韓国の世論「日韓合意」は反対 「米韓合意」は賛成
「日韓合意」とソウルの日本大使館前と釜山の領事館前の少女像の撤去問題をめぐって日韓間に外交摩擦が起きているが、「日韓合意」一周年(昨年12月28日)に際して実施された調査(世論調査機関「リアルメーター」)ではいずれも「反対」の声が大勢を占めていた。日韓合意については「維持すべき」が25.5%で、「破棄すべき」が59.0%と二倍以上もあった。(「わからない」が15.5%)
一方、中韓摩擦の原因となっている高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備については「賛成」が反対を上回っているという皮肉の結果が出た。
昨年12月30日に発表された同じ世論調査機関の調査によると「早期配備すべき」が33.8%、「配備反対」が26.7%と、賛成派のほうが多かった。(この他に「時期政府に委ねるべき」が24.8%、「わからない」も14.7%あった)
韓国国民の「米韓合意」と「日韓合意」への対応の違いが浮き彫りとなったが、同じような現象が「ポスト朴槿恵」を狙う次期大統領候補らにも共通して起きている。
現在のところ、大統領選挙は野党系の文在寅(ムン・ジェイン)「共に民主党」元代表と保守系の潘基文(パン・ギムン)前国連総長の一騎打ちが予想されているが、文候補が慰安婦問題では「この問題の責任の本質は日本が法的責任を認め、公式に謝罪することだ。それが含まれない合意は認められない」として再交渉を主張しているのは周知の事実だ。
(参考資料:韓国大統領選挙は世論調査では「文在寅」と「潘基文」の一騎打ちの様相)
ところが、THAADについては昨年までは「国益の観点から得るものよりも失うものがよい多いので再検討すべき」と反対の立場を表明していたが、最近は「米韓で交わされた合意を簡単には取り消せるとは思ってない。安全保障と国際性的側面から損得を考慮する必要がある」として「撤回」や「反対」を軽々しく口にしなくなった。
方や、藩候補は慰安婦問題では当初「日韓合意という(大統領の)正しい英断に対しては歴史が評価するだろう」と称えていたが、今では「究極的な完璧な合意は慰安婦らの恨みを晴らすレベルのものでなければならない。日本が拠出した10億円が少女像撤去の条件となっているならば金を返すべき」と立場を豹変させている。
しかし、米国との約束事であるTHAADの配備については「安保次元からTHAADの配備を支持する。朝鮮半島は準戦時状態にあるので配備は当然のことである。米韓関係で合意したのに問題があるからもう一度交渉しようとするのは望ましくない」と「米韓合意」順守の立場を曲げてない。
(参考資料:韓国大統領候補全員が日韓合意見直し、少女像撤去には反対)
他の大統領候補らも同様で異口同音で、第二野党の「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)前代表は「日韓合意」については再交渉を主張しているが、「米韓合意」については「政府の間で約束した協約を完全になかったものとしてひっくり返すのは難しい」と慎重な立場を取っているし、また、安熙正(アン・フィジョン)忠清南道知事も「米韓間の協約を通じて決定されたものなので尊重すべきである」と安前代表と同じ立場である。
さらに、保守系候補では「日韓合意」について「間違った合意で、売国行為である」と最も辛辣で強硬な立場を貫いている改革保守新党「正しい政党」の劉承敏(ユ・スンミン)議員もことTHAADについては「国民の生命を守るうえでも配備は必須条件である」と「米韓合意」への支持を表明している。
世論調査では3位に付けている「韓国のトランプ」こと李在明(イ・ジェミョン)城南知事も「日韓合意は破棄、再度交渉すべき」の立場だが、「米韓合意」は「韓国のミサイル防衛網が完成した暁には撤収すべきである」と少なくとも「条件付き賛成派」である。
同じ外交合意であるにもかかわらず日本と米国に対する韓国世論の温度差は何とも奇異に感じてならない。