専門学校職員が刺され19歳女子学生逮捕「好意を抱いていた」:愛と憎しみと女性犯罪と若者支援
■大阪の専門学校で職員刺される、学生逮捕
49歳の女性職員が果物ナイフで4か所刺されました。女子学生は学校職員が取り押さえ、警察に逮捕されたと報道されています。容体についてはまだ報道がありませんが、ご回復をお祈りしております。
■女性の殺人、殺人未遂事件
一般に、女性が乱暴な事件を起こすことは多くありません。統計では、女性殺人者の比率は全体の20%程度です。だから、女性が殺人、殺人未遂の容疑者とされると事件は大きく報道されます。容疑者が学生、現場が学校ならなおさらでしょう。
供述があるとはいえ、まだ容疑段階の事件です。拙速な判断は控えたいと思いますが、報道されている「好意を抱いていた」という供述内容が、さらに世間の関心を集めることでしょう。容疑が事実であれば加害者は裁かれるべきですが、女性がからむ事件は興味本位な過剰報道にならないように気をつけなければなりません。
女性による殺人は少ないのですが、女性殺人の特徴は犠牲者が身近な人だということです。生まれたばかりの我が子を殺害することもありますし、愛する家族を無理心中で殺害することもあります。このような、金目当てでもなく、怒りや恨みでもなく、愛するが故の「愛他的殺人」の場合も少なくありません。
■愛と憎しみ:愛するからこそ憎しみが増す事件も
愛と憎しみは正反対の言葉のようですが、そうではないでしょう。恋人や夫、妻に対して、他人には抱かないような非常に強い憎しみを持つこともあるでしょう。
愛しているからこそ、かつて愛していたからこそ、相手のことが許せないと感じることもあります。
またストーカー殺人などは、この愛が得られないなら、いっそ殺してしまおうと思い詰めた末の事件の場合もあります。この人への愛が全てだと思い込みすぎると、愛が得られないなら、相手の人生も自分の人生も終わりにしようと思ってしまいます。
古い話で恐縮ですが、国民的歌手だった美空ひばりが若かったころ、19歳の女性に塩酸をかけられる事件もありました。この犯人の女性は、美空ひばりのファンだったのですが、強い嫉妬が動機とされています。
愛はとても強い感情だからこそ、方向を間違えると、破壊的行動も生まれるのです。
■「好意を抱いていた」?:思春期青年期女子の思い
同性愛は、現代では社会的に認められる性志向です。とはいえ、少数派ですから、悩みは多いでしょう。
ただ思春期青年期の女子の場合は、同性愛ではなくても、すてきな同性の先輩にプレゼントを贈ることなどがあります。年の離れた教員や芸能界のアイドルなど、現実的ではない相手に真剣な恋愛感情を持つこともあります。
発達心理学的に見れば、これは恋愛の練習をしているとも言えます。同性愛かどうかは、すぐにはわからないこともあるでしょう。
■犯罪防止と若者支援:より良いコミュニケーションを
誰であれ人を傷つけることは許されません。責任に応じた制裁を受けなければなりません。ただ、学校にとっては、生徒学生は、守り保護すべき対象です。
もちろん、教職員も守らなければなならないことは言うまでもありませんし、犯罪発生時にまず大切なのは被害者保護です。
それでも、一般に現場で逮捕されるような逃亡を考えていない犯罪は、利得のための犯罪ではなく、背景に大きな心理的問題があることが多いと考えられます。前途洋々のはずの若者ならなおさらのことです。
悲劇的な事件を起こす前に、誰かと話をし、共感してもらえていれば、事件が防げることもあります。話しにくい、共感してもらいずらい悩みを抱えている若者ほど、支援を必要としている若者です。
良いコミュニケーションが、様々な学生の問題を防ぎ、不幸な事件事故の防止にもつながるでしょう。
ある犯罪心理学者は、「殺意を持ている人にそれを実行させるには、だれもその人に話しかけないことだ」と語っています。
専門学校の中には、学生の退学防止のために、入学直後から担当教員との個別面談を何度も行っている学校もあります。
若者だからといって犯罪行為が許されるわけではありませんが、若者を健全に育てるのが、大人たちの役割りなのだと思います。私たちの一言が、事件事故防止につながるかもしれません。