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急須を使わなくなった日本人、新たな選択肢、ボトル茶

池田恵里フードジャーナリスト
ボトル茶 丸七製茶株式会社写真提供

お茶を取り巻く環境、減少しつつある生産量 

急須に茶葉を入れて、お茶をいただく。

ごく当たり前と思っていた家庭の風景が変化している。
それは自宅でお茶を淹れる習慣が少なくなりつつあるのだ。

このグラフでもわかるようにリーフ茶が減少している。

リーフ茶とは

ティーバッグではなく、茶葉そのものを使用するお茶をさす。

次第に減少するリーフ茶 農林水産省出典。
次第に減少するリーフ茶 農林水産省出典。

その原因の一つに挙げられるのが、ペットボトル入りのお茶が日常生活に浸透したこと

農林水産省出典。
農林水産省出典。

この図でもわかるように、ペッドボトルの年間支出が増え、一方、リーフ茶を入れなくなってきている。

家庭から急須がなくなっていく。

さらに茶の生産量の51.4%を占める煎茶も減少している。

その原因は、急須を使わなくなってきているのだ。

伝統と現代の交差点:丸七製茶の取り組み

今回、話を伺った創業1907年の丸七製茶株式会社の東京営業所特販部課長奥本桂也さん、

「最近、多くのお客様が急須を使わなくなり、それに伴って煎茶も飲まなくなったのです」
「急須を使わなくなる傾向に、歯止めをかけることは難しいでしょう」

そこで丸七製茶では、急須を使わずに手軽においしい煎茶を楽しめるよう、
ボトル茶の製造に着手したのだ。

「美味しいお茶を淹れるのは難しい。
ボトル茶なら安定した美味しさを提供できます」

2019年から手掛け、今では30種類ものボトル茶が店内に揃えられている。

店内に入ると30種類ものボトル茶が並ぶ(筆者撮影)
店内に入ると30種類ものボトル茶が並ぶ(筆者撮影)

平均価格2000円から高価格だと1万のものまである。

主に外食からのオファーが多いとされる。急須を使った煎茶文化が薄れつつある中で、ボトル茶が注目を集めているのだ。
これは飲食店での新たな選択肢として浸透しつつある。

そしてアルコール離れが進む中で、料理に合わせて楽しむ飲み物として、ボトル茶がアルコールと同等の価値を持つ存在になっている。

実際、多くの飲食店がワインや日本酒のように、料理とのペアリングを考慮して
ボトル茶をメニューに取り入れている。

黒色ボトルのタンニン値が高いお茶はしっかりとした料理に、透明ボトルのタンニン値が低いお茶はさっぱりとした料理に合うとされ、味だけでなく視覚的にも楽しめる文化が生まれつつあるのだ。

掛川/東山やぶきた(筆者撮影)
掛川/東山やぶきた(筆者撮影)

藤枝蔵田さやまかおり(筆者撮影)
藤枝蔵田さやまかおり(筆者撮影)

そこで今回は、「やぶきた牧の原ほうじ茶」を試飲

筆者動画撮影。

ワイングラスに注がれた瞬間からお茶の香りが口に広がる。

この他にも、いろいろなお茶を試飲させていただいたが、それぞれ全く風味、コク、旨味が違う。因みにお茶の香り成分は約400種類あるとされ、いろいろな香りが楽しめるのもお茶の魅力である。

「日本茶AWARD」2024年に日本茶飲料部門 金賞

日本茶AWARDとは

日本茶の新たな価値を見出し、多くの方に多種多様なお茶の美味しさや香りを伝えていきたいと考えている。
そのため、お茶を飲む消費者や多分野のスペシャリストの視点も取り入れ、
出品されたお茶の個性や魅力を引き出す新しい審査法を取り入れている。

今年、2024年度「日本茶アワード」で日本茶飲料部門 金賞を授与されている。

日本茶インストラクター協会 副理事長の木村好成(左)丸七製茶株式会社代表取締役鈴木成彦(中央)特販部課長奥本桂也(右)丸七製茶株式会社写真提供
日本茶インストラクター協会 副理事長の木村好成(左)丸七製茶株式会社代表取締役鈴木成彦(中央)特販部課長奥本桂也(右)丸七製茶株式会社写真提供

丸七製茶株式会社「HIGASHIYAMA」掛川金賞受賞(丸七製茶株式会社写真提供)
丸七製茶株式会社「HIGASHIYAMA」掛川金賞受賞(丸七製茶株式会社写真提供)

海外での需要の高さ

海外の日本茶の人気は高まるばかりで、米国等における日本食ブームの影響、健康志向の高まりから、輸出量はこの10年間で 約2.5倍強に増加している。なかでも輸出先国としては、米国が全体輸出量の約39%を占めるとされ、なかでも抹茶の人気は高く、不足しているほどだ。

新しい選択肢 ボトル茶

日本国内では急須で淹れる伝統的な煎茶文化が衰退しつつあり、ペットボトルのお茶が主流になり、多くの家庭から急須が姿を消していくなか、皮肉なことに、海外で日本茶が注目を集めている。そして国内では、その文化が薄れつつあるのが現状なのだ。

こうした中で、ボトル茶が新たな選択肢として注目されるだろう。
ボトル茶は、急須を使う必要がなく、安定した美味しさを提供することで、
忙しい現代の生活に合った形で日本茶を楽しめる方法として外食から浸透しているのだ。アルコール離れが進む中、ワインや日本酒のように料理に合わせたペアリングの提案が進んでおり、ボトル茶が新たな需要を生み出していくのではないだろうか。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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