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「みんな平壌開催を望んでいた」北朝鮮代表が中立地ラオスで前日練習…日本戦出場のハン・グァンソンの姿も

金明昱スポーツライター
3月の日本戦で得点チャンスを作り出していたFWチョン・イルグァン(筆者撮影)

 サッカー朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)代表が5日、試合会場のニュー・ラオス・ナショナルスタジアム(ラオス新国立競技場)で北中米W杯アジア2次予選のシリア戦の前日練習を行った。

 6月のラオスは雨季のため、曇り空が多く、時折雨がぱらつくなかでの練習となった。気温は30度前後で湿度も高く、東南アジア特有のジメっとした蒸し暑さがある。

 現地時間19時から冒頭約15分間を報道陣に公開したが、カメラを持って取材しているのは筆者1人だった。スタジアムの芝のコンディションは良好。選手たちは声を出し合って、ボール回しや走り込みで体をほぐしていた。

 選手の顔ぶれを確認したが、3月の日本戦のため来日したメンバーがほとんど。元欧州組のFWハン・グァンソンやFWチョン・イルグァンも健在で、しっかりと体を動かしていた。一方、日本戦で代表デビューした在日コリアンのFC岐阜MF文仁柱は今回、メンバー入りしていない。

「日本戦からメンバーを少し入れ替えた」

 今回、北朝鮮とシリアの前日会見が、筆者1人だったという理由で中止となり、監督にチームの準備状況を聞けないままで終わっていた。ただ、北朝鮮側は15分間の練習公開のあと、帯同通訳のキム・チュンジン氏がチーム状況について教えてくれた。

「まずシリア戦に向けての準備ですが、昨年11月に0-1で敗れた相手なので、何度も試合のビデオを見ながら分析して対策を練ってきました。そのうえで、メンバーも日本戦から少し入れ替えました」

 調子のいい若手を入れることで、チームを活性化させるのが目的だが、代表内でのポジション争いも激しくなってきているのだろう。

6日に行われる北朝鮮対シリアのW杯アジア2次予選。ラオス新国立競技場にて(筆者撮影)
6日に行われる北朝鮮対シリアのW杯アジア2次予選。ラオス新国立競技場にて(筆者撮影)

あとがない北朝鮮…引き分けでも2次予選敗退

 さらにシリアとミャンマーの2連戦が、ホームの平壌開催でなくなったことについてはこう話してくれた。

「チームのみんなが平壌開催を望んでいました。それはホームでたくさんの人たちの声援を受けて試合をすることが当然、力になるし有利に働くからです。私たちも何度も協議を重ねましたが、残念ながら最終的には中立地となりました。この慣れない蒸し暑さに体力を奪われるのが心配なところですが、それでも両チームとも条件は同じ。試合をすることに変わりはないので、とにかく絶対に勝たなければならないシリア戦に全力を尽くします」

 北朝鮮は今回、シリアに引き分けても、11日のミャンマー戦(ラオスで開催)を待たずに2次予選での敗退が決まる。最終予選進出のためにはシリアとミャンマーに勝つのが絶対条件。だからこそ選手の覚悟も相当なものだという。

「練習を見てもお分かりの通り、みんな気合いと覚悟があります。みんなで最終予選に進もうと一丸となっているので、明日の試合は楽しみにしていてください」

 6日の20時(日本時間22時)、北朝鮮はシリアとの大一番を迎える。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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