9時の予想、右は5月11日9時の予想)

 しかし、沖縄付近の梅雨前線は、5月10日には弱まり消滅します。

 そして、5月11日には中国大陸に新たな停滞前線が発生します。

 この停滞前線は西日本へ伸びてきますが、しばらく沖縄付近まで南下してこない見込みです。

 ウェザーマップが発表した16日先までの天気予報では、沖縄本島の那覇も、石垣島も、5月11日までは、傘マーク(雨)や黒雲マーク(雨が降る可能性がある曇り)の予報です。

 しかし、5月12日以降は、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が続きます(図2)。

図2 那覇の16日先までの天気予報(上)と石垣島の16日先までの天気予報(下)
図2 那覇の16日先までの天気予報(上)と石垣島の16日先までの天気予報(下)

 しかも、石垣島では那覇よりも晴れる可能性が高い予報です。

 石垣島では「すばる」が星空から消えてから、すぐに梅雨空も消えています。

 沖縄地方は、2週間以上の長い「梅雨の中休み」に入る予報です。

 梅雨前線が北に移置すると、九州で大雨災害が心配となりますが、同時に、沖縄では空梅雨となって夏場の水不足が心配となります。

 災害がおきるほどの雨は困りますが、「すばる」が空から消えている時(梅雨期間)の適度な量の雨は、沖縄の貴重な水資源になっています。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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