食の事業者に利用してもらいたい世界の大手ECサイトで無料かつ簡単に販売できる唯一の方法とは?
海外への販路
総務省が2019年3月20日に発表した人口推計によると、2019年3月1日現在で日本の総人口は1億2622万人となり、前年同月に比べて27万人減少しました。
我が国における総人口の長期的推移によれば、2004年12月にピークとなる1億2784万人を記録してからは、千年単位でみても類をみない極めて急激な減少を辿っていくとされており、2030年には1億1522万人、2050年には9515万人、2100年には6407万人とピーク時の半分になるとされています。
日本国内の人口減によって内需拡大が見込めなくなる状況では、小売業者も海外への販路を見出すことが重要となるでしょう。
ただ、日本から輸出するといっても、そう簡単にはできないと思うかもしれません。中小企業であれば、なおのことです。
しかし実は、極めて少ないコストとリスクで、海外の大手ECサイトに販路を見出す仕組みが提供されています。
それは、ジェトロ(JETRO、日本貿易振興機構)が主催しているジャパン・モール(JAPAN MALL)です。
加工食品や生鮮品といった食品、テーブルウェア、調理器具といった品目が主になっており、食を扱う事業者には是非とも知ってもらいたいと思います。
経済産業省に取材した内容も織り交ぜながら紹介していきましょう。
ジャパン・モールの概要
ジャパン・モールとはどういったものでしょうか。
ジャパン・モールとは、中堅・中小企業を対象にした海外の主要ECサイトによる日本商品の買取り販売を支援するプロジェクトです。今年度の応募締切は2019年4月26日となっています。
ジェトロが良心的な枠組みをつくっており、参加する事業者は無料で負担をかけずに参加できることが大きな特徴です。
2018年度に開始
ジャパン・モールは2018年度に開始しました。
農林水産・食品分野に関しては、シンガポール「RedMart」で170社約700品目の応募があり、約40社200品目以上を販売。「イオンストアーズ香港」では、104社395品目の応募に対して20社50品目を販売しました。
今年度は海外におけるEC市場拡大及びTPP11や日EU・EPA発効を踏まえ、昨年度の5カ国・地域から、今年度は18カ国・地域へと大幅に拡大して、海外向け輸出拡大に取り組んでいます。
対象国と品目
対象となる国と品目はどうなっているのでしょうか。
18もの国や地域が対象となっており、それぞれで販売するECサイトによって取り扱う品目が異なっていますが、食品は全体の半分近くで取り扱われています。
販売対象外としたい国・地域があれば、申請時に提出する商品シートでその旨を記載することも可能です。
参加するメリット
では改めて、参加する事業者にはどのようなメリットがあるでしょうか。
やはり大きいのは、ECサイトが買い取って販売することでしょう。どのECサイトが取り扱うにしても、原則的に商品を買い取ることになっているので、事業者が大きなリスクを負うことはありません。
さらには、ECサイトの多くは日本国内に拠点があり、国内だけで取引が完了するので、あまり手間がかからないこともポイントです。
またプロモーション実施後に販売データを入手してフィードバックすることもできるので、海外で販売する際のマーケティングにも寄与します。
参加の手順
事業者はどのようなステップを踏んでジャパン・モールに参加できるのでしょうか。
事業者はまずジェトロに登録して、IDを取得する必要があります。その後に、販売したい商品の情報をダウンロードしたエクセルシートに記入し、定められた件名と記載されたジェトロのメールアドレスに宛てて記入したエクセルシートを添付します。
その後に、ジェトロがECサイトのバイヤーを日本に招聘し、公募した日本の事業者が商談会を行い、無事に契約が成立すれば、5月くらいから順次ECサイトで販売が開始されるという流れです。
ジェトロのコネクションを利用
ここまで紹介してきたように、ジャパン・モールは事業者にとっては非常にありがたい仕組みになっています。
ジェトロがつくった枠組みに従って進めていけば、基本的に無料でECサイトと商談することができ、合意に至れば、全て商品を買い取ってもらい、海外で販売してもらえるのです。
ジェトロに大きな負担がかかっているように思えますが、実はそれほど負担がかかっているわけではありません。
というのも、海外54カ国に74事務所(2018年11月12日現在)を開設し、職員数は732名(2019年4月1日現在)にも上り、もともと海外の企業にコネクションがあり、主要なECサイトとのリレーションシップも既に築かれているからです。
ECサイトの事業者を招聘するなど商談会に関する費用は必要ですが、18カ国の大手ECサイトで販売できることを考えれば費用対効果は極めて高いといえるでしょう。
日本の加工食品や生鮮品、さらには、プレートやナイフを始めとしたカトラリー、包丁などは海外でも人気が高く、注目されているだけに、低コストで日本の食を輸出できるのは素晴らしいことです。
本業に集中しながら海外に輸出
農林水産物・食品の輸出額は順調に伸びており、2012年の4497億円から毎年連続で増加し、2017年の8071億円、2018年の速報値では9068億円と伸長しています。
こういった実績を追い風に受けながら、農林水産省の農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)は、2019年の輸出額1兆円を目指しています。
ユーラシア大陸から離れた東方に位置し、島国である日本は世界の中でも独特の食文化を育んできましたが、独自性を保ちながらも、現代では世界で最もミシュランガイドの星を獲得する東京を有する美食の国となっています。
加工食品を製造したり、生鮮品をとったり、テーブルウェアを紡ぎ上げたりする事業者は、基本的に職人集団であるといってよいでしょう。そういった方たちが本業に集中しながらも海外に大きな販路を築き上げられるのは、事業者にとっても日本にとっても非常に有益なことです。
応募の締切は2019年4月26日と迫ってきていますが、オンラインで完了するので、自身の商品、および、日本の食文化を海外に伝えたい事業者は、是非とも応募してもらいたいと思っています。