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なぜシティはCLの優勝候補なのか?ハーランドとデ・ブライネの躍動と必要な穴埋め。

森田泰史スポーツライター
シティの中心選手のハーランドとデ・ブライネ(写真:ロイター/アフロ)

スカイブルーが、ピッチ上で躍動する。

今季のチャンピオンズリーグで、優勝候補の筆頭はマンチェスター・シティだろう。そのシティはチャンピオンズリーグ・グループステージ開幕節でインテルと激突する。

■ハーランドの好調ぶり

シティは今季、アーリング・ハーランドが開幕から好調だ。プレミアリーグの4試合で9得点。この夏、EUROに不参加だった男は、イングランドに戻ってきて爆発している。

だがハーランドに慢心はない。「僕はもっとプレーに関与したいと思っている。もっと多くのアシストを決めて、より良い選手になりたい」とはハーランドの弁だ。

「ベストプレーヤーというのは、シンプルなプレーで、際立つことができる。右足でトラップして、左足でパスをする、といったプレーだ。そういうのが重要なんだ。ペップ(・グアルディオラ監督)には、いつも、そういうことを言われている」

ゴールを量産するハーランド
ゴールを量産するハーランド写真:ロイター/アフロ

昨季、ハーランドはプレミアリーグ31試合で27得点をマークした。無論、素晴らしい数字だが、好不調の波があったのも否めない。

その理由のひとつに、ケヴィン・デ・ブライネとの関係がある。実質的にシティの攻撃をコントロールしているデ・ブライネの在・不在が、ハーランドのパフォーマンスに影響するのだ。

デ・ブライネは昨季、プレミアリーグ18試合に出場して4得点10アシストを記録。負傷で長期離脱を強いられ、プレミアリーグの試合出場数は50%に満たなかった。

■代役問題 ギュンドアンの復帰

シティは昨年の夏、移籍金6200万ユーロ(約99億円)でマテウス・ヌネスを、移籍金2910万ユーロ(約46億円)でマテオ・コバチッチを獲得していた。大金を費やして中盤補強を行い、シーズンに臨んだが、それでもデ・ブライネの抜けた穴は埋められなかった。

しかし、この夏には、イルカイ・ギュンドアンの復帰が決定している。バルセロナとの契約をあと2年残していたギュンドアンだが、クラブの厳しい財政状況で、移籍を選択せざるを得なかった。棚から牡丹餅で、降りかかったチャンスを、シティは逃さなかった。

復帰が決まったギュンドアン
復帰が決まったギュンドアン写真:ロイター/アフロ

また、この夏の補強で、特筆すべきは移籍金2500万ユーロ(約39億円)でのサビーニョの獲得だ。

シティ・グループの一員であるトロワに所属していたサビーニョだが、昨季は同じくシティ・グループのジローナにレンタル移籍していた。2023−24シーズン、公式戦41試合に出場して11得点10アシスト。スペインで、ブレイクの時を迎えた。

サビーニョに期待されるのは、昨年夏に退団したリャド・マフレズのような役割だ。サイドに配置され、持ち前のスピード、テクニック、ドリブルで、相手守備陣を切り裂く。そのようなタスクが、サビーニョには課される。

■マフレズ、サビーニョ、フォーデンetc

昨季がスタートした段階で、グアルディオラ監督はフィル・フォーデンをマフレズの代わりに使おうと考えていた。だがフォーデンは、ハーフスペースでのプレーを覚えて、異なる形で進化を遂げていった。先述のデ・ブライネの負傷もあり、フォーデンには内側での動きが求められるようになっていった。

他方、サビーニョは、そもそも、マフレズとプレースタイルが似ている。グアルディオラ監督としては『コピー&ペースト』をする要領で、サビーニョをピッチに置けばよい。

違いを挙げるなら、マフレズがクオリティでかわしていたのに対して、サビーニョはスピードで抜き去る。両翼にジェレミー・ドクとサビーニョがいて、いずれもスピードとドリブルでスペース侵入できるのであれば、それはショートカウンターが跋扈する現代フットボールのトレンドにも合致している。

得点を喜ぶシティの選手たち
得点を喜ぶシティの選手たち写真:ロイター/アフロ

「私は現在のメンバーに満足している。アルバレスの移籍は予期していなかったが、彼の代理人が他クラブと話をしていたのはわかっていた。ケガ人が多く出たら、我々は問題を抱えるかも知れない。けれど、我々の下には、複数ポジションでプレーできるポリバレントな選手たちが揃っている」

「間違えている可能性はあるが、少ないメンバーでシーズンを戦っていきたいという考えが私にはある。何人かの選手を招集外にするというのは、リスクがある。全選手がシーズンを通じて参加していければ、全体のパフォーマンスは上がる」

これはグアルディオラ監督の言葉だ。

シティは今夏、フリアン・アルバレスを移籍金固定額7500万ユーロ(約119億円)でアトレティコ・マドリーに売却した。それはビジネスとしては丸だったが、戦力的には痛手になるだろう。

しかし、シティがプレミアリーグとチャンピオンズリーグで優勝候補なのは揺るがない。現スカッドに満足感を示しているグアルディオラ監督が、次はどのような戦術的思考を繰り出すのかーー。興味はまったく尽きることがない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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