【F1開幕】今年もレッドブル・ホンダが好調!日本国内のF1人気はさらにヒートアップする?
2023年の「F1世界選手権」が3月3日(金)に中東バーレーンのバーレーンGP(3月5日・決勝)で開幕する。今年は最終戦のアブダビGP(11月26日・決勝)まで史上最多の23戦に渡るシーズンだ。さらに第4戦アゼルバイジャンGPなど6つのグランプリで土曜日スプリントレース、日曜日決勝レースの2レース制が設定されるなど、世界的なF1人気上昇に後押しされる形でF1は拡大路線を突き進んでいる。
事前テストでは今年もレッドブル・ホンダが好調
2022年に大幅な技術規定の変更があり、メルセデス無双時代から勢力図が一変したF1だが、今季の変更はごく小規模なものに留まっている。そのため、昨年の流れを踏襲する形となり、勢力図が大きく変わることはないと予想されている。
昨年優勝を飾った「レッドブル」「フェラーリ」「メルセデス」は昨年のドライバーラインナップが継続で、今年もこの3チームがチャンピオンを争うことになるだろう。ただ、事前テストの結果を見るとホンダがパワーユニットを製作する「レッドブル」が昨年以上に勢いを増していると考えられている。
追う側の「フェラーリ」はどうだろうか。昨年様々なミスを連発し、その責任を取る形で指揮官のマッティア・ビノットが辞任し、「アルファロメオ」からフレデリック・バスールがチーム代表として移籍。久しぶりにイタリア人以外の人材が指揮官となり、堅実なチーム運営に定評があるバスールの手腕でフェラーリ復活なるか、という点が今季の最も興味深いところだ。
一方で昨年はポーパシング対策にシーズン前半を費やし、王者ルイス・ハミルトンが未勝利に終わった「メルセデス」は昨年の不調をどこまで挽回してくるか注目だ。僅か3日間しかなかった事前テストではライバルチームとの勢力図変化を読み取るのは難しいものの、ジョージ・ラッセルの非常にポジティブなコメントからも分かる通り、シーズン開幕前の準備は昨年とは比べ物にならない。ただ、7度のワールドチャンピオン、ルイス・ハミルトンがモチベーションを保てるだけのポテンシャルを今季のマシンW14が有しているかどうか、開幕戦で明らかになる。
伏兵はアストンマーティン?角田は勝負の3年目
3強にはドライバーラインナップの変化がなかったものの、セバスチャン・ベッテルの引退により、チャンピオン経験者のフェルナンド・アロンソがアルピーヌから「アストンマーティン」へと移籍したことは今季の最大の変化だろう。今シーズン中に42歳になるアロンソだが、昨年の粘り強いレース運びで証明されているとおり、今も史上最強のF1ドライバーと呼ばれたスキルは衰えていない。
「アストンマーティン」はレーシングポイントから体制変更となって3年目となるが、今季のアストンマーティンAMR23はサイドポッドのデザインを大幅改良し、高いポテンシャルを有していると考えられている。2010年代に「レッドブル」躍進の立役者となった空力エンジニアのダン・ファローズが手がけたAMR23とアロンソの速さが開幕戦でどこまで輝くか大いに注目だ。「アストンマーティン」が3強に割って入る存在になれば、今季のF1は更なる混戦になり、面白いシーズンとなるだろう。
そして、日本のF1ファンは唯一の日本人F1ドライバー、角田裕毅の活躍に大いに期待を寄せることになる。今季もホンダ製パワーユニットを使う「アルファタウリ」に残留した角田だが、3年目となる今季はお兄ちゃん的存在だった同僚のピエール・ガスリーがアルピーヌに移籍したことで新しいチームメイトを迎えることになった。F1経験値としては先輩格となってシーズンを戦うことになる角田だが、新チームメイトは元メルセデスのテストドライバーのニック・デ・フリースだ。
昨年、ウィリアムズからのスポット参戦でいきなり9位入賞を果たすという衝撃F1デビューを飾ったデ・フリースはガスリー以上に角田の最大のライバルになると見られている。事前テストでは総合6番手のタイムをマークした角田だが、今季の「アルファタウリ」のマシンが中団争いでレースができるのか、あるいは後方でのレースを強いられることになるのか現時点は分からない。
ただ、角田にはマシンのポテンシャル以上を引き出して、結果を残し、そして秋の日本グランプリでは昨年叶わなかった入賞(ポイント獲得)を期待したいところだ。
日本でも再びF1ブーム?世界的な人気にも拍車
昨年からルールが大幅に変わっていないため、比較的静かに開幕する印象のF1だが、今季は昨年以上の大混戦が期待されており、シーズンが幕を開けると週末のたびにF1の話題がSNSで発信されることになるだろう。
フジテレビの地上波放送が無くなって早や12年、そしてBSでの無料放送が消滅してから8年。この状況下においては信じ難いことかもしれないが、日本国内でもF1はジワジワと人気を回復してきている。
昨年3年ぶりに開催された「F1日本グランプリ」(鈴鹿サーキット)のチケットは大半のチケットが発売直後にソールドアウトになった。久しぶりの開催ということと、コロナ禍で需要予測がしづらくチケット枚数も限られていたということもあるが、満杯の鈴鹿サーキットには決勝日だけで9万4000人のファンが集まった。
当日、グランドスタンドでアナウンサーとして「初めて鈴鹿に来たという方、手をあげてください」と満員のスタンドに問いかけたところ、手をあげた初来場の観客は目分量で3割程度居たのだ。しかも20代〜30代と見られる若い世代の観客が多かったのだ。グランドスタンドは一人6万円以上の発売額で発売日に大半が売り切れになっていたものだが、90年代のブーム期世代(40代〜50代)だけでなく、若い世代のカップルなどが多かったことは心底驚いた。鈴鹿サーキットの関係者によると実際にデータ上も若い世代の来場者は増加していたという。
若い世代が増えた理由として考えられるのは、2000年代にトヨタ、ホンダ、ブリヂストンなど日本企業や佐藤琢磨が表彰台をかけて活躍した第二期F1ブームの世代の子供たちが自立し、自分たちでチケットを購入して観戦するようになったということだろう。実際に親の影響という若いファンは多い。
そして新しい層のF1ファンも世界的に増加中だ。その大きなムーブメントの牽引役が「Nerflix」で配信されるF1ドキュメンタリー「Formula 1:栄光のグランプリ」だ。ドライバーだけでなくチーム首脳らが作るドラマチックな演出は非常に見やすく、初心者にも感情移入しやすい作品だ。このコンテンツにより、かつてはF1の人気が全く無かったアメリカで今年はラスベガスGPを含む3回のグランプリが開催されることになっており、派手で華やかなイベント演出も若者や新規のファンの心を捉えている。
「Nerflix」の人間模様にフォーカスした演出はかつてのフジテレビが地上波で放送していた内容に近いと感じる。さらにレッドブル・ホンダの活躍という応援対象があることはかつてのマクラーレン・ホンダが活躍したF1ブーム期(80年代〜90年代)と同じ状況であり、日本人ドライバー角田裕毅という若者が世界の猛者達の中で奮闘する姿も若い世代の心を掴んでいるのだ。
最近、まだチケット詳細の発表が行われていないのに、プライベートの友人たちから私のもとに「今年のF1チケット」に関する問い合わせが相次いでいる。何とかならないかという問いに対しては「チケット争奪戦に勝つしかない」と丁重にお断りせざるを得ないのが現実だ。数年前では考えられなかったことである。
いよいよ開幕する2023年のF1シーズン。今季が昨年以上にドラマティックなレースになれば、かつてとは少し違う、新しいF1ブームが日本にもやってくるのではないかと読んでいる。