アップルが60億ドル超の費用を投じる新市場は有力か
英フィナンシャル・タイムズによると、米アップルは11月開始予定の定額制映像配信サービス「Apple TV+」に向けて、オリジナルのテレビ番組や映画の制作に60億ドル(約6500億円)超の費用を投じているという。
増大の一途をたどる制作費
同社は映像配信をテコ入れするため、2017年に米ソニー・ピクチャーズのテレビ番組制作会社ソニー・ピクチャーズテレビジョンで共同社長を務めてきた、ジェイミー・エーリクト氏とザック・バン・アンバーグ氏を雇い入れた。
両氏指揮による新体制の下、初年の予算として10億ドル(約1080億円)を割当て、コンテンツ制作事業を本格化させた。しかし、その後費用は増大の一途をたどり、今では60億ドルを超えているという。
エーリクト氏とバン・アンバーグ氏は、カリフォルニア州カルバーシティーにあるオフィスで専門家を集めてチーム作り、映像制作事業を推進しているとフィナンシャル・タイムズは伝えている。
カルバーシティーは、テレビ番組や映画の制作会社が多くある都市。2017年には米アマゾン・ドット・コムが映像作品制作部門「Amazon Studios」の規模を拡大し、ここに拠点を移した。
著名人と続々契約
アップルは2018年に、米国の人気トーク番組「The Oprah Winfrey Show」で知られる大物タレントで、実業家のオプラ・ウィンフリー氏とオリジナル番組の制作に関して複数年のパートナーシップ契約を結んだ。
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、女優で映画プロデューサーのリース・ウィザースプーン氏や女優・コメディアンのクリステン・ウィグ氏、映画監督のJ.J. エイブラムス氏やM・ナイト・シャマラン氏とも同様の契約を結んでいる。
今年3月に開催した発表イベントでは、ウィンフリー氏やウィザースプーン氏などに加え、映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏も登壇し、Apple TV+をアピールした。
ライバルひしめき合う市場
こうした大がかりなサービスの立ち上げは、ティム・クック最高経営責任者(CEO)の新経営方針を反映しているとフィナンシャル・タイムズは伝えている。iPhoneの販売が頭打ちになった今、年間500億ドルのサービス売上高を目指し、スマートフォン事業への依存を減らしたい考えだという。
ただし、映像配信はライバルがひしめき合う市場だ。この市場では米ネットフリックスや米フールー、アマゾンが成功を収めている。今年11月には米娯楽大手のウォルト・ディズニーも新サービス「Disney+」を開始する。
米通信大手AT&Tの傘下に入ったワーナーメディア(旧タイム・ワーナー)と米ケーブルテレビ大手コムキャスト傘下のメディア企業NBCユニバーサルも来年にサービスを始める計画だ。
- (このコラムは「JBpress」2019年8月21日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)