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球団オプションを破棄されてもFAにならなかったクローザーが、トレードでヤンキースへ移籍する

宇根夏樹ベースボール・ライター
デビン・ウィリアムズ Aug 20, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 12月13日、ニューヨーク・ヤンキースは、ミルウォーキー・ブルワーズからデビン・ウィリアムズを獲得した。その見返りに、ネスター・コーテズケイレブ・ダービンと金銭を放出した。

 ウィリアムズは、ここ3シーズン(2022~24年)に148登板で141.0イニングを投げ、奪三振率14.11と与四球率4.40、防御率1.66を記録している。65セーブと26ホールドに対し、セーブ失敗は7度。4シームとチェンジアップは、どちらも空振り率が高い。

 このスパンに100イニング以上の464人のなかで、ウィリアムズの防御率は最も低く、奪三振率は2番目に高い。ちなみに、防御率の2位は1.72のエマニュエル・クラッセ(クリーブランド・ガーディアンズ)、奪三振率の1位は15.72のエドウィン・ディアズ(ニューヨーク・メッツ)だ。

 昨オフ、ブルワーズとウィリアムズは、年俸調停を回避し、2024年の年俸700万ドルに2025年の球団オプション、年俸1050万ドル(解約金25万ドル)がついた契約を交わした。今オフ、ブルワーズは、その球団オプションを破棄した。

 だが、ウィリアムズは、FAにはならなかった。ウィリアムズのサービス・タイムが6年に達するのは、今オフではなく来オフだ。

 ここまでの経緯については、先月初旬にこちらで書いた。

「3年続けて防御率1点台のクローザーが球団オプションを破棄される。それでもFAにはならず…」

 2024年にヤンキースで30セーブを挙げたクレイ・ホームズは、FAになり、メッツと契約を交わした。ヤンキース→FA→メッツは、ホアン・ソトと共通するが、メッツに入団したのはホームズが先だ。来シーズンは、先発マウンドに上がることが予定されている(「3年連続20セーブ以上の救援投手を3年3800万ドルで迎え、先発投手に転向させる。そのリスクは…」)。

 ウィリアムズの加入により、シーズン終盤とポストシーズンにクローザーを務めた――不調に陥ったホームズと交代した――ルーク・ウィーバーは、セットアッパーに戻ると思われる。

 ウィアムズと入れ替わりにブルワーズへ移った2人のうち、コーテズは、2024年に174.1イニングを投げ、奪三振率8.36と与四球率2.01、防御率3.77を記録した。ウィリアムズと同じく、コーテズも来オフのFA市場に出る。

 ダービンは、まだメジャーデビューしていない。二塁、三塁、遊撃を守る。2024年はAAAで82試合に出場し、打率.287と出塁率.396、10本塁打と29盗塁、OPS.867(他にAで1試合とAAで7試合に出場)。今秋のアリゾナ・フォール・リーグでは、24試合で29盗塁を決め、盗塁死は1度しかなかった。

 ヤンキースは、コーテズを放出しても、6人の先発投手を擁する。ゲリット・コールカルロス・ロドーンクラーク・シュミット、新人王のルイス・ヒールマーカス・ストローマンの5人に、8年2億1800万ドル(2025~32年)の契約で迎え入れたマックス・フリードだ(「ヤンキースが手に入れた投手は契約に見合うのか。8年2億1800万ドルは総額の左腕史上最高を更新」)。ヤンキースは、野手を獲得するために、コーテズに続き、ヒールかストローマンも放出するかもしれない。

 なお、ウィリアムズは、「壁パンチ」の前歴も持つ。

「壁パンチで勝利の方程式が崩れる。球団初のワールドシリーズ優勝に暗雲!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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