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15歳少女との性交容疑で逮捕の男 「15か16か分からなかった」と弁解のワケ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

 SNSで知り合った15歳の少女と昨年10月と11月に新潟市内のホテルで性交に及んだとして、23歳の会社員の男が不同意性交等罪で逮捕された。「15か16か分からなかった」と弁解しているという。どちらでも同じではないかと思うかもしれないが、法的には重要な意味がある。

性交同意年齢は16歳以上

 すなわち、昨年7月に施行された改正刑法では、不同意性交等罪が導入され、性交同意年齢もそれまでの13歳以上から16歳以上に引き上げられた。ただし、同年代の相手との関係まで一律で処罰するのは行き過ぎであり、被害者が13~15歳であれば、加害者が5歳以上年上の場合に限って処罰される。例えば、23歳が15歳と性交に及ぶと、たとえ暴行や脅迫などを用いておらず、完全に同意の上であってもアウトだ。

 もっとも、故意犯だから、相手の年齢に対する認識が必要となる。未必的なものでも構わないものの、16歳未満だと分かっていたという事実が認定できなければ、不同意性交等罪に問うことはできない。

 したがって、男の「15か16か分からなかった」という弁解が「16歳の可能性もあるかもしれないと思っていた」という意味であれば、未必的な認識ありということになる。「15歳だとは断定できず、むしろ16歳だと思っていた」という意味であれば、2人が知り合った経緯や具体的なやりとり、少女の風ぼうや当時の服装、年齢に関する説明や確認の状況などについて捜査を尽くし、その弁解の是非を見極める必要がある。

無罪放免にはならない

 とはいえ、捜査の結果、16歳未満だという認識まで認定できなかったからといって、男が無罪放免になるわけではない。金銭などの対価の支払いやその約束がなく、単なる行きずりの遊びであり、16歳だと思っていたということなら、青少年健全育成条例が規制する「みだらな性行為」にあたるとして、条例違反で処罰されるだけだ。

 それでも、刑法の不同意性交等罪が5年以上20年以下の懲役と厳しく、罰金刑がないのに比べると、新潟県の場合は格段に軽い。最高で懲役2年にとどまり、100万円以下の罰金刑もあるから、略式起訴されて罰金で終わるという選択肢もあり得るからだ。

 もし「援助交際」や「パパ活」といった名目で金銭を支払うなどしており、児童ポルノ禁止法が規制する児童買春に当たるとしても、最高で懲役5年である一方、300万円以下の罰金刑があるから、やはり罰金で済む可能性がある。このように、逮捕された男にとっては、少女の年齢に対する認識が運命を大きく左右することになる。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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