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スローペースで相掛かりの序盤続く 竜王戦本戦▲山崎隆之八段(1組3位)-△藤井聡太二冠(2組優勝)

松本博文将棋ライター

 7月10日10時。大阪・関西将棋会館において第34期竜王戦本戦▲山崎隆之八段(40歳)-△藤井聡太二冠(18歳)戦が始まりました。

 藤井二冠はデビュー以来5期連続竜王ランキング戦優勝。ランキング戦で24連勝中という、とんでもない記録を作っています。

 一方、竜王戦本戦では4勝4敗。強敵に行く手をはばまれて、なかなか上までたどりつくことはできませんでした。今期は2組優勝枠での出場で、これまでで最も高い位置からのスタート。勝てば初のベスト4進出となります。

 先手山崎八段は相掛かりの作戦を選びました。

 先日おこなわれたA級順位戦1回戦▲山崎八段-△斎藤慎太郎八段戦も相掛かりでした。結果は斎藤八段が勝っています。

 山崎八段とともにA級に昇級した1期目の永瀬拓矢王座は現在2連勝なのが目をひきますが、長いレースはまだまだ始まったばかりです。

 本局は▲山崎-△斎藤戦とはまた異なった進行ですが、山崎八段がなかなか角筋を開かないところは同じです。

 午後に入ってもスローペースの進行。長考派の藤井二冠だけではなく、山崎八段もまた時間を使って考えます。

 藤井二冠はときおり、ぐったりしたようにうつむきます。まだ18歳、7月19日の誕生日を迎えても19歳の若さとはいえ、ハードスケジュールで疲れているのではないかと心配にもなります。

 36手目。藤井二冠は45分考えて6筋の位を取りました。

 16時過ぎ。藤井二冠が席をはずしているタイミングで、山崎八段は37手目、5筋の歩を中央に進めました。そして「ふう」と、大きく息をつきます。五段目の飛の横利きがあるとはいえ、相手の角が利いているため、かなり意欲的な指し回しに見えます。

 持ち時間5時間のうち、残りは山崎2時間10分、藤井2時間48分。山崎八段の方が時間を多く使っています。

 38手目。藤井二冠は13分考えて、7筋の位も取ります。相手が角筋を開いてこないのをとがめる構想でしょうか。

 形勢はほぼ互角。まだまだ先の長い戦いとなりそうです。

 本日は19時からABEMAトーナメントが放映されます。本局とどちらをリアルタイムで見るか、悩ましい方も多いでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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