企業が就活で青田買いするのは大学教育が必要とされていないから
いよいよ経団連が就活ルールの廃止を正式に決定しました。2021年卒業予定者も現行の6月選考解禁、10月内定解禁は維持されるものの、就活のルール自体は政府主導で新たに作られることになります。
【参考リンク】新卒一括採用、転機に 経団連が就活ルール廃止発表
大学側は就活の早期化、いわゆる“青田買い”を危惧しているため、就活の時期に関して従来よりも強い規制を要求してくるものと思われます。
筆者自身、授業のある平日に選考や説明会を実施しない等の規制はあってよいと考えます。ただ、企業の選考活動の時期や方法については基本的には自由化すべきでしょう。なぜなら、それは大学教育に対する市場の評価そのものだからです。
規制しても大学の価値が上がるわけではない
最近は徐々に変わりつつありますが、長年、企業は採用に際して、理工系の技術職以外は大学の成績証明書の提示を要求してきませんでした。大学教育をほとんど評価してこなかったためです。大学1年生にも内定を出しているファーストリテイリングなどは、大学教育を全く認めていないと言えるでしょう。
就活時期を制限しろというのは「自分たちが相手にされてないから規制で無視できないようにしてほしい」と言っているようなものでお門違いも甚だしいですね。まずは自力で企業から必要とされるよう努力するのが筋でしょう。
見逃せない経団連の姿勢の変化
とはいえ、企業の側にも変化の兆しは現れています。
【参考リンク】採用時に学業成果重視しなかった企業側にも責任 大学教育で経団連会長
従来、日本企業が大学教育の中身を無視し続けてきたのは「真っ白な状態の22歳の新人を採用して自社カラーに一から染め上げる」ためでした。終身雇用である以上、内部で育成した方が都合が良かったためです。
その結果として大学をないがしろにしてきたと財界トップが認めたことは、少なくとも今後は同じようには振舞わないと示唆しているわけです。大学教育への強い期待が行間ににじみ出ているのがわかります。
新たなルールについてはこれから政府と大学で議論される予定ですが、就活時期の制限に注力するのではなく、インターンを充実させたり人材交流を通じて産学のギャップを埋めるための交渉の場とするのが望ましいというのが筆者のスタンスです。