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アマゾンがドローン活用のホームセキュリティー構想

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
写真出典:Amazon.com

 米アマゾン・ドット・コムは今年6月、マシンラーニング、オートメーション、ロボット、宇宙に関するカンファレンス「MARS」を開催し、完全自動運転で飛行する宅配用ドローン(小型無人機)の新型機を披露した。

宅配用ドローンの往復路で監視

 自社開発したコンピュータ・ビジョン技術とマシンラーニングアルゴリズムを用い、さまざまな条件下の障害物を検知し、回避するというものだ。

 すでにFAA(米連邦航空局)から航空運送業者の認可を受けており、米国で宅配サービスを始める予定である。ドローンは約2.3kgまでの荷物を運び、最長24kmの飛行が可能。顧客宅の庭に30分以内で商品を届ける。

 しかし、このほど公開された特許資料によると同社は近い将来、こうした宅配ドローンを使って、ホームセキュリティーサービスを提供できるようになると考えているようだ。

不審な動きを発見して通報

 まもなく、ドローンで商品を運ぶことが当たり前の時代になると同社はみている。

 顧客宅に荷物を届けるドローンと物流拠点に戻るドローンが空を行き交う中、それらにカメラやさまざなセンサーを搭載すれば、顧客宅を見守ることができ、宅配を有効活用できるという(暴風雨の際は飛行が困難と思われるが)。

 建物や敷地の上空を飛行する際、不審な動きや異常をカメラで捉え、顧客や警察、セキュリティー会社、消防署などに通報するといったサービスが考えられるとしている。

 収集したデータを分析することで、例えば、日中開いたままになっているガレージドアや壊された窓ガラス、火災、落書き被害といったことを発見できるという。

 アマゾンによると、顧客の敷地内に設置するカメラは視点が固定されていたり、可動式であっても視界が限定されていたりする。侵入者によって動作を止められたり、破壊されたりするといった弱点もあるという。

プライバシー侵害への懸念

 アマゾンは、プライバシー侵害の問題にも自社開発の技術で対処するとしている。今回同社は、「ジオ・フェンス」と呼ぶ仮想境界線の技術に関する特許を取得した。

 監視対象の映像部分と対象外の部分をこの技術で分離する。対象外の映像データは消去したり、ぼかしたりすることができるという。この話題について伝えている米公共ラジオ局NPRによると、アマゾンの広報担当者であるジョン・タグル氏は次のようにコメントしている。

 「この技術について、ひそかに個人宅を監視したり、許可なしでデータを収集したりするものだと言う人がいるが、事実は異なる」。同氏によると、アマゾンは特許を取得したばかりで、この技術を製品化するには、数年の月日がかかる。「製品化の際には顧客から依頼された敷地や建物だけを見守る完全なオプトインサービスになる」と、同氏は説明している。

  • (このコラムは「JBpress」2019年6月25日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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