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マンションならば強盗が侵入しにくい……じつは安心レベルに差があるのをご存じ?

櫻井幸雄住宅評論家
今やマンションの基本設備となっているオートロック。しかし、それだけでは不安。(写真:イメージマート)

 各地で凶悪な強盗事件が発生し、住宅のセキュリティ対策への関心が高まっている。

 セキュリティの面でいえば、戸建て住宅より安心とされるのがマンション。何重もの防犯設備が付いているし、警備会社のセキュリティサービスも付随しているからだ。

 そのため、富裕層は広い庭付きの戸建て住宅より超高層マンションの上層階のほうを好む傾向があるのだが、そのことは2023年2月10日の記事知られざる数億ションの世界(9)庭付き豪邸のほうがよくない?に富裕層がノーという理由で紹介した。

 しかしながら、すべてのマンションがセキュリティ強固というわけではない。賃貸マンションの大半はセキュリティシステムが脆弱だし、分譲マンションも築30年を超える建物は防犯設備が少なく、安心とはいいにくいものが大半だ。

 そのような事例があるため、ニュース等で「マンションだって不安」と指摘されることがある。

 近年の新築分譲マンションであれば、セキュリティに力を入れない物件は存在しない。ただし、新築分譲マンションにおけるセキュリティ態勢は均一ではなく、物件ごとに差がある。

 40年に及ぶ取材経験から、マンション・セキュリティにおける安心レベルの差を分類してみた。

 マンションとして最低限必要な「レベル1」から最上位の「レベル5」まで、5つの段階ごとに、マンション・セキュリティのホントを解説したい。

レベル1は、「オートロック」のみ

 マンションのセキュリティで最初に思いつくのは「オートロック」だろう。住戸の玄関キーを持っている人、そして住人に許可された人しかマンションの建物内に入ることができないシステムだ。現在、新築分譲マンションならば、まず間違いなく付けられている防犯設備だ。

 しかしながら、マンションのオートロックは金融機関や研究所のそれほど強固ではない。強固にし過ぎると、日常的な出入りが面倒になってしまい、生活しにくいマンションになってしまうからだ。

 たとえば、古いマンションにオートロックを後付けしたとき、他にフリーパスの出入り口が残るケースがある。また、オートロックが設置されていても、「とも連れ」という方法で犯罪者が入り込んでしまうことだってある。悪事を企む人間が正規の入館者の背後に付き、一緒に入ってしまうわけだ。

 具体的な手口を明かすことはできないが、他にもオートロックの自動ドアを不正に開く手段はいくつかある。

 オートロックは、それ単体での犯罪抑止力は弱い。そのため、オートロックを設置しただけの安心レベルは「1」にとどめた。

 賃貸マンションの場合、この「オートロックのみ」となるケースが多いので、注意が必要。その点、レベル「2」になっていれば、安心度が一気に高まる。

レベル2は「オートロックで監視カメラ付き」

 現在、新築分譲マンションではオートロックだけを単体で設置することはない。

 オートロックに監視カメラを加えて出入りを見守り、録画も行うのが一般的だ。犯罪者はこの「録画」を嫌がる。不正侵入の証拠となり、警察に逮捕される確率が高まるからだ。

 そのため、戸建て住宅でも訪問者の顔を録画するカメラ付きインターホンを防犯設備として設置するケースが増えている。

 マンションの場合、録画ができるカメラのほか各種センサーも駆使して建物内の安全を監視し、住人が非常ボタンを押せば警備スタッフが駆けつける、というシステムが広まっている。

 それが「24時間管理」と呼ばれるものだ。「24時間管理」は警備会社との間でセキュリティ契約を結ぶことによって実現する。

 新築分譲マンションの場合、オートロックと24時間管理を組み合わせるのは今や当たり前だ。犯罪抑止効果も大きく上がるので、「オートロックで監視カメラ付き」もしくは「オートロックで24時間管理」になっている場合は、セキュリティの安心レベルを「2」とした。

レベル3は「ダブルオートロックで24時間管理」

 基本的なセキュリティシステムのオートロックは「とも連れ」で突破されやすいことは前述したとおり。これを防ぐため、エントランスだけでなく、エレベーターホールに入るところなどにもうひとつオートロックの関所を設けるのが「ダブルオートロック」というもの。さらに、エレベーターを下りた後、共用廊下に入るところにもうひとつオートロックを追加するケースもある。

 いくつもオートロックを配置すると、その都度とも連れで通過する人は不自然だ。その様子を監視カメラで発見した警備スタッフは、エレベーター内のスピーカーで警告を発したりする。

 ちなみに、カメラ、センサーで異常を感知したときや非常ボタンが押されたときの警告は「あなたの顔は録画されている」と伝え、速やかな退去を促す。もしくは警備員が駆けつけることや警察に通報したことを伝えるものとなる。

 安心度が高いシステムだが、オートロックを複数設けると、住人の面倒が増えるという弊害も生じる。居住者はオートロックを通過するたびに玄関キーを取り出さなければならないからだ。

 そこで、2つ以上のオートロックがある場合、玄関キーを「ハンズフリー方式」にすることが多い。玄関キーをポケットやバッグに入れているだけで、オートロックのセンサーがキーを感知。車のETCのように、何もしなくても自動ドアが開く仕組みである。

 オートロックで24時間管理になっているだけでなく、オートロックを2カ所以上に設置。そして、オートロックがハンズフリー方式になっている状態を安心レベル「3」とした。

レベル4はオートロックで「24時間有人管理」

 マンションのセキュリティでは「24時間管理」とは別に「24時間有人管理」と位置づけされるものがある。

 24時間管理に「有人」の2文字が加わっただけで、2つは同じものと思われがち。が、「24時間有人管理」は「24時間管理」と大きく異なる点があり、安心レベルが大きく上がる。どこが違うかというと……。

 前述した24時間管理では、マンションの建物内にガードマンなど警備スタッフが常駐しているわけではない。警備スタッフはマンションとは別の防災拠点に待機し、カメラやセンサーで複数のマンションを監視。そのなかで異常が感知されたり、非常ボタンが押されたら、車でマンションに駆けつけるシステムになっている。

 駆けつける場合、防災拠点からの距離により相応の時間がかかる。

 これに対し、「24時間有人管理」では、警備スタッフや管理スタッフがマンション内に常駐している。そのため、夜間でも休日でも24時間即時の対応が可能だ。

 さらに、夜間もマンション内に警備スタッフの姿がみえることで、犯罪の抑止効果が高くなる。オートロックで24時間有人管理になっていれば、安心感、信頼感がぐっと上がる。だから、ダブルオートロックでなくても、24時間有人管理であれば安心レベルは「4」とした。

レベル5は、「24時間有人管理で夜間2人以上」

 ここまでの説明で、オートロックに加え、「24時間有人管理」になっているマンションは最も安心と考える人が多いだろう。

 しかし、実際にはその上がある。

 それは、24時間有人管理で夜間2人以上の体制だ。

 深夜もマンション内に警備スタッフが常駐している場合、その警備スタッフは深夜勤務を行うことになる。労働基準法で、深夜勤務では一定時間の休憩、休息をとることが認められているので、1人しかいないと休憩、休息時間に警備が行われないことになってしまう。

 また、1人勤務では、管理室を離れ、敷地内を見回りすることもしにくい。そこで、夜間の安心度を高めるのは、「24時間有人管理」で夜間2人以上の体制が最良と考えられる。この24時間有人管理で夜間2人以上を安心レベル「5」とした。

 とはいえ、夜間に2人以上の警備スタッフを常駐させるのは、非常にお金がかかる。そのため、総戸数2000戸を超えるような超大型のマンションや、オフィス、商業施設と一体化したマンションでもないと、なかなか実現できないのが実情だ。

 さらに、毎月の管理費を節約するため、夜間の警備スタッフを2人から1人に減らすケースがあるのも事実だ。

安心度のレベル番外は……

 以上5つのレベルのうち、分譲マンションで採用されているのはレベルが「2」以上のセキュリティ。強盗被害が発生しにくい安全水準が確保されていると考えられる。

 レベルが上がるごとに設備費用や運営費用が高くなるため、「費用との兼ね合い」が問題となる。セキュリティ強固なマンションを選ぶと、毎月の管理費が高くなりがちなのだ。

 その点、管理費を上げずに高い安心感を得られるマンションもある。それは、警察署や機動隊本部など警察施設に近い立地のマンションだ。

 以前、都内品川区の勝島エリアで、新築マンションがたびたび分譲された時期がある。そのとき、「このエリアは警視庁第六機動隊の本部に近いので、犯罪が起きにくい」と評価する人がいた。わるいことを目論む人間は、パトカーなど警察車両が頻繁に行き来する場所に近づかない。

 なかでも、第六機動隊はそのマークから「若鹿の六機」と呼ばれる有名な部隊。だから、安心というわけだ。

 いわば安心レベルの「番外」として、警察施設の近くでマンションを探す方法があるわけだ。これなら管理の費用を上げず、最高の効果が期待できそう……。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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