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なぜパリSGは欧州の頂点を目指すのか?メッシ、ネイマール、エムバペの“攻撃力”と共存の問題。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶパリ・サンジェルマンの選手たち(写真:ロイター/アフロ)

決戦の時が、近づいている。

現地時間15日にチャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦ファーストレグが行われる。パリ・サンジェルマン対レアル・マドリーの一戦は今大会屈指の好カードだ。

■3トップの存在

パリSGは今夏、リオネル・メッシをフリートランスファーで獲得した。サラリーキャップの問題を抱えていたバルセロナが放出せざるを得なかったクラック(名手)を、迅速な動きで手元に手繰り寄せた。

バロンドールを7度受賞した男の加入で、ネイマール 、キリアン・エムバペと世界最高峰の3トップが揃うことになった。マドリー戦では、ネイマールが負傷で欠場あるいはベンチスタートになる可能性がある。それでも、現在のパリSGが彼らを中心に回っているのは間違いない。

ボールを追うメッシ
ボールを追うメッシ写真:なかしまだいすけ/アフロ

「(メッシを止めるのは)難しい。ボールを保持していない時でさえ、何をするか予測できない。私は選手たちに、何をしてくるかを考えるべきだと説明しなければいけない。エムバペ、ネイマール 、ディ・マリア…。どのチームに移籍しても、彼らはスタープレーヤーだ。そういう選手たちが、同じチームにいる」と語ったのはマンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督だ。

「メッシが変わらないプレーをしているのは、嬉しいよ。彼のプレーを見るのは大きな喜びだ。パリ・サンジェルマンの特徴やクオリティについては、もはや誰もが知っている」

■大型補強の敢行

パリSGは、1970年に創設された。歴史の浅いクラブである。1986年と1994年に国内リーグ戦で優勝しているが、ヨーロッパでのタイトルは1996年に獲得したレコパのみだ。

転機が訪れたのは2011年である。カタール投資庁の子会社であるカタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)がパリSGを買収。ナセル・アル・ケライフィ会長が就任して、クラブは急成長を遂げる。

以降、マーケットが開くたびに、「パリ」の文字がメディアで踊るようになった。

ハビエル・パストーレ(2011年夏加入/移籍金4200万ユーロ/約54億円)、ズラタン・イブラヒモビッチ(2012年夏/2100万ユーロ/約27億円)、チアゴ・シウバ(2012年夏/4200万ユーロ/約54億円)、エディンソン・カバーニ(2013年夏/6450万ユーロ/約83億円)、ダビド・ルイス(2014年夏/4950万ユーロ/約64億円)、アンヘル・ディ・マリア(2015年夏/6300万ユーロ/約80億円)と次々に大物選手がパリSGに加入した。

エムバペとネイマール
エムバペとネイマール写真:ロイター/アフロ

そんな中、世界に衝撃的な一報が届けられたのは、2017年夏である。

バルセロナで燻っていたネイマールに、パリSGが触手を伸ばした。契約解除金2億2200万ユーロ(約286億円)が支払われ、世紀の移籍が成立。加えて、パリはモナコでブレイクしたエムバペ獲得に動く。移籍金1億8000万ユーロ(約234億円)で、スピードスターを確保した。

アル・ケライフィ会長就任後、パリSGは13億9100万ユーロ(約1800億円)を補強に費やしている。

無論、目標はチャンピオンズリーグ制覇だ。そして、2022年のカタール・ワールドカップに向けて、イメージアップを図る狙いがあった。

メッシ(アルゼンチン代表)、ネイマール(ブラジル代表)、エムバペ(フランス代表)と強豪国のエース級の選手がパリSGでプレーしている。彼らがW杯で活躍すれば、その時にパリとカタールの名前が再び売れるというわけだ。エムバペに関しては、ここにきてマドリー移籍の可能性が盛んに報じられている。とはいえ、パリの基本戦略に変更はない。

■共存の可能性を模索

問題は、メッシ、ネイマール 、エムバペをはじめとするスター選手たちの共存だ。

「チャンピオンズリーグで優勝したければ、7人で守備をしていてはいけない」とはティエリ・アンリの弁だ。アンリが指摘しているように、攻守において機能する組織がパリSGで構築される必要がある。

アンリ自身、2008−09シーズンにバルセロナでチャンピオンズリーグ優勝を経験している。ペップ・グアルディオラ監督率いるチームで、メッシ、サミュエル・エトー、アンリが3トップを形成していた。グアルディオラのファルソ・ヌエベの発明があり、メッシの守備負担が軽減された。一方でエトーやアンリにはハードワークが求められていた。

バルセロナ時代のアンリとメッシ
バルセロナ時代のアンリとメッシ写真:なかしまだいすけ/アフロ

2014−15シーズン、欧州の頂点に立ったバルセロナには、メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの「MSN」がいた。

2015−16シーズンから3シーズン連続でチャンピオンズリーグ制覇を達成したジダン・マドリーには「BBC」がいた。カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドの3トップがスペインと欧州で脅威になっていた。

だが近年、トレンドは変化している。リヴァプール(サラー/フィルミーノ/マネ)、バイエルン・ミュンヘン(レヴァンドフスキ /ニャブリ/ミュラー)、チェルシー(ハフェルツ/ヴェルナー/マウント)と各チームで前線にはプレッシングを厭わない選手が起用されている。

メッシ、ネイマール、エムバペの共存でビッグイヤー獲得――。そのプランは、魅力的だ。しかし、時に理想と現実は重ならない。真価の問われる一戦が、目の前に迫っている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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