雪は差出人の分からない天からの手紙だった
雪の結晶の形は温度と湿度に関係
上空の大気が0度以下になると、雲の中の水蒸気は微粒子(氷晶核)を核として昇華し、ごく小さな氷の粒となります。
氷の粒は、さらに大きくなり、やがて様々な形をした雪の結晶となりますが、その形は、結晶ができたときの温度と湿度に関係しています。
このことを世界で初めて明らかにしたのは、北海道大学の中谷宇吉郎博士で、昭和13年12月末に人工的に雪の結晶を作って解明しました。
温度が大体マイナス10度以上と高めの場合、または、マイナス20度以下とかなり低い場合には、結晶は柱状になり、その中間の温度の場合には板状になります。
また、湿度が低い場合は、結晶の成長が遅くなるため、結晶は角柱や角板となりますが、湿度が高い場合には結晶の成長速度が速く、四方あるいは一方にどんどん延びてゆくため樹枝状や針状になります。
図は、これらの関係をもとに作られたものです。縦軸は過飽和量で、湿度100%をどれだけ超えているかを表す量で、過飽和量0.0が湿度100%です。
随筆家でもある中谷宇吉郎博士は、雪の結晶の形を見れば、それができた場所の温度と湿度がわかるということから、「雪は天からの手紙」という名言を残しています。
物理学の師であり、随筆家の師でもあった寺田寅彦が亡くなったのは、昭和10年12月31日ですので、その3年後の業績です。
大自然のロマンを感じる言葉ですが、上空のどこで出来たのかわからないので、差出人のない手紙ということになります。
色々な手紙
天からの手紙も色々あり、とても寒い時には粉雪と呼ぼれる細かな雪の結晶が舞い落ちます。バウダースノーとも呼ばれ、スキーには適した雪ですが、雪玉を作ろうとしてもパサパサしてすぐに崩れてしまいます。
北海道では雪の日に傘をささないのは、コートに雪がつきにくく、ついても払うとすぐに落ちるからです。
それほど寒い時には、水分をたくさん含んだ湿り雪になります。この雪は、服にべっとり付くため、傘が必需品となります。また、雪の結晶がいくつもくっついて、大きな雪片となる「ぼたん雪」もあります。
雪の結晶を写真にとって送ってとツイッター
東京都内で54年ぶりの11月の初雪を観測した11月24日、気象研究所の荒木健太郎研究官がTwitterで雪の結晶の写真を募っています。
荒木健太郎さんのTwitter
雪結晶には色々種類があります.つくばでは交差角板や六花などが見られています.みなさんのお住まいの地域ではいかがでしょうか?スマホ接写で撮れますので,ぜひ雪結晶を観察してみて下さい.#関東雪結晶 のタグ付きで撮影時間・場所などいれて投稿いただけると嬉しいです.よろしくお願いします!
このツイートが拡散し、関東甲信地方から沢山の雪の結晶の写真が集まったとのことです。
差出人不明の手紙であっても、大量に集まればビッグデータとして解析し、雪研究に重要な役割をすると期待されています。
スマホの普及により、ほとんどの人が写真を送信できるカメラを持っている時代になっていますので、中谷宇吉郎博士の時代とは全く違ったアプローチが可能となっています。
12月10日に気象庁で開催された気象学会と雪氷学会が主催したシンポジウム「関東の大雪に備える」では、荒木健太郎研究官が、この世界初の超高密度広域雪結晶観測について速報しています。
図の出典:饒村曜(2003)、こんなにためになる気象の話、ナツメ社。