子どもたちの学びの機会が整備されたが、運用面で大人が積極的にかかわっていきたい
今年度から「生活困窮者自立支援制度」がスタートした。支援事業の柱は相談窓口の設置に留まっているが、細目のひとつに子どもたちの学びの機会を整備するものがある。
制度運用は各自治体に任されているため、必ずしも子どもたちへの学習支援を行うわけではない。しかし、生活保護受給家庭ではなく、生活困窮家庭の子どもたち(自治体によって対象条件は異なる)に対して、学習機会の提供や環境を整備が半歩でも一歩でも進むことは応援したい。
しかしながら、生活保護受給家庭の子どもたちは、行政の福祉部門のケースワーカーが世帯を担当するなかでアウトリーチすることが枠組みとして可能であるが、生活困窮家庭となると、地域のどこの誰まで把握することは不可能だ。
場と機会が作られようとも、子どもたち自身がそもそもその存在を知ることは難しく、さまざまな理由で苦しい状況にある家庭にその責任を求めることが、運用面で適切であるとは考えづらい。「支援の場は作ったけれども子どもたちが利用しない。ゆえにニーズがないのではないか」という判断は子ども支援に関わらず各地で起こってきた。さらに、場を作ったのに利用しないのは自己責任であり、不必要ではないかと単年または数年で事業が終了するケースもある。
その意味で、学習や進学、学校を含む日常の生活を支援する場が消失しないため、大人が積極的にかかわっていくべきだ。具体的には、子どもたちに一番近い存在として、家族や親族、学校関係者が支援事業の存在と利用条件、どのような支援がなされているのかを知ることが重要であるが、学校通達や自治体広報誌だけに頼るのではなく、彼らと出会う大人が、日常会話のなかで「子どもたちのための学習の場ができたみたいだね」とその情報をインプットすることだろう。
それ以外にも、子どもたちとの接点となる町内会のイベント(夏祭りなど)、放課後の習い事やサークル活動などでも、情報を直接子どもたちに示唆することが可能だ。実際に同様の環境にある子どもたちへの学習支援を行っていても、当該事業で対象となる子どもたちへダイレクトに情報を、一括で広く知らせる決定打は見つかっていない。ただ、学習の場に通う子どもたちが、その場を評価する場合、友達を誘って連れてくるケースは多々ある。その際、利用の諸条件をどこまで柔軟に判断することができるかは、自治体担当者次第となるため、柔軟な対応、判断を期待したい。
まずは、私たち大人が所属する自治体に、子どもたちの学習支援などの事業を行っているのか。行う予定があるのか。自治体が直接行うのか、民間に委託しているのかを調べ、子どもたちが利用する場合のプロセスを把握する必要がある。かなり面倒に感じると思うが、大人ですら面倒なことを、対象となる子どもたちが自分で行うのは不可能なため、やはり、運用面で大人が積極的にかかわっていかなければならない。