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【インタビュー】春フェスで大躍進、Bialystocks「頬杖」を紐解くことでみえてきた時代性

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
photo by Bialystocks

今春、『JAPAN JAM 2023』(千葉)、『VIVA LA ROCK 2023』(さいたま)、『J-WAVE M.A.P.S.』(六本木)など数々の春フェスへの出演を経てライブシーンでも大躍進中のBialystocks(ビアリストックス)。ボーカル 甫木元空(ホキモト ソラ)とキーボーディスト 菊池剛(キクチ ゴウ)による独創性高い2人組バンドだ。

ソウルフルで伸びやかな歌声のフォーキーで温かみのあるメロディー、ジャズをベースとしながらもジャンルを自由に横断する普遍的かつ先鋭性を併せ持つハイブリッドな音楽性は独自の存在感を解き放つ。現在、ライオン株式会社『ソフラン エアリス』CM書き下ろしソングとしてお茶の間に流れている「頬杖」では、やわらかな世界観を醸し出す春 → 初夏めいたポップセンスが素晴らしい。

ポップミュージックとは時代を映し出す鏡のような存在であり、時に時代のカナリアとして先んじて空気感を体現する。そんな、令和時代のエッジーなポップクリエイターであるBialystocksの“いまの気分”をインタビューで探ってみた。

●どこか空想めいた春のボーっとした感じ

——「頬杖」は優しいメロディー、世界観が心にホンワカとした暖かさを与えてくれました。どんなきっかけで生まれた曲なのですか?

菊池剛(Key):CMへの書き下ろし曲なので、テンション感のイメージの指定がきっかけとしてありました。

甫木元空(Vo):映像が先にあったので先方のイメージは明確だったと思います。なのですが、具体的な要求はなく任せていただきました。逆に映像に合いすぎてもなって思っていて。

菊池:先方もおっしゃられていました。はじめに、弾き語りのデモ段階から甫木元の元気なギターフレーズがあって。

甫木元:軸になっているんですけど、元気すぎないけど爽やかな感じというビート感を大事にしました。菊池が構成など頑張ってくれてメロディーを整理して作っていきました。

——Bialystocksのサウンドって、成分が謎めいているといいますか、魔法めいた要素がポイントなのであまり詳しく取材で聞きすぎるのもなんだなと思いつつも、でも曲の成り立ちを伺っていくのは面白そうですね。「頬杖」は、イヤホンで聴くと特になんですが、歌声が左右開いて聴こえるんですね。そこに印象的なコーラスがあり、ハモるように軸となるベースラインが存在するという。リズムが真ん中から聴こえてくる感じ、ミックス具合をとてもこだわられていますよね?

菊池:普段より、ミックスの方向性から考えていきましたね。歌の配置を決めてから楽器を付けていきました。

●部屋の中からその風景が早送りで変わっていく様というか

——冒頭に、よく聴かないとスルーしてしまうかもなのですが、不思議な生活音? ノイズが入っているんですよ。

甫木元:ああ、クシャクシャっていう(苦笑)。

菊池:うちの部屋の隅にマイクを立てて、キットカットの袋があって。それです(苦笑)。あと、木の棒をテーブルにすりつけたりしました。最初、現実めいた世界から空想な世界へ戻っていく流れを作ってみたかったんです。春のうつつ感というか。

——ああ、なるほどね。楽器だけではない、音像の自由度高い表現という。あと、歌詞で気になったフレーズが“心の四隅に何度も触れて”という部分。これは、作家フランソワーズ・サガンの未完の小説『Four Corners of the Heart(「心の四隅」を意味)』からとられたもの? ……あれっ、考察しすぎ?

甫木元:……そういう風に言いたいんですけどねえ(苦笑)。そんなわけでもなく、絵も写真も映画もフレームがあるじゃないですか? 自分なりのフレームって誰もが持っていて。心って本来は形のないものなんですけど、今回は心象風景を窓ということにして四隅という表現でたとえてみました。人はそれぞれ見ているものってバラバラじゃないですか? それぞれが窓を作って、風景を切り取っているんですよ。その景色は寄っていたり、引いていたりすると思うんですけどね。

●部屋の中に視点はあるんですけど、部屋の中から散歩したり出かけたりする空想をしているというか

——内省的な歌詞の世界観な感覚でありつつも、春めいたイメージを漂わせるサウンド感が絶妙なテンションを生み出しますよね。外に出かけているかのような。それが窓から見える景色の移り変わりというか。まるで電車のガタンゴトンというリズムともシンクロするように感じたりもしました。

甫木元:部屋の中に視点はあるんですけど、部屋の中から散歩したり出かけたりする空想をしているというか。それこそ夢の中だったり夢うつつな。現実世界では普通の日常が起きているんですけど、どこか空想めいた春のボーっとした感じ? それを表現できたらと思っていました。

——なるほどねえ。それはよくわかります。ちなみに、今春から初夏にかけてフェス出演が増えていますよね。ライブでやる際はどんなイメージを? Bialystocksは作品とライブでアレンジに変化が生まれるのも楽しみなポイントで。

菊池:ありがとうございます。そうなんですよ、そのままではライブで演奏できないサウンドなので。ライブを楽しみにしていて欲しいですね。

——そこが、2人組として作品を創作され、サポートを入れて6人編成での生バンドスタイルで演奏されるという、リスナー的にライブが楽しみになるポイントでもあるんですよ。今年は6月11日から全国ワンマンツアー『Bialystocks Tour 2023』もはじまっていきますよね?

甫木元:お客さんがライブにたくさん来てくれるので、頑張らないとなって。

——2月に行われた、恵比寿リキッドルームでの『Bialystocks ”Quicksand” Tour 2023』公演はチケット発売当初からソールドアウトで、しかも超満員でしたもんね。

●どんどん自分たちとしても変化しながら変わっていきたい

甫木元:僕たち、わかりやすい目標を掲げてバンドをはじめていないので。どこまで続けていけるのか、ライブをどうやっていくべきかを模索しているところなんです。とりあえず今回、全国ツアーという目標ができて、少しずつ広げていければと思っています。

——傑作として名高いフルアルバム『Quicksand』も作られ、「頬杖」というお茶の間で流れたCMソングというポップチューンも携え、今夏ツアーや『SUMMER SONIC 2023』への出演も控えているという。良い状況ですよね。

菊池:あまり、先々のことについて話すことがない2人なんです……(苦笑)。

甫木元:ははは、それ言っちゃうと全部終わってしまうでしょ(笑)。

——ああ(苦笑)。でも、それが作品性も含め、Bialystocksらしさな感じがしますね。

甫木元:図らずも、ライブハウスと、少し風変わりなキネマ倶楽部みたいな場所を行ったり来たりできているのがバンドとしていいなと思っています。どんどん自分たちとしても変化しながら変わっていきたいですね。

●Spotifyとかの、インディーのプレイリストはよく聴いています

——ちなみに、自分たちがシンパシーを感じる表現者っていたりするものですか? このミュージックビデオにはやられたなあ、とか負けたくないなとか。答えづらい質問かもしれませんが。

菊池:う〜ん、います?

甫木元:その時々に流行っている映像は観ています。海外の作品が多いかな。年が近いと、負けたくないなっては思います。すごいなあ、というか。

——具体的には?

甫木元:最初のアルバムを菊池家で作っていた時は、レックス・オレンジ・カウンティの映像とか観たりしてましたねえ。

——おお、なるほどね。

菊池:う〜ん、あとはビヨンセかな。

——おお、まさかの!

菊池:アメリカの底力みたいのあるじゃないですか? そんな作品を聴いたり観たりすると圧倒されるというか、でも勝ちたいなって思ったりしています。

——アワード、グラミー賞とかアカデミー賞を観ると表現者として燃えますよね?

甫木元:そうですね。すごいなあ、先にやられたあ、とか思うことは普通にいっぱいあったりしますね。

——「頬杖」という曲もなんですけど、Bialystocksって独自の音楽性を築きあげながらも、今の時代感をしっかり打ち出されていますよね。そんなテクスチャーの構築に興味があります。

菊池:レコーディングでのミックスや質感が重要だなと思っています。

——そこで、リファレンスにしている基準、なんてあったりするものですか?

菊池:それこそSpotifyとかの、インディーのプレイリストはよく聴いています。新曲たちですね。

●最近、数年に一度やってくるキャロル・キング・ブーム

——お2人ぞれぞれ、最近お好きなアーティストを伺ってもいいですか? 日常生活でふと聴いた人とか? 再生履歴で最近よく聴いている人とか。

甫木元:最近、数年に一度やってくるキャロル・キング・ブームになっています。あと、ギターで弾き語りをしているのはニック・ドレイク。ロバート・ワイアットやジム・オルークはずっと聴いていますね。

菊池:一番は圧倒的に(フランク)シナトラが好きで。高校生の頃に聴いて、いつの間にか第一位になっていたという。きっかけは、今となっては忘れちゃいました。シナトラが歌っている30年代、40年代の作曲家による曲が好きなんですよね。

——音楽以外で、ここ最近刺激を受けたものってあったりしますか?

甫木元:最近だと東京都写真美術館でやってた、深瀬昌久の写真展『1961-1991 レトロスペクティブ』が良かったですね。ひとりの一生を追っている感じで。この年齢でこんなことをやっているんだなって、眼差しが変わっていく様に感銘を受けました。

菊池:昔は、興味なかったんですけど最近TikTok的な動画、若い方が作っているものがついに面白いなと感じるようになりました。映像表現のアイディアとか新しいなと。たまたま観たものがよくて、その後、オススメで続々と表示されるんですよ。

甫木元:えっ、ダンス動画とか?

菊池:なんでもかな。いろいろあるけど。

——あれ、見せたりしないんだ?

菊池:見せないです(笑)。

甫木元:ははは(苦笑)。でも、海外のTikTokとか観てると編集技術とかすごくって。CG使わずにアイディア重視で、アナログで表現されていたり。逆に、映像の根本の技術に戻っているなと感じたり。カメラワークでね。

●どれかが菊池で、どれかが俺らしいんですけど

——Bialystocksのミュージックビデオもこだわりを感じます。

甫木元:「頬杖」に関しては、ジャケットに登場するキャラクターが歩いている作品ですね。毛があるんですけど、その映像処理が大変で。

菊池:今回はヴィジュアライザー(ライトなMV)的な映像ですね。

甫木元:MVって感じよりも、軽いテイストですね。そういうのがあってもいいかなと。

——なんとなく、絵本『かいじゅうたちのいるところ』的な雰囲気を感じつつ。

甫木元:CG・VFXを作ってくれたアーティスト、a.n.的には、なんとなく家族というイメージがあるらしいんですよ。そして、どれかが菊池で、どれかが俺らしいんですけど。でも、それは本人しか知らないんですよ。

——えっ、そうなんだ。

甫木元:2月開催された恵比寿LIQUIDROOMのワンマンライブ『Bialystocks ”Quicksand” Tour 2023』でVJを務めたのがa.n.で。その時の映像に出ていたキャラクターを使っています。いい意味で軽いものになっていますね。

——そして、今春は多くの春フェスに出演されて、6月から全国ワンマンツアー『Bialystocks Tour 2023』がはじまっていきます。

甫木元:今年はコンスタントにシングルを出しながらライブをやって、制作していきます。レーベル的にも伸び伸びとやらせていただいてます。まずはライブを楽しみにしていてほしいですね!!!

◆Live Information

『Bialystocks 2nd Tour 2023』

6月11日(日) 東京・東京キネマ倶楽部

6月16日(金) 福岡・DRUM Be-1

6月24日(土) 北海道・Bessie Hall

7月1日(土) 愛知・名古屋 CLUB QUATTRO

7月8日(土) 大阪・梅田 CLUB QUATTRO

9月10日(日) 東京・EX THEATER ROPPONGI[追加公演]

◆Bialystocksプロフィール:2019年、ボーカル甫木元空(ホキモト ソラ)監督作品、青山真治プロデュースの映画 「はるねこ」 生演奏上映をきっかけに結成。 2022年11月にメジャー1stアルバム『Quicksand』をPONY CANYON / IRORI Recordsよりリリース。 Vo甫木元空のソウルフルで伸びやかな歌声で歌われるフォーキーで温かみのあるメロディーと、Key菊池剛(キクチ ゴウ)によるジャズをベースに持ちながら自由にジャンルを横断する楽器陣の組み合わせは、普遍的であると同時に先鋭的と評される。 2022年10月には初のワンマンライブ『第一回単独公演 於:大手町三井ホール』を開催。即日ソールドアウトを達成。2023年には初の全国5都市6公演ツアーを開催予定。

https://bialystocks.com

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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