連勝が止まろうと、首位の座を譲ろうと「また奮起できる!」と平田監督《阪神ファーム》
きのう15日に阪神甲子園球場で行われたウエスタン公式戦は、阪神タイガースの19連勝がかかった試合であり、また首位の阪神をゲーム差なしで追うソフトバンクとの、いわゆる“首位攻防戦”でもありました。
ファームの場合、記録や順位は目的でなく、あとからついてくるものだと言いますが、9月の中盤を迎えて、そういう戦いができることは何よりも励みになるでしょう。うまくなるために練習を重ね、1軍を目指して努力を続けた結果が優勝や個人タイトルなら、それは選手たちにとって最高のご褒美だと思います。
また、連勝記録はチーム力の証。連なる白星とともに強くなって、個々のレベルも上がっていくような印象を受けました。そんな様子を間近で、グラウンドやスタンドで見ることができない状況が、とても残念。あ、先週末からの試合は甲子園なので観戦可能ですね。
15日の試合は初回にいきなり3ランで先制され、いつものように追いつくことも逆転することもできず、5対1で敗れた阪神。7月28日以来の黒星となりました。先取点を許すのは8月25日のオリックス戦以来です。しかも5失点というのは連勝中の最多で、8月7日の広島戦と、きのうの2試合しかありません。
連勝は18でストップしたけど、これまでの球団記録だった10連勝も、ウエスタン・リーグ記録だった13連勝も、ファーム記録だった15連勝も一気に塗り替えたわけです。しかも負けなかった1か月半の19試合で身についた経験と力は貴重な財産。いつか1軍で生かしてくれると信じています。
そして、この敗戦で首位の座をソフトバンクに奪い返され、ゲーム差1.0の2位に戻りました。対戦成績も12勝13敗2分けで1つ負け越し。とはいえ、きょう16日に阪神が勝てばゲーム差はなくなって、また阪神が首位に立ちます。これが最後の直接対決なので、勝っておきたいですね。
7月28日以来の黒星
では15日の試合を振り返りましょう。当初は中田賢一投手の先発予定でしたが、14日の雨天中止を受けて二保旭投手がスライド登板しています。ソフトバンクは2年目の大関友久投手で、こちらの打線は4回までノーヒット。それどころか四球もエラーもなく完璧に抑えられました。
5回に陽川尚将選手が初ヒットの二塁打を放ち、6回にやはり陽川選手のタイムリーが出て、9回には満塁のチャンスも作った打線ですが、結局1点しか取れていません。なんせソフトバンクの4投手から計13個の三振を喫していますからね。要所、要所で…。これでは逆転も難しいでしょう。
なお2回の守備で、サードを守っていた北條史也選手にアクシデントが発生しています。ファウルボールを追って金網に伸ばしたグラブが金網に当たり、そこで左肩を痛めたかもしれません。左腕を動かさないよう抱えてベンチへ戻った姿は見えました。そのまま交代となり、詳しいことはまだ不明。大事に至らなければいいんですけど、かなり心配ですね。
《ウエスタン公式戦》9月15日
阪神-ソフトバンク 27回戦 (甲子園)
ソフ 300 100 100 = 5
阪神 000 001 000 = 1
◆バッテリー
【ソ】○大関(5勝1敗3S)(5回1/3)-尾形(1回2/3)-嘉弥真(1回)-椎野(1回) / 渡邉陸-九鬼(8回~)
【神】●二保(4勝2敗)-佐藤蓮-岩田将-鈴木-アルカンタラ-望月 / 長坂
◆本塁打 ソ:アルバレス2号3ラン(二保)、水谷4号ソロ(岩田将)
◆二塁打 ソ:野村 神:陽川
◆盗塁 神:山本(2)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]中:江越 (5-1-0 / 4-0 / 0 / 0) .243
2]三:北條 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .300
〃一:荒木 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .310
3]一三:板山 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .262
4]右:佐藤輝 (4-0-0 / 3-0 / 0 / 0) .063
5]指:陽川 (4-3-1 / 1-0 / 0 / 0) .263
6]左:高山 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .214
7]遊:山本 (4-1-0 / 1-0 / 1 / 0) .308
8]捕:長坂 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .216
〃打:片山 (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .191
9]二:遠藤 (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .217
〃打:榮枝 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .267
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速
二保 4回 80球 (6-4-2/4-4/2.92) 148
佐藤蓮 2回 31球 (0-2-2/0-0/6.06) 149
岩田将 0.2回 8球 (1-1-0/1-1/3.38) 134
鈴木 0.1回 14球 (1-1-1/0-0/1.80) 143
アルカ 1回 16球 (0-1-0/0-0/0.00) 152
望月 1回 9球 (0-0-0/0-0/9.64) 152
※“球”は四球と死球の合計
《試合経過》※敬称略
二保は1回、先頭の明石に四球を与え、続く真砂の左前打などで1死一、三塁として4番・アルバレスに3ランを浴びました。2回は先頭・高田の左前打があったものの後続を断って、3回は連続三振で2死を取ってからアルバレスの中前打、野村の右越え二塁打を許しながらも0点に抑えています。
ところが4回、増田に四球を与え自身の暴投もあって2死三塁とし、1番・明石の中前タイムリーで4点目を失いました。5回から登板した佐藤蓮は2イニング続けて先頭に四球を与えますが、5回は併殺で切り抜け、6回は犠打と暴投により三塁まで進めるも連続三振で無失点!
7回は岩田将が山本の好守備や三振で簡単に2死を取ったと思ったら、3番・柳町の代打・水谷が初球を左中間へ!ぎりぎりでフェンスを越えるホームランでした。ここで鈴木に交代。アルバレスの中前打と野村への四球で2死一、二塁とするも中谷は三振で追加点は与えていません。
8回のアルカンタラは2死後に、投ゴロをつかみ損ねるエラーで走者を出しますが無失点。9回の望月は、この日の投手陣で唯一となる三者凡退で締めました。
打線はソフトバンクの先発・大関に4回までパーフェクトピッチングを許し、5回に先頭の陽川が初ヒットとなる二塁打を放ちます。左中間フェンスの最上部を直撃する当たりは、そのあとに出たソフトバンク・水谷の打球と同じような感じだったので、非常に惜しかったですね!次の高山が中前打で続くも後続を断たれて得点なし。
しかし6回、先頭の江越が中前打、1死後に板山が四球を選び一、二塁となったところで大関から尾形に交代。佐藤輝の三振で2死となったあと、陽川が左前タイムリー!なおも一、二塁のチャンスで高山は三振に倒れますが、何とか1点を返した阪神打線です。
7回は先頭の山本が中前打し、1死後に二盗成功。このチャンスも連続三振で生かせず、2者残塁。8回は嘉弥真の前に三者凡退で、ここまで来たら連勝はストップかなと思ってしまいますよね。さすがに。
そして9回、ソフトバンクは椎野が登板し、先頭の陽川が、この日3本目となる右前打を放ちます。あとが続かず2死一、二塁となりましたが、代打・片山が四球、代打・榮枝が右前打で満塁!しかし江越は三振で試合終了。いつものように中盤からチャンスを作ったけど…残念な結果です。
「たまたま負けただけ。気にすることはない」
では平田監督の談話をご紹介します。少し入れ替えたり、削ったりした部分がある点はご了承ください。まず連勝がストップしたことに関して「最後まで粘ってあと一押しというところまで行って、ゲーム的にもみんな集中力を持ってやってくれたので、切り替えてやるだけ」という言葉でした。
ソフトバンクに首位を譲った点も「結果的にはそうだけど、これで選手たちもまた奮起して、あす(16日)のゲームもまた楽しみ。そういった意味では全然」と平田監督。たまたま負けただけで、何も気にすることはないと話しています。
先発の二保投手については「間も空いたしね。立ち上がりは4番のバッター(3ランを許したアルバレス選手)もちょっとわからない、手探りなところもあったので。一発食らったあとはよく粘っていたけどね。しょうがない」とのことです。
打線はチャンスを生かしきれない部分もありましたが、陽川選手は3安打。相手投手によって狙いが違ったのでしょうか?「たまたま。ただコースに逆らわず、ストレートに力負けしないバッティングをしていたので、その辺は調子が上がってくればいいかなという感じだよね。陽川はちょっと当たってきたかな」
佐藤輝明選手の3三振は「別にいいんじゃないの。三振することをどう思うとかじゃないし、そのために今ファームでやってるんだから。それはもう、また練習するなり、10日間どっちにしても上がれないんだから。今、足の上げ方とかバットの位置とか、いろんなところをやってる。そこは全然、気にもしていない」と平田監督。意に介さず、というところでしょう。
1軍とは意味合いが違う首位攻防戦
首位攻防戦の真っただ中にいる1軍で、14日の9回に飛び出したマルテ選手の同点3ランを振り返り「やっぱりああいうところで1位にいるチームだなと思うよ。四球、四球でボカーンだろ?それまで拙攻が続いていたと言いながらも、あそこでホームランが出るというのは4番として見事だな。やっぱり見ていて粘りというのは感じるもんね」と絶賛です。
ただし「ファームは関係ない。ファームは自分たちが1軍の選手を見て、ホームランを打ったからって喜ぶヤツなんかおらんよ」と付け加えています。首位攻防戦という意味では1軍と共通するかと問われても「一緒にしちゃいかんよ。レベルが違うんだから。まあ緊張感があるのはいい。それはいいねん。ただ“首位攻防戦”の意味合いが違うからね」と一蹴。
さらに平田監督は続けます。「みんな気を抜くことなく、しっかり守って、ただ結果が負けたというだけ。そこは切り替え。あす杉山をどうやって打つか。(佐藤)輝がバーンって打つかもしれん」と。先発予定は藤浪晋太郎投手とソフトバンクの杉山一樹投手。「晋太郎がファームで杉山と投げ合う。非常に楽しみだね」と繰り返しました。
最後は途中交代した北條選手の件です。「うーん、それが心配やな。トレーナーがチェックしていると思うんだけど。故障か、どうかなというとこやね。詳しくはまだ聞いてないのよ。脱臼かなんか。前もやったことがあるらしいわ。ガッと引っかかったわけ。どうかわからん」と気がかりな様子。
ベンチに帰った時は、そんなきつい感じじゃなかったとか。でも平田監督は「(同じような負傷を)前にもやっていて、北條は我慢強い、痛みに強い子だから、やっぱり交代しなきゃいけないということは痛くないわけがない」と言います。それだけに、より心配ではありますね。
最後にヒーロースピーチが聞きたい!
おしまいに、平田監督からのお叱りを覚悟しつつ…また書いてしまいます。きょう16日の試合結果による優勝へのマジックナンバーについて。まず阪神が勝てば阪神にマジック9、ソフトバンクが勝てばソフトバンクに8、引き分ければソフトバンクに9が点灯する計算となりました。
ただ、前の記事でも書いたように残り試合が9となった時点でのマジックとか9なんて全勝した場合の計算ですから、まあ“あってないような”数字です。とはいえ、やっぱり勝って対戦成績を五分に戻して終わりたい相手。
そんなソフトバンクとは今季最終戦で、しかも甲子園での試合もこれが今季ラストです。もちろん鳴尾浜でも24日からオリックス3連戦がありますけど、無観客なので…。お客さんがいらっしゃる甲子園で最後に整列して、願わくは誰かのヒーロースピーチを聞いて締めくくりたいですよね。藤浪投手と杉山投手の投げ合いも含めて、楽しみにしています。
《掲載写真は筆者撮影》