久保建英の森保ジャパンとビジャレアルでの役割を徹底比較。「シャドー」と「ウィング」の2つの役割とは。
久保建英のプレーを、解釈する。
今回のインターナショナルウィークで森保ジャパンに招集された久保に、パナマ戦で先発の機会が訪れた。システムは【3−4−2−1】で、久保のポジションは2シャドーの一角だった。
(日本代表スタメンの図)
2シャドーで久保の「相棒」となったのは、三好康児だ。久保、三好、共にテクニックがあり、ドリブルを得意とする。彼らの創造性と想像性が連なり、1トップの南野拓実を含め、鮮やかなコンビネーションで崩していく画が期待された。
(パナマ戦の図)
だが結果から言えば、前線の3選手は思ったような「崩し」を見せられなかった。無論、良いシーンというのは、いくつかあった。決勝点の場面では、久保のスルーパスに反応した南野が相手GKに倒され、PKを獲得している。だが試合を通じて攻撃に「再現性」があったかどうかと問われれば、私の答えは「ノー」である。
■再現性と意図
それでは、なぜ再現性がなかったのか。その導入から語っていきたい。
森保ジャパンの【3−4−2−1】において、攻撃面の決定的な課題は「可変の形」がないことだ。
そもそも、このシステムでは可変の仕方が非常に難しい。自然発生的に可変の形が生まれる可能性は低い。ゆえに、逆説的に大迫勇也のような万能型FWが重宝されるのだ。余談であるが、パナマ戦においても、再び大迫の存在の大きさというのが痛感された。
【4−4−2】のパナマに対して、久保と三好は相手ボランチの背後を取るのが重要になる(パナマの選手は分かりやすく背番号とポジションで表示)。こういったゾーンでボールを受けられれば、久保としてもチームとしてもプラスの展開になる。
(久保が背後で受ける図)
だが、パナマもバカではない。久保に対して、CBとボランチが協働して挟みに行く。あるいは、MFのラインを下げて、中盤を圧縮。スペースを潰して自由を効かなくする手段を採った。
(中盤の圧縮の図)
ここで、大切になってくるのが、可変だ。端的に言うなら、久保、三好、南野がポジションを入れ替えながらスペースとボールを移動する/移動させる必要があった。それによりパナマ守備陣の混乱を招き、プレスの的を絞り難くして、マークのズレを作らないといけなかった。
例えば、久保が前線に出て、南野が降りてきて、三好が横にずれれる。3人がトライアングルを描くように動いているのが、分かるだろうか。
(可変の図1)
久保を見るべきだったボランチの6番が、そのまま久保に付いていけば、三好がフリーになる。あるいは降りてくる南野にセンターバックの3番がマークに行けば、空いた裏のスペースに久保が飛び込める。日本の実質的な司令塔である柴崎からは質の高いボールが供給される。それは選手の適性にも合っている。「穴」をつくれば、それを利用できるのだ。
(可変の図2)
ただ、その穴を、「意図的に」つくれるかどうかが問題だ。パナマ戦では、久保と三好がポジションチェンジする場面はあったが、南野との連携は少なかった。ヨコにはずれていたが、タテにずれていなかった。それが停滞、特に前半の攻撃の停滞の大きな原因だった。
■ビジャレアルでの役割
一方、ビジャレアルでの久保はどうなのか。ヨーロッパリーグでプレータイムを得ながら、リーガエスパニョーラでは先発出場が少ない。久保がスタメン出場したのは第7節カディス戦のみだ。まだウナイ・エメリ監督の信頼を勝ち取ったとは言い難い状況だ。
移籍当初、エメリ監督は久保を2トップの一角に組み込ませる算段だった。【4-4-2】と【4-4-1-1】を使い分けながら、トップとトップ下のポジションを久保に往来させる考えを持っていた。
(全文字数3112字/図 23つ)
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