三遠ネオフェニックス・湧川颯斗:複数のポジションでマッチアップできるディフェンダーへと成長中
福岡大附属大濠高卒業後プロになった湧川颯斗は、19歳で滋賀レイクスのB1昇格に貢献。今季から在籍する三遠ネオフェニックスでは、頂点を狙う強豪チームの中でも出場機会を得るごとに成長の階段を着実に登っている。
湧川が大きな自信を得たという意味で象徴的だったと言える試合は、12月18日に国立代々木競技場第一体育館で行われたアルバルク東京戦だ。吉井裕鷹の欠場によってスターターに起用されると、滋賀で一緒にプレーしたことがある東京の司令塔、テーブス海を相手に厳しいディフェンスで対応。テーブスに10点、12アシストのダブルダブルを達成されたものの、三遠が遂行力の高い東京のオフェンスを後半27点に限定させるのに貢献した湧川は、12点、8リバウンド、2アシスト、5スティールを記録した。
テーブスだけでなく、富樫勇樹ら得点力のある日本人選手や外国籍のスイングマンに対し、湧川は194cmの身長と長い腕、高い身体能力を着実にディフェンスで活かす術を身につけつつある。1月4日に古巣の滋賀と初めて対戦した際、三遠は1Qで13点のリードを奪われる苦戦に直面する。「ディフェンスをやって、まずそこで流れを変えようっていうマインドで臨んだ結果、最初(のポゼッション)だったかな、ターンオーバーを誘発できたので、でもそれが継続して1ピリできなかったのが良くなかったかなと思います」と語ったように、湧川は大浦颯太、ヤンテ・メイテン、兪龍海とのベンチユニットがきっかけを作り、2Qで48点を奪って20点をリードする形でハーフタイムを迎え、最終的に109対88で三遠が勝利するのに貢献した。
3Qにシュート力を武器に滋賀のスコアラーとして飛躍中の岡田泰希とマッチアップしたが、湧川はアグレッシブなディフェンスが裏目のファウルを連発してしまう。三遠が早い段階でチームファウルがペナルティの状態になっていたこともあり、状況判断の部分で学びの多い試合になった。三遠の大野篤史コーチは、湧川のディフェンスについてこう語る。
「とにかくプレッシャーのかけ方、もちろん自分たちが有する権利を持っていることを理解しなきゃいけない。一人のプレーヤーは1試合を通じて4回ファウルする権利を持っている。チームとしてはクォーターで4回ファウルする権利を持っている。その権利をしっかり行使する。そういうことを覚えなきゃいけない。
ただ今日はチームの権利がない状態で、同じようにディフェンスをしてしまった。それはもう経験だと思うので、そういう経験をしていくこと、ただそこでファウルをせずにプレッシャーかけないというよりも、プレッシャーをかけながらどうやってファウルをしないでプレーしていくかっていうところを、ゲームを通して覚えていけばいい。今日はそこがいい反省点だったと思います」
湧川自身も岡田への対応を反省しながらも、三遠に来てからディフェンス面での成長に手応えを感じている。
「ディフェンスの手応えは、本当に最初に比べたらだいぶすごい成長したなっていうふうに自分の中でもすごい感じています。でもそれを継続することと、相手に合わせてどういうディフェンスをするのかっていうことだったり、本当に簡単なことなんですけど、チームファウルが溜まっているときに変にハードに行っちゃってファウルになったりということが今日もあったので、そういったところは反省点です」
高校時代からボールへの反応が早い選手だった湧川は、2021年にウインターカップの頂点に立った際にゾーンプレスで相手から何度もターンオーバーを誘発させる要因になっていた。体重84kgで少し細めの体格だが、フィジカルは着実に強化されている。滋賀戦で202cmの長谷川比源とマッチアップするなど、フィジカルで著しく不利にならなければ、湧川は素速い小さなガードでも、200cmを超えるスモールフォワード相手でも対応できるようになっている。
群馬クレインサンダーズとの天皇杯クォーターファイナル、湧川はショットが決まらなかったこともあり10分3秒の出場時間に終わった。しかし、出場時間が長くなったスターターの疲労回復の時間を作るため、1点を追う4Q4分50秒からプレーする機会を得る。
土壇場で勝負強さを発揮する藤井祐眞に対して4分11秒にファウルを吹かれたが、4分1秒に難しいショットを打たせてのミスをさせるなど、2分59秒までの1分51秒間、ディフェンスでチームに貢献した。最終的に2点差で競り勝ったビッグゲームの終盤で起用されたことは、大野コーチから信頼度が増している証と言えよう。
湧川が高校からプロになることを決断した最大の理由は、代表のポイントガードになるという明確な目標を実現するため。三遠ではスイングマンとしてプレーすることがほとんどだが、相手の得点源やオフェンスでキーとなる選手にマッチアップできるディフェンダーで存在感を増しているのは間違いない。昨年12月に福岡大附属大濠高のウインターカップ優勝に大きく貢献した弟、裕斗が武器としている3Pショットをレベルアップできれば、今年中の代表デビューも十分にありうるだろう。