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ヤンキースが手に入れた投手は契約に見合うのか。8年2億1800万ドルは総額の左腕史上最高を更新

宇根夏樹ベースボール・ライター
マックス・フリード Sep 16, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ニューヨーク・ヤンキースは、ブレイク・スネルを入手できず、ホアン・ソトを呼び戻すこともできなかった。

 スネルは、ロサンゼルス・ドジャースと5年1億8200万ドル(2025~29年)の契約を交わした。ソトは、まだ正式発表はないものの、15年7億6500万ドル(2025~39年)の契約でニューヨーク・メッツと合意に達した。ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンによると、ヤンキースがソトに申し出た契約は、16年7億6000万ドル(2025~40年)だったという。

 けれども、ヤンキースは、この2人とは別の大物を手に入れたようだ。ESPNのジェフ・パッサンらが、マックス・フリードと8年2億1800万ドル(2025~32年)の契約で合意、と報じている。

 フリードは、スネルと同じ左の先発投手だ。メジャーデビュー前にサンディエゴ・パドレスからアトランタ・ブレーブスへ移り、その後はブレーブス一筋に過ごしてきた。報道のとおりだとすると、フリードの契約総額は、左腕史上最高となる。2015年のオフにデビッド・プライスがボストン・レッドソックスと交わした、7年2億1700万ドル(2016~22年)を上回る。

 また、2725万ドルの年平均額は、見落としがなければ、スネルの3640万ドル(2025~29年)、プライスの3100万ドル(2016~22年)、クレイトン・カーショウ(現FA)の3100万ドル(2019~21年)と3071万4286ドル(2014~20年)に次ぎ、左投手では5番目に高い。

 スネル、プライス、カーショウと違い、フリードは、サイ・ヤング賞を受賞していない。ただ、ここ3シーズンの防御率とFIPは、スネルが2.82と2.98、フリードは2.80と3.03だ。それぞれの数値は、ほとんど違わない。投の左右を問わず、ここ3シーズンに400イニング以上を投げた55人のなかで、防御率はフリードとスネルが1位と2位、FIPはスネルとフリードが1位と2位に位置する。

 FIPは、フィールディング・インディペンデント・ピッチングの略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。

 スネルとフリードは、年齢も近い。2025年のシーズン年齢(6月30日時点)は、32歳と31歳だ。もっとも、ここ3シーズンの奪三振率と与四球率は、スネルの12.01と4.24に対し、フリードは8.56と2.20。タイプは異なり、フリードは、ゴロを打たせるのを持ち味とする。

 ともに、怪我と無縁ではなく、規定投球回以上のシーズンは、スネルが2度、フリードは4度。どちらも、1シーズンに190イニング以上を投げたことはない。健康を維持することができれば、2人とも契約に見合う投球ができそうだが、契約年数が長い分、怪我のリスクはフリードのほうが高い。その一方で、球威に頼ることなく、打たせて討ち取る投球は、年齢を重ねても、持続できる可能性が高い気がする。

 ちなみに、コーディファイ・ベースボールによると、先発100登板以上の投手のうち、得点圏に走者がいる時の被OPSが低い3人は、.572のカーショウ、.573のフリード、.583のペドロ・マルティネスだという。

 フリードが加わり、ヤンキースのローテーションは、ゲリット・コール、フリード、カルロス・ロドーンルイス・ヒールマイク・シュミットネスター・コーテズマーカス・ストローマンが候補となる。誰がローテーションから外れそうなのか、トレードで放出される可能性があるのかについては、こちらで書いた。

「ドジャースからFAになった投手を手に入れた場合、ヤンキースは誰をローテーションから外すのか」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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