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子どもたちの学びの機会が整備されたが、運用面で大人が積極的にかかわっていきたい

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長
子どもたちの学びを支える
子どもたちの学びを支える
子どもたちの学びを支える

今年度から「生活困窮者自立支援制度」がスタートした。支援事業の柱は相談窓口の設置に留まっているが、細目のひとつに子どもたちの学びの機会を整備するものがある。

○子どもの学習や進学について、子ども、保護者を支援します

子どもの学習支援をはじめ、日常的な生活習慣、仲間と出会い活動ができる居場所づくり、進学に関する支援、高校中退の防止支援などをします。また、子どもの進学について保護者に助言するなど、子どもと保護者の双方に対して必要な支援を行います

出典:政府広報オンライン

制度運用は各自治体に任されているため、必ずしも子どもたちへの学習支援を行うわけではない。しかし、生活保護受給家庭ではなく、生活困窮家庭の子どもたち(自治体によって対象条件は異なる)に対して、学習機会の提供や環境を整備が半歩でも一歩でも進むことは応援したい。

しかしながら、生活保護受給家庭の子どもたちは、行政の福祉部門のケースワーカーが世帯を担当するなかでアウトリーチすることが枠組みとして可能であるが、生活困窮家庭となると、地域のどこの誰まで把握することは不可能だ。

場と機会が作られようとも、子どもたち自身がそもそもその存在を知ることは難しく、さまざまな理由で苦しい状況にある家庭にその責任を求めることが、運用面で適切であるとは考えづらい。「支援の場は作ったけれども子どもたちが利用しない。ゆえにニーズがないのではないか」という判断は子ども支援に関わらず各地で起こってきた。さらに、場を作ったのに利用しないのは自己責任であり、不必要ではないかと単年または数年で事業が終了するケースもある。

その意味で、学習や進学、学校を含む日常の生活を支援する場が消失しないため、大人が積極的にかかわっていくべきだ。具体的には、子どもたちに一番近い存在として、家族や親族、学校関係者が支援事業の存在と利用条件、どのような支援がなされているのかを知ることが重要であるが、学校通達や自治体広報誌だけに頼るのではなく、彼らと出会う大人が、日常会話のなかで「子どもたちのための学習の場ができたみたいだね」とその情報をインプットすることだろう。

それ以外にも、子どもたちとの接点となる町内会のイベント(夏祭りなど)、放課後の習い事やサークル活動などでも、情報を直接子どもたちに示唆することが可能だ。実際に同様の環境にある子どもたちへの学習支援を行っていても、当該事業で対象となる子どもたちへダイレクトに情報を、一括で広く知らせる決定打は見つかっていない。ただ、学習の場に通う子どもたちが、その場を評価する場合、友達を誘って連れてくるケースは多々ある。その際、利用の諸条件をどこまで柔軟に判断することができるかは、自治体担当者次第となるため、柔軟な対応、判断を期待したい。

まずは、私たち大人が所属する自治体に、子どもたちの学習支援などの事業を行っているのか。行う予定があるのか。自治体が直接行うのか、民間に委託しているのかを調べ、子どもたちが利用する場合のプロセスを把握する必要がある。かなり面倒に感じると思うが、大人ですら面倒なことを、対象となる子どもたちが自分で行うのは不可能なため、やはり、運用面で大人が積極的にかかわっていかなければならない。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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