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新宿タワマン女性刺殺事件 男のトレーナーに書かれていた「トメ」の意味は?

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

 新宿タワマン女性刺殺事件では、男が送検時に着ていたグレーのトレーナーに「トメ」と書かれていたことにも注目が集まっている。

服装は自由だが…

 被疑者には無罪の推定が働いており、警察の留置施設では基本的に服装は自由だ。ただし、自殺防止の観点からベルトやネクタイ、ひも類はNGだし、金具付きもNGであるなど、細かなルールがある。

 前科が多数あって逮捕慣れしており、逮捕状が出ていることを知って観念し、自ら警察署に出頭するような者だと、初めから数日分の衣類、それも留置施設でOKなものだけを選び、手提げ袋に入れて持参している。

 逮捕後、家族らが衣類を差し入れてくれれば、これを着て過ごすことも可能だ。もっとも、今回の男のように、事件を起こしてすぐに現行犯逮捕された場合だと、そのときに着ていた衣類しかない。家族らの差し入れがなかったり、間に合わなければ、着替えがないわけだ。

「官物」が貸与される

 そこで、警察の留置施設では、無難な色のトレーナーやスウェット、Tシャツ、シャツ、パンツなどを「官物」として準備しており、着替えがない者に貸し与えている。

 ただし、ごくありふれた衣類なので、彼らの「私物」と区別するため、留置場の「留」にちなんで「留」や「トメ」と手書きされている。警察署によっては「tome」とか「T」などと書かれていることもある。今回の男もこのパターンだったというわけだ。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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