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3年連続20セーブ以上の救援投手を3年3800万ドルで迎え、先発投手に転向させる。そのリスクは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
クレイ・ホームズ May 23, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2021年の夏にピッツバーグ・パイレーツから移籍後、クレイ・ホームズは、ニューヨーク・ヤンキースで投げてきた。

 来シーズンは、同じニューヨークのチームでも、ヤンキースではなく、ニューヨーク・メッツのユニフォームを着て、マウンドに上がるようだ。その役割も変わるらしい。

 ニューヨーク・ポストのジョエル・シャーマンやMLB.comのマーク・フェインサンドらが、3年3800万ドル(2025~27年)の契約で合意、2026年のオフにオプト・アウトの権利あり、メッツはホームズを先発投手に転向させる意向、と報じている。

 7シーズンの計311登板中、先発投手として投げたのは、メジャーリーグ1年目の4試合だけだ。2021年以降はいずれも60試合以上に登板し、ここ3シーズンは20セーブ以上。それぞれ、20セーブ、24セーブ、30セーブを挙げている。

 90マイル台後半のシンカーを多投し、ゴロを打たせる。ここ4シーズンの防御率は、3.60→2.54→2.86→3.14と推移。年齢は、来年3月に32歳となる。

 2024年のセーブ失敗は13度を数え――2022~23年は計8度――シーズン終盤にクローザーから外されたが、メッツが先発投手に転向させようとしているのは、それが理由ではないだろう。レイナルド・ロペス(アトランタ・ブレーブス)のようなケースを思い描いていると思われる。

 こちらは先発→リリーフ→先発で、投手としてのタイプも違うものの、ロペスは、2022年から60登板以上と防御率3.30未満を2シーズン続け、FAとなった昨オフに、3年3000万ドル(2024~26年)の契約でブレーブスに迎えられた。そして、先発25登板とリリーフ1登板で計135.2イニングを投げ、防御率1.99を記録した。ブルペンからの1登板は、ポストシーズン進出がかかった162試合目だ。さらに、今オフ、ブレーブスは、ロペスと延長契約を交わした。

「3年3000万ドルの1年目を終えた投手と3年3000万ドルの契約を交わす。単純にプラス1年ではなく…」

 シーズンの大半を通し、ホームズがローテーションの一角を占めれば、メッツにとっては「割安の買い物」となる。ローテーションに入らなくても、ホームズは、クローザーのエドウィン・ディアズにつなぐセットアッパーになり得る。後者については、十分な実績がある。

 メッツは、ホームズの前に、フランキー・モンタスも手に入れているが、彼らが加わっても、万全のローテーションとは言い難い。モンタスに続き、ホームズと契約を交わしたのは、もっと大きな契約でFAの先発投手を迎え入れるための布石、という見方もできる。

 モンタスとメッツのローテーションについては、こちらで書いた。

「先発3投手がFAになったメッツが2年3400万ドルで迎え入れた先発投手の防御率は3人よりも高く…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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