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ビジネスと社会貢献の調和:未来を創るライフコーポレーションのナチュラルスーパー業態「ビオラル」

池田恵里フードジャーナリスト
ビオラル1号店の靭店。ライフコーポレーション写真提供

BIO-RAL(ビオラル)、さらなる躍進 2030年、売上400億円を目指して

ライフコーポレーションのナチュラルスーパーBIO-RAL(ビオラル)(以下「ビオラル」)の躍進が目覚ましい。

2016年に業態を立ち上げ、現在のBIO-RAL事業の売り上げは約100億円となっている。

1号店の靭店から、着実に店舗数を増やし、現在、9店舗を展開するほか、ライフのほぼ全店に「ビオラルコーナー」を設置している。

大阪の「うめきた」神戸の「さんちか」にも、来年、2店舗出店

2025年、新店舗の展開

・「ビオラルうめきた店」

2025年3月21日、グラングリーン大阪の南館地下1階にオープン予定。関西最後の一等地とされるロケーションに、関西初のカフェ併設型で出店。

「ビオラルさんちか店」

翌週の3月27日には、神戸三宮の「さんちか1番街」に新店舗がオープン。単独店舗では、靭店を次ぐ規模となる。関西初の惣菜の対面販売も手掛ける。

そこで今回、ライフコーポレーションは、説明会を実施。同社が展開する「ビオラル」事業のこれまでの取り組みや今後の方向性、企業方針、そして来年オープン予定の新店舗について発表し、試食会を行った。

オーガニックを取り巻く日本の環境

日本のオーガニック市場は、2018年度から2022年度まで平均3.1%の成長を遂げ、

2022年市場市場規模は1531億円となっている。

矢野経済研究所出典
矢野経済研究所出典

アメリカでは、オーガニック市場は、近年、著しい成長を遂げており、2021年のデータによれば、アメリカのオーガニック食品の小売売上高は520億ドル(約7兆1429億円)で、果物・野菜が全体の40.2%を占めている(米国農務省(USDA)の報告)。

つまり、アメリカの大きな市場がある一方、日本でのオーガニック市場は、まだまだ成長の余地が伺える。

ライフコーポレーション「ビオラル」は、日本で先駆けたナチュラルスーパー業態

ライフコーポレーションの「ビオラル」は、2016年、社内公募で一人の提案から生まれたナチュラルスーパーである。

現状、ナチュラルスーパーを展開しているのは、大手ではイオン、ライフ社のみである。そしてライフは、先駆けて事業を展開したのだ(イオン2016年6月)。

コンセプトは、この4つから成り立っている。

・オーガニック

・ローカル

・ヘルシー

・サステナビリティ

2020年には、プライベートブランド(以下PB)の「BIO-RAL」の販売も開始している。

ビオラル事業について、何故、今、ナチュラルスーパーなのか

海野紀明執行役員(BIO-RAL事業本部長)は、「ナチュラルスーパーとして、日本一を目指す」と述べ、ビオラル事業の拡大に積極的だ。2030年度までに売上高を現在の約100億円から400億円に、店舗数を50店舗に増やす計画とのこと。

現在、400アイテムのPBを今後年間100アイテム増やし、1000アイテムまで広げる予定である。

BIO-RAL事業のミッションである「地球にやさしく、全ての人が健康に暮らせる世の中へ」を実現することは、ライフの企業理念「『志の高い信頼の経営』を通じて持続可能で豊かな社会の実現に貢献する」にもつながる。ビオラル事業の推進はライフ全体の成長にも寄与している。

ビオラルが果たす役割

「ビオラル」の商品の認知度を高めるためには、商品力が必須である。顧客の購買データーから得た情報を分析し、それをベースに出来上がった商品の特徴を店舗内で従業員が顧客に伝える。商品知識の構築が従業員の育成にもつながるのだ。

実際、ビオラル店舗と通常のライフ店舗で従業員をローテーションさせることで、オーガニックや安全性に関するノウハウが全社的にも蓄積され、人材育成にもつながっている。

また、既にサテライトキッチンのインフラが構築が出来ている為、高品質・高鮮度な惣菜商品などを供給することができ、競合に対しての差別化にもつながる。そして大手スーパーが陥りがちな、「同質化」からの脱却も実現できるのだ。

ビオラルうめきた店、ビオラルさんちか店の商品概要

BIO-RAL商品部担当課長 米川美香氏

「ビオラルうめきた店は、関西初のビオラルカフェ。PBの「BIO-RAL」を中心に、ビオラルで販売している商品や有機原料を使用した惣菜商品を提供する。席数は42 席で、イートインの商品は、約30種類を揃える」

「ビオラルさんちか店は、神戸の玄関口である立地から、通勤・外出・乗り換えで立ち寄る顧客が多いため、初の惣菜対面販売を強化する。対面販売での惣菜は約18種類」

ビオラルさんちか店は、関西では靭店に次ぐ規模となる。

商品について

ビオラルうめきた店・ビオラルさんちか店の商品では、月ごとにメニューをそれぞれ1種類づつ、入れ替える。首都圏で、ビオラルカフェを展開する有明ガーデン店(東京都江東区)とは異なる商品も提供される。

全ての商品に4つのコンセプト(オーガニック、ローカル、ヘルシー、サステナビリティ)のうち、1から4つが織り込まれるように考えられている。さらに、日常的に使ってもらえるよう、価格と価値のバランスも考慮し、ライフコーポレーションが設けた食品添加物の社内基準をクリアし、見た目・彩りも大切した商品を展開する。

さて、今回試食させていただいた商品を見てみよう。

ビオラルうめきた店、ビオラルさんちか店で提供される商品群(筆者撮影)
ビオラルうめきた店、ビオラルさんちか店で提供される商品群(筆者撮影)

写真の容器に盛り付けられている商品

・紀州南高梅と国産おろしで食べるえのきフライ(左上)

・国産牛ともち豚の手ごねハンバーグ(上中央)

・有機アガベナッツとクリームチーズのケールサラダ(右上)

・有機玄米ごはん(左)

・バスクチーズケーキ(中央)

・米粉のマフィン(右) 

紀州梅と国産大根おろしで食べるえのきフライ

長野県産のえのき一株分の根本を使用。国産の大根おろしと「ビオラル紀州南高梅しそ漬け」がトッピングされている。この商品は、ビオラルさんちか店で提供されるとのこと。

紀州梅と国産大根おろしで食べるえのきフライ(筆者撮影)
紀州梅と国産大根おろしで食べるえのきフライ(筆者撮影)

えのきは、農家から根本のみを仕入れ、食材のロスを減らす工夫がなされている。つゆを含んだえのきとパン粉があわさって、これまでにない美味しさが感じられる一品となっている。

ビオラルうめきた店で提供されるメインと副菜2種類の一例※メニューはイメージ(筆者撮影)
ビオラルうめきた店で提供されるメインと副菜2種類の一例※メニューはイメージ(筆者撮影)

ビオラルうめきた店のカフェにおける提供方法は、主菜を1種類、副菜を1もしくは2種類選んでもらう形となる。

ランチタイム以降に利用する顧客に向け、バスクチーズケーキ、マフィン、フレンチトーストなどのデザートも充実。

ビオラルうめきた店で提供されるデザート(筆者撮影)
ビオラルうめきた店で提供されるデザート(筆者撮影)

提供されるデザートは

・米粉と低GI食品であるアガベシロップを使ったバスクチーズケーキ

・種子島のさとうきび粗糖・こめ油・有機豆乳・長期熟成無添加有機味噌、そして沖縄の海水で作った塩で作った米粉のマフィン

これ以外にジェラード4種類、フレンチトーストなどもある。

ビオラルで販売されている商品として、お米のプチシューも紹介された。

BIO-RAL お米のプチシュー(筆者撮影)
BIO-RAL お米のプチシュー(筆者撮影)

BIO-RAL商品部 担当課長野澤卓央氏

「独自製法のサクサクとした食感の米粉を使用した生地にたっぷりとクリームが入っている。そしてこの商品は、「/」スラッシュの表示がありません」

スラッシュとは

食品表示法では、「/」の後に、添加物を表示するように定められている。「/」がないことは、食品添加物が含まれていないことを意味する。

玉ねぎ糖度11度のオニオンスープ

オニオンスープ(筆者撮影)
オニオンスープ(筆者撮影)

「淡路島の玉ねぎを使用し、中でもフルーツ玉ねぎを50%使用していることが大きな特徴」

フルーツ玉ねぎとは

一般の玉ねぎは糖度が7から8度なのに対し、フルーツ玉ねぎの糖度は、11度。フルーツに置き換えるとなし・ミカンに匹敵する甘さ。独自の製法で栄養素がたっぷりなのである。化学調味料・酵母エキスは含まれていない為、素材本来のおいしさを味わってもらいたいとのこと。オニオンチップを入れることで食感も味わえる。

これ以外に低GIの有機アガぺシロップ使用のキャンデイ・九州産さつま芋使用の芋チップ・てんさい糖使用で100%ブドウ果汁を使ったぶどうグミを頂いた。

いずれも優しい味つけで何度もリピートしたい味だ。

将来を見据え、次なるステップ、それが独自性を生み出す

今回の試食会を通して、それぞれの担当者の想いが伝わり、これがしいてはビオラルが店舗内で行っている商品を「伝える力」、社員教育にも結び付いていると実感した。

ライフコーポレーションが設けた食品添加物の社内基準をクリアした厳選されたビオラル商品は、顧客に定着し、それが売り上げとなって表れている。添加物を含まない優しい味わいは、顧客がリピートしたくなる。これは人口減少が進む日本において欠かせないポイントになるのだ。

「未病対策」の重要性が高まる中、「地球にやさしく、全ての人が健康に暮らせる世の中へ」というミッションを掲げるビオラルの役割は、社会的にも大きな存在になりつつある。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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