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九州南部での大雨 トイレ支援として今すぐに必要なこと

加藤篤特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事
九州北部豪雨の写真(写真:ロイター/アフロ)

2020年7月4日の九州での記録的な大雨で甚大な被害が出ています。しかも、引き続き大雨の警戒が必要と言われています。

被災されている方へのトイレ支援は急務です。同時に、今後の備えを行う必要もあります。

災害時のトイレに関しては、地震であろうと水害であろうと排泄は待ったなしです。熊本地震のときは発災から6時間以内に73%の人がトイレに行きたくなったという調査結果があります。だからこそ、備えが不可欠です。災害が起きてからのトイレ支援は全力を尽くすものの、直後のニーズには間に合わない、という意味です。ですが、発災してからもやるべきことはたくさんあります。想定される健康被害を最小にするためのトイレ支援が求められます。

2018年の西日本豪雨の教訓をもとに、トイレ支援(仮設トイレ・携帯トイレ・簡易トイレ)で何が必要なのかを簡単にまとめます。

被災地の方々、これから支援に携わる方々の参考になればありがたいです。

仮設トイレは、市内各所にも必要

水害時は避難所だけでなく、市内各所に仮設トイレの配備が求められます。泥出し作業やがれき撤去等の際にトイレは必要になるからです。また、ボランティア等の支援者にとっても必要となります。トイレのたびにボランティア拠点に戻るわけにはいきませんし、トイレに行かなくてすむように水分摂取を控えてしまうと脱水症になります。

西日本豪雨の際、倉敷市は仮設トイレの配備および維持管理を以下のように対応しました。仮設トイレというのは、避難所や市内各所に設置して完了ではありません。衛生的に維持管理することが必要ですし、本当に使ってもらえているかを確認することも大切です。

倉敷市の仮設トイレ配備の主な流れ

1.公共用地をピックアップして現場確認

2.設置可能なら仮設トイレを配備

3.公共用地では足りない場合は民営地に直接交渉して仮設トイレを追加配備

4.これらの仮設トイレの維持管理(高圧洗浄車を使用した巡回、くみ取り、掃除、ペーパー補充、水補給等)を業者に依頼

(詳細は「西日本豪雨災害のトイレ」を参考にしてください。)

仮設トイレ配備の際のチェック事項

以下は、仮設トイレを配備(初期段階)する際のチェック事項です。これまでの災害時のトイレ事情を踏まえて簡単に整理します。

(洋式などに配慮した仮設トイレは「災害用トイレ」を参考にしてください)

1.避難所ニーズの把握

・避難所での断水の有無、下水道の使用可不可、浄化槽の使用可不可などを確認

・避難者人数の確認(避難者だけでなく地域住民のトイレ利用も想定)

・車いす対応など要配慮者へのトイレ対応の確認

2.くみ取り業者との連携

・仮設トイレ設置場所およびくみ取り方法(巡回含む)の確認

・くみ取りの際の防護具の必要性の確認

3.避難所での仮設トイレ設置場所の確認

・避難所内被災者および車中泊被災者等の利便性の確認

・トイレまでのアプローチ(雨に濡れないか、段差がないか、地面がドロドロでないか等)の確認

・男女および共用利用への配慮(男女等の明確なサイン表示も必要)

4.手洗い設備の確保

・手洗いや洗面、歯磨き等ができる設備の検討

・排水方法の検討

5.照明の手配

・防犯および転倒防止等のため、トイレ内外に照明が必要

6.衛生関連製品の手配

・ペーパーや手指消毒剤、便槽用の防臭・防虫剤等を検討

携帯トイレ・簡易トイレは使用方法と一緒にサポート

断水地域だけでなく下水道や浄化槽が使用できない地域の避難所および在宅避難生活を行っている方への提供が必要です。1階が浸水したため2階以上で避難生活しているという場合にも有効活用できます。(携帯トイレ・簡易トイレの詳細

また、避難所で携帯トイレを配布しているという情報を地域住民に提供することが必要です。感染症対策として新たに専用トイレを設ける場合や洋式トイレが不足する場合には、簡易トイレ(プライバシーを守る空間も確保)が有効です。

携帯トイレ・簡易トイレ配備の際のチェック事項

1.携帯トイレ・簡易トイレの使用方法を周知するチラシやポスターの準備

2.避難所避難者だけでなく在宅避難者や車中避難者等への情報提供

3.使用済み携帯トイレの保管方法および回収方法の調整および周知

4.ペーパーや手指消毒剤等の同時提供

参考:携帯トイレの使い方ポスター

以上が、初期段階でのトイレ支援の主な内容です。

とくに被災されている方々が安心してトイレに行ける環境づくりが必要です。トイレが不便もしくは不衛生だと、出来るだけトイレに行かなくて済むように水分摂取を控えがちになることは、過去の災害から明らかです。水分を控えることで体調を崩し、免疫力が低下し、エコノミークラス症候群等で死に至ることもあります。トイレ支援は、命と尊厳にかかわることとして取り組むべきです。

これからの時期は、全国各地での水害発生が危惧されます。

自助・共助・公助としてトイレの備えが必要です。トイレの備え方のポイントを5つにまとめましたので参考にしてください。また、過去の水害では、高層マンションにおいても携帯トイレは有効活用されました。事例はこちら「タワーマンションから考える都市の防災」を参考にしてください。

特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事

災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、小学校教諭等を対象にした研修会、トイレやうんちの大切さを伝える出前授業、子どもの排便に詳しい病院リストの作成などを実施。災害時トイレ衛生管理講習会を開催し、人材育成に取り組む。TOILET MAGAZINE(http://toilet-magazine.jp/)を運営。〈委員〉避難所の確保と質の向上に関する検討会・質の向上ワーキンググループ委員(内閣府)、循環のみち下水道賞選定委員(国土交通省)など。書籍:『トイレからはじめる防災ハンドブック』(学芸出版社)、『もしもトイレがなかったら』(少年写真新聞社)など

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