日立製作所が2万人増員する「コンサルティング営業」とは何をする人?
5月9日(月)、日立製作所は、2018年度をめどに、営業を2万人増やすと各紙が一斉に報じました。顧客企業の経営課題の解決を目指す、営業のコンサルティングをサービスの主力に据えるとのことです。「17年度上期までに国内2万人を教育し、国内外の営業人員にコンサルティング型の営業手法を浸透させる」ともあります。前職が日立製作所で、現在営業のコンサルティングをしている私自身は、本記事に強い関心を抱きました。
そもそも「コンサルティング」とは何か? について言葉の定義を整理したいと思います。コンサルティングとは、「あるべき姿」と「現状」とのギャップ(問題)を埋めるための実行支援をすることです。そのためには、4つのスキルが必要です。
● 顧客企業の「あるべき姿」とは何か? いつまでにどのような姿になることを期待しているのか、数値的に正しく捉える
● 顧客企業の「現状」とは何か? 「あるべき姿」で提示された項目の現状を、数値的に正しく捉える
● 「あるべき姿」と「現状」とのギャップ(=問題)を解決するための解決策を提示する
● 上記の問題が解決するまで実行支援をする
たとえば、体重100キロの人が半年間で80キロまで落としたい、そしてリバウンドしないような体にしたい、というのであれば、20キロ減量することのみならず、現在の生活習慣を変えるための解決策の提示と、その実行支援をすること。これがコンサルティングです。
業務効率が悪く、残業が平均50時間ある現状を、平均25時間まで減らしたいと顧客企業が言うのであれば、その問題がどこにあるのかを特定し、解決策を提示して、その実行支援をすることがコンサルティングです。
したがって、当然のことながら「何かを販売する」行為がコンサルティングではありません。そして何より、コンサルティング自体にはとても価値があり、何も商品を販売しなくてもコンサルティングそのもので報酬をもらえるサービスを「コンサルティングサービス」と呼びます。
上記の例からすると、体重100キロの人が半年間で80キロまで落としたいという人に、ダイエット器具や薬を販売する行為をコンサルティングとは呼びません。業務を効率化したい企業に、残業を減らせるような情報システムを売る行為をコンサルティングなどと呼ばないのです。これらはいずれも「ソリューション営業」と呼ばれるものです。
現在、IoT(モノのインターネット化)技術が台頭し、製造業のサービス化が加速しています。欧米の製造メーカーは、単なる製造機器の販売のみならず、ネットワークを活用し、AI(人工知能)やビッグデータを駆使して、さらに付加価値の高いサービスを顧客企業に提供する動きをしています。今回の日立の取り組み(2万人のコンサルティング営業の増員)は、この流れに乗ったものです。
とはいえ顧客企業の経営課題を解決する「コンサルティング営業」という表現は大仰で、誤解を招く言い方です。「物売り」に留まらず、もっとデータを駆使してさらに付加価値の高いサービスを提案します、と言っているだけのこと。表現として適切なのは「提案営業」「ソリューション営業」でしょう。