Yahoo!ニュース

加熱式タバコを「妊娠中」に吸うと「子ども」にどんな悪影響が出るのか

石田雅彦科学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

 いわゆる加熱式タバコ(新型タバコ)の喫煙者が増えているようだ。こうした新型タバコの健康への悪影響は、まだ研究も少なく長期間の観察もできていないが、最近、日本の研究グループが妊娠中の加熱式タバコ喫煙によって生まれた子どものアレルギー疾患が増えるとの調査結果を発表した。

若い女性で多い加熱式タバコ喫煙者

 日本で初めて発売された、いわゆる加熱式タバコはJTのプルームで2013年12月のことだ。その後、2014年にフィリップ・モリス・ジャパンがアイコスを発売し、ブリティッシュ・アメリカン・タバコが参戦するなどし、加熱式タバコは徐々に市場を増やしてきた。

 日本の喫煙率は、中年男性で高く(約33%、総数で約27%)、女性で低い(総数で約7.5%、ともに2019年の国民健康・栄養調査)。だが、女性の喫煙率はこの10年、ほぼ横ばいで推移し、大きく下がってはいない。

 女性の喫煙では、妊娠中にタバコを吸うとタバコに含まれるニコチン、一酸化炭素、活性酸素などが胎児の発育などに悪影響をおよぼす。その結果、胎児や胎盤への酸素供給が減り、低酸素状態になったり、低出生体重児や早産のリスクが大きくなったりする(※1)。

 妊娠中の妊婦の喫煙率は約3%と、一定数あることがわかっている。また、育児中の母親の喫煙率は3・4ヵ月児で約4%、1歳6ヵ月児で約7%、3歳児で約9%というように子どもが成長するごとに喫煙率が上がっている(※2)。

 さらに、若い女性では加熱式タバコの喫煙者が多いようだ。2019年の調査によれば、女性の加熱式タバコの喫煙者の割合は総数で約25%だが、20歳から29歳の女性で約53%、30歳から39歳の女性で約50%が加熱式タバコを吸い、加熱式タバコだけを吸っている20歳から29歳の女性は約35%、30歳から39歳の女性は約50%となっている。

日本では若い女性で加熱式タバコの喫煙者が多い。左は「現在習慣的に喫煙している者が使用しているタバコ製品の種類」(女性)、右は「現在習慣的に喫煙している者が使用しているタバコ製品の組み合わせの状況」(女性)、2019年の国民健康・栄養調査より
日本では若い女性で加熱式タバコの喫煙者が多い。左は「現在習慣的に喫煙している者が使用しているタバコ製品の種類」(女性)、右は「現在習慣的に喫煙している者が使用しているタバコ製品の組み合わせの状況」(女性)、2019年の国民健康・栄養調査より

妊娠中に加熱式タバコを吸うとどうなるか

 加熱式タバコの妊娠中の喫煙と胎児や新生児への悪影響については、これまでに日本の研究グループによる調査報告がいくつか出されている。加熱式タバコを吸うことによる母親と新生児への悪影響について調べた論文によれば、出産後の女性で高血圧障害が約2.5倍(オッズ比2.48)、低出生体重の子どもが生まれるリスクは約2.7倍(オッズ比2.36)だった(※3)。

 また、妊娠中に加熱式タバコを吸う妊婦から生まれた子どもがアレルギー疾患になるリスクが高いという調査報告もある(※4)。出産後の女性と生まれた3歳未満の子ども5688組を対象にしたインターネットのアンケート調査によるもので、2.4%の女性が妊娠中に加熱式タバコを吸い、子どもの7.8%で喘息、鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のアレルギー疾患を発症していたという。

 この調査で注目したいのは、特に妊娠初期に加熱式タバコを吸った妊婦の子どもでアレルギー疾患が多く発症するということだ。一方、妊娠する3ヵ月以上前に禁煙した女性では約58%、子どものアレルギー疾患の発症が減り、妊娠中は吸わずに出産後に加熱式タバコを吸った女性の子どももリスクが低くなった。

 同研究グループによれば、妊娠中に加熱式タバコをより多く吸えば吸うほど、生まれた子どものアレルギー疾患のリスクが大きくなるという。

 タバコ会社は、加熱式タバコなどの新型タバコの有害性の低さを喧伝しているが、有害物質が全く含まれていないわけではない。この記事で紹介したように、喫煙者には健康上、何らかの悪影響が出ている危険性があり、喫煙者の女性が妊娠を機に加熱式タバコに切り替えても、紙巻きタバコと同様のリスクがある。

 少なくとも妊娠中は、どんなタバコ製品も吸わないほうがいいし、生まれた子どもへの受動喫煙の害は加熱式タバコにもある。妊娠を機に完全に禁煙したほうがいいだろう。

※1-1:Judith Lumley, et al., "Interventions for promoting smoking cessation during pregnancy" Cochrane Library, doi.org/10.1002/14651858.CD001055.pub3, 8, July, 2009

※1-2:Joshua P. Vogel, et al., "The global epidemiology of preterm birth" Best Practice & Research Clinical Obstetrics & Gynaecology, Vol.52, 3-12, October, 2018

※2:厚生労働省、「健やか親子21(第2次)に関する調査報告書」、2018

※3:Masayoshi Zaitsu, et al., "Heated tobacco product use and hypertensive disorders of pregnancy and low birth weight: analysis of a cross-sectional, web-based survey in Japan" BMJ Open, Vol.11, No.9, 21, September, 2021

※4:Masayoshi, Zaitsu, et al., "Maternal heated tobacco product use during pregnancy and allergy in offspring" Allergy, doi.org/10.1111/all.15536, 29, September, 2022

科学ジャーナリスト

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

石田雅彦の最近の記事