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“ストーカー行為”に悩まされるK-POPアイドルたち…別名「サセン」の暴走ぶりとは

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
TWICE(写真:Keizo Mori/アフロ)

K-POPアイドルの“ストーカー被害”が深刻さを増している。

紅白歌合戦にも出場するガールズグループTWICEの所属事務所JYPエンターテインメントは最近、「TWICEのストーキング問題と関連して、管轄警察署への身辺保護要請を完了した。現在は自社及び清潭(チョンダム)地域で当該の措置を実行中」と伝えた。

以前からTWICEはネット上で、ストーキングと見られる書き込みに悩まされてきた。これまでも法的対応などの強力な措置をとるとしてきたが、警察署への身辺保護要請はあまり聞かない対応だろう。

それほど被害が深刻ということに他ならない。

苦痛を訴えるアイドルが続出

TWICEだけではない。世界的な人気グループとなったBTS(防弾少年団)のメンバーも、厳しい言葉を伝えた。

BTSのVは最近、ネット放送を通じて「チャーター便に乗るしかなかった」と切り出し、「本当は僕たちも旅客機に乗りたいけれど、長距離移動があることを知って僕たちの前や隣の席を手配する方々がいらっしゃる。どうしてもプライベートな空間で気楽に休めず、大変不便だった」と明かした。

さらに「そういった行為はしないでほしい。ここまでやるのか。怖いという気持ちだ。本当に怖い」と訴えた。

他にも、GOT7のヨンジェがSNSを通じて「お願いだから、韓国人でも外国人でも電話をやめてください。本当に気が狂うのを見たくなければ。昼夜を問わず電話してくるから、睡眠もとれない」と苦痛を吐露している。

EXOのカイも「ホテルの前にファンがいるようだが、警察を呼ぶ。早く行け」と警告した。

芸能人にとって自らを応援してくれるファンは大切な存在だが、私生活まで追いかけ回す一部の熱狂的なファンのストーカー行為は、悩みの種以外のなにものでもない。

韓国ではそのようなストーカー行為を繰り返す過激なファンを「私生活(サセンファル)に追い回すファン」という意味で、“サセンファン”と呼ぶ。

盗聴器や監視カメラ、自宅侵入も

サセンファンの暴走は尋常ではない。

所属事務所や講演会場、撮影現場、テレビ局はもちろん、美容院やレストラン、自宅にいたるまで、目当ての芸能人が出没する場所で何時間も“出待ち”するのは当たり前だ。

アイドル本人だけでなく、アイドルの知人や家族の個人情報を探し出して連絡を取り、航空機の座席情報を手に入れて横の席に搭乗したりもする。さらには盗聴器や監視カメラを設置し、自宅にまで侵入するというのだから犯罪行為そのものだろう。

それにしてもサセンファンは、どんな心理でこういった過激な行為を繰り返しているのだろうか。以前、とある韓国メディアが元サセンファンという女性をインタビューしていた。

それによれば、もともとは一般的なファンだったが、「ファン同士で情報交換しているうちに目当てのアイドルが通う美容院、カフェはもちろん、宿舎の暗証番号、携帯電話の番号などもわかるようになった」という。

そこから彼女は、気付いたらサセンファンになっていた。

「知り合いのファンは自家用車で追いかけていました。アイドルの車に盗聴器も仕掛けてあったので、近づけば車内の会話も筒抜けだったとか。それを録音して、“この資料をマスコミに渡したら彼らは解散しなきゃならない”と言っていた。その情報量に驚いたし、うらやましかった」と明かした。

アイドルのすべてを知りたい近づきたいという思いが度がすぎると、異常なサセンファンに変貌させてしまうわけだが、彼ら彼女らの犯罪行為は決して許されるものではない。

事務所や芸能人の対応は“甘い”?

こういったサセンファンからの被害をなくすために、「大部分の芸能事務所が“ブラックリスト”制度を使っている」(『朝鮮日報』)という。

アイドルの私生活を侵害したり、定められた規則を破ったりした人物はブラックリストに載せるわけだが、「その制度だけではサセンファンの根絶は難しいのが現実」だ。

というのも、芸能人や事務所がサセンファンを告訴した例は過去にほとんどない。

彼らが強硬な手段に出づらいのは、あくまでスターとファンの関係性であり、ファンのほとんどが若者だからだ。ファンに悪印象を与えかねないという思いもあるのかもしれない。

例えば2012年4月、少女時代のテヨンが公演中、舞台に乱入してきた男に連れ去られそうになる事件が起きた。警備員が男を退場させて事なきを得たが、テヨンが善処を求めたため警察沙汰になることはなかった。

耐えるしかない芸能人たちは公式の場やSNSで自制を訴えるしかできないのも、また現実といえる。

それでも前述したTWICEの所属事務所のように、警察署への要請を行う対応などが続けば、今後は現行犯逮捕されるサセンファンも出てくるかもしれない。

いずれにしても、今年はKARA出身のク・ハラや元f(x)のソルリら、K-POPアイドルが自ら命を絶つ悲劇が起きた。

(参考記事:元KARAのク・ハラを苦しめ追い詰めた「悪プル」とは。韓国で再燃するコメント規制論

彼女たちはネット上の悪質コメントに苦しんでいたというが、ファンのストーカー行為に苦しむK-POPアイドルも非常に多い。

それが悲劇につながらないとも限られないだけに、一日も早い対策が必要だ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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