鈴懸さん自慢のこし餡が詰まった「麩乃餅」は、笹の香りと潤いを宿した初夏の味覚
福岡県を中心にお店を展開なさる和菓子屋「鈴懸」さん。創業1923年、約100年の時を経た今、九州のみならず都内でも絶大な人気を誇るお店です。
福岡県のほかには、愛知県はJR名古屋高島屋、都内では伊勢丹新宿店と日比谷ミッドタウンと都心に出店されており、遠方から和菓子を目当てに訪れる方々もいらっしゃるほど。
和の趣を踏襲しつつ、どこかモダンでシティライクな店構えも人気の理由のひとつかもしれません。
その鈴懸さんに、初夏の訪れを知らせてくれる和菓子「麩乃餅」が登場したのでご紹介。
麩乃餅、もしくは麩饅頭とよばれるこのお菓子は、京都などの関西を中心にお麩屋さんが作り始めたという説もあります。餅は餅屋、と申しますように、麩饅頭はお麩屋、というところでしょうか。
お店によって強力粉を捏ねて洗ってグルテンを取り出すところもあれば、生麩を擂ってなめらかにするところも様々。
精彩を放つ青さから、清涼感を覚える大ぶりの笹の葉。その笹の葉がぴしっと角をつけて大切に包んでいるのが、落ち着いた乳白色の麩乃餅。お麩特有のまろやかな香りに絡み合う笹の葉の香りに食欲が刺激されます。
ほんの少し水にくぐらせて艶を取り戻した麩乃餅は、つるんと口の中に飛び込み、ほんのわずかにしこしことしたコシを感じつつも柔らかく解けていきます。滴るほどの水分を纏ってもなお、その姿に惹かれてしまうのが同じ小麦粉を使用した上用饅頭とは異なるのも面白い。
うっすらとしていながらも、生麩の味わいが凝縮された皮。その中に包まれているのが、これもまた水分が滴るのではないかというほど潤いを湛えたこし餡。
鈴懸さんの代名詞のひとつともいえるこし餡は、皮をむいた小豆を茹でて炊き上げるという、独特かつ手間のかかる製法。そのため、一般的なこし餡よりも薄墨のような梅鼠のような上品な色合い。あくまでお麩の旨味を引き立たせるような、それでいてこし餡の良さも引き立っているような、互いの長所がいかんなく発揮された一品。
喉を鳴らして呑み込めてしまうほど柔らかく仕上げられているこし餡は甘さを控えた仕様で、お麩の旨味と笹の香りを鼻と口で大満喫致しました。
餅が笹から離れにくい場合は、一度思い切ってお水にくぐらせてから召し上がってくださいね。軽く冷蔵庫で冷やしてからいただくのも、じめじめと蒸す季節にはぴったりです。